98年8月の猫時間通信


●98.08.28 -- CDの購入について・最近のピアソラブーム

うーむ、8月はほとんど更新しなかったですな・・・
夏休みに不調に入ってしまって、それ以来心身ともに めちゃくちゃだったからねぇ。


クラシックのCDの売り場にたまに行くと、ほとんど 発狂寸前の気持ちになることがある。というのは、 独身だった頃はどのようなCDが録音・発売されるかの 流れをある程度つかんでおり、その上で「今月はこの あたりを買おうか」「何か輸入盤マイナーレーベルの 出物がないかな」などという部分があった。
また、新人が出てきたときでも、それを試聴して好みか どうかを聴き分けさえすれば、気持ちは落ち着いた。 好みなら、他の盤を少し延ばしても買ってしまえば いいわけだし。

ところが、以前のように豊富な情報の中から選び とっていくような余裕がないまま、HMVなどの売り場に 立つと、とんでもないことになる。

「え、この人のこんなの、出てたの?!」

「あー、マイナーレーベルの出物!」

「あ、しまった、これチェックしてなかった、 どうしよう、買うべきかやめるべきか」

「うわー、ほしい盤が全部で40枚を突破して るよ、整理ができないー」

で、どれかを選んで買うことができなくなり、 買わずに出てきてしまう。
これが何度かあると、もうCDショップに行くこと 自体がそうとうやばいことになる・・・

そう、わかってはいるのだ。私は別にコレクター でもないし、世界の宝から適切な選集を作ろうと しているのでもない。単に、自分の好きな音楽と 演奏を、折りに触れて思い出すことができる盤で あればよく、そのために演奏家を選んで買えばいい だけなのだ。ただ、私の好みはあまり一般的でない ことが多く、しかもコレクターモードに入らないように するために「他で聴けそうな機会のあるものは できるだけ購入を控えて、うちでなければ聴けそうに ないものを買おう」が基本。
ところが、チェックや情報を怠ると、検討の対象が 増えすぎて、気持ちの整理が追いつかず、全部ほしく なってしまう。選べない。うーん・・・

とはいいつつも、買うこともあるのですがね。


なお、最近のピアソラブームは、たとえばTower RecordやHMVあたりは一段落したようだけど、 今度は普通の街のレコード屋(新宿のコタニとか、 銀座の山野とか)に押し寄せていて、最近は 例外なくCMに使われているヨー・ヨー・マの CDが推薦されている。

冗談じゃない。あんな、ただのBGMになりさがった 盤を推薦しないでほしい。もちろん、ヨー・ヨー・マ が名チェリストであることは認めるが、彼とピアソラの 相性は決してよいとはいえない。
私が聴いた限りでは、クレーメルの「ピアソラへの オマージュ」はなかなか(でもあちこちで聴くので 買ってないけど)。亡命演奏家であり、故郷とは 何か、自分のルーツとは何かを常に考えながら 生きているクレーメルにとって、裏側で同じことを 感じながら音楽を奏でていたピアソラは、ものすごく 共感を呼ぶのだろうね。
他に、ピアソラ五重奏団でのピアノ奏者だった パブロ・シーグレルが、アメリカのピアニストである アンドレ・ワッツと連弾で演奏した盤が、CBSソニー から出ている。これもいい。というか、とってもいい。 ピアソラと一緒に空気を吸っていた人が入っている から、とかいう理由なのではなく、リラックスして 聴ける数少ない盤の1つだからだ。これは、BGMに 落ちていない。そして、10数曲を一気に聞きとおせる。 名盤である。

最近買ったものの中では、海外のマイナーレーベルで、 バンドネオンとサキソフォン四重奏団が一緒に演奏した ライブ録音、というのがあった(詳しい情報を失念)。 15曲を全部聴きとおすのはちょっとつらいかもしれない けど、クラシカルなサックスの響きとバンドネオンは実に 調和がとれる。いや、それだけじゃなくて、1960年代生まれ の手練れ奏者が集まっていて、しかもライブならではの スピードと熱狂もいい。名盤ではないけど、佳作。
サックスだと、日本人でトゥルヴェール・サックス・ カルテットのソプラノ吹きである須藤氏がソロをとった 盤が出ていたけど(これは買ってしまった)、悪くは ないのだが、いまいち。やはり日本人の味付けは浅すぎて、 ピアソラみたいな汗臭い音楽ではもっと彫りの深さが ほしくなる。たぶん須藤氏の演奏は世界レベルでも トップレベルの技量と音色だが、音楽の濃さでやや 負けている。同じことは、江古田のライブハウスBUDDY などに時々出演する日本人バンドネオン奏者にもいえる。 彼も最近、CBSソニーからメジャーデビューした。 少し薄い演奏で、もうちょっとガツンとくるものが ほしいけど、でも、凡百の演奏よりはずっといいぞ。 ガンバレ!



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