98年7月の猫時間通信


●98.07.28 -- コンチェルト・パラティーノ

明日から会社は夏休みだ。

それはさておき・・・夏といえば、私はイタリアの バロック音楽を連想する。高く澄んだ空に、冷たくて 透明な、しかし独特の官能性がたゆたう響きをもった イタリアのバロック音楽ほど、似つかわしいものはない。
そして、ここ数年好きなのは、コンチェルト・パラティーノ だ。


ブルース・ディッキー率いるこのグループは、名前の 由来が17世紀初頭前後に活躍したヴェネツィアの 団体名にある。

ヨーロッパはもともと角笛が古くからあったが、 より洗練されたものになっていく。角に似せた形の 木材で管体を作り、指穴をあけて笛にする。マウスピース だけはラッパ同様のものを利用する。こうして、非常に 速い運指が可能なラッパ型の楽器になっていった。 コルネットと呼ばれる(現代の小型のトランペットである コルネットとは別物である)。
すでに西欧屈指の金持ち都市になっていたヴェネツィアは、 教皇の財政事情を握り、芸術家の保護を行ない、教会を 中心に絶大な力を持つ文化都市になっていた。そして、 そのサン・マルコ寺院大聖堂の付属楽団が、コンチェルト・ パラティーノだった。
コルネットとサックバット(トロンボーンの前身)から なる楽団は、高度の技巧を持った奏者たちが集まり、 華やかなファンファーレから優しいハーモニーまで 幅広い情緒を表現可能であり、ソロも合奏も、 合唱との共演も自由自在にこなす、全ヨーロッパ 憧れの合奏団だったそうだ。

この楽団名にあやかった現代のコンチェルト・パラティーノも、 17世紀初頭前後のイタリア音楽の再現において、 まったく他の追随を許さないものだ。
ベルギーのAccentレーベルから5枚ほどCDが出ているが、 最初の1枚である"Concerto Palatino"は、ほんとうに すばらしい。選曲、演奏、どれをとっても、規範として 君臨するに足るものだ。2本のコルネットは、トランペット にしては柔らかく官能的であり、かといって木管楽器ほど か細い音色ではなく、非常に豊かなニュアンスに富んでいる。 そして、掛け合いになったときの、絶妙な間合いは こたえられない。筆舌に尽くし難いとは、まさに このことだ。天使のラッパが聞こえるならば、かくの 如しだろう。
こういう「やすやすと超えられない名演奏」なんてものは 滅多に出るものではない。

ちなみに、全盛を誇ったコンチェルト・パラティーノは、 17世紀に一部で荒れ狂ったペストに巻き込まれ、 演奏の伝統が途絶えてしまったそうだ。ヴァイオリンは きちんと生き残ったが、ヴェネツィア一個所に集中して いたコルネットの伝統は、簡単に息絶えてしまった。 後に、これを復元しようと試みた人々は、手探りの演奏 技術のあまりのつたなさに馬鹿にされて、二度と復興の 兆しはなかったという。
コルネット自体はすでに2次大戦直後くらいにはすでに 復活していた。しかし、一度途絶えた伝統はなかなか うまくいくものではなく、優秀な奏者が育たなかった。 この水準を一気に引き上げたのが、このブルース・ディッキーだ。 それまでの演奏では、彼のような美しい音色とニュアンスで 演奏する人はほとんどいなかった。それだけに、この CDがいかに重要なものかがわかる。

来日公演はほんとうにすばらしいものであった ことも、付け加えておく。天才作曲家メルーラ の真の魅力を引き出したのは、彼が最初だろう。


●98.07.24 -- PowerZaurus、asahi-netのサーバ
昨日の続き。
私はNewton MP130を使っていたのだけど、どうもいろいろ 思うところあって、以前使っていたZaurus系のマシンに 戻してみることにした。
すなわち(って、おまえはスタパ斎藤か>拙者)、 PowerZaurusを買ってみたわけである。豪勢にも、 デジタルカメラ付きのモデル。

以前のZaurusのデータで、MP130に移管し損ねていたものが 復活したが、MP130で作った落書きは移管できていない。 これは、たとえばMP130とPC/Macの連携ソフトである X-Portを使って、まずPC/Mac上でBMPファイルかPICT ファイルにしてから、PowerZaurusとPCの連携ソフトで お絵描きデータとして落とすのだが、面倒なのでまだ やっていない。
問題は、MP130の「Dear ザウルス 2.0」では、MP130の 住所録データのうち、E-Mailアドレス項目が移行されない。 これが、一番の悩みの種。暇を見つけて、ぷちぷち入れ 直すか、考え中。
ただ、NewtonとZaurusの通信ソフトがあったので、かなり作業が 軽減されている。それがあったからこそ、買ったのだけど。

シャープは、Newton Technologyとは最後まで付き合って いた会社で、最初は日本語版MessagePadを出すときに協力する といっていたし(Appleのほうが日本語版を出し損ねたのか、 シャープがザウルスとぶつかるので協力しなかったのかは、 私にはわからない)、MP2100の"Made in Japan"は、実は シャープの製造である。
そういう意味で、なぜか愛憎入り交じった仲なのかも しれない。

PowerZaurusは便利か?これ1つで、スケジュールと住所録の 管理ができて、カラーのお絵描き帳にもなり、カメラでのメモも できて、Webもメールも緊急用になる。Webのオフラインブラウジング が意外に(失礼)よくできていて、むしろ移動中に ニュースなどを読むにはノートPCより便利。立ったままで 軽々と扱えるし。
ソフトが全部ROMや内臓フラッシュメモリ内だし、サードパーティ による発展性というのはあまりないけど、凝ったことをしない なら、実用上は十分である。また、昨年のPowerZaurusで出ていた 様々な問題は、今の機種ではほとんど解消されているみたい。
私が昨日いっていたような「なんでわざわざたくさんの苦労を 背負い込んでまでマシンの面倒をみなければならんのか」と いう点に関しては、かなり楽。細かい不満点はあれこれあるに せよ、ね。


話は変わるが、"Ken's CLUB"(注:会社のホームページで猫時間通信を出していた頃、Studio KenKenはKen's CLUBという名だった)は本当は、正式にはASAHI-netの 個人ページに展開させたい気持ちがある。でも、なかなか そうしないのは、

ASAHI-netのwebサーバは、ダイヤルアップIP接続で 直接接続したものしか更新を許さない、どこかの プロバイダやLANを経由したものはだめ
というセキュリティ上の姿勢からだ。家からも会社からも 好きなときに、という具合にいかない。もっとも、会社で あまりに個人に走りすぎたページを展開しまくるのも、 ほんとうは問題があるだろうが。
私としては、会社で合間にちょっとしたメモをとる。 家でそれをきちんとまとめる。翌日にでも、適当な タイミングで会社から更新をかける。といった具合で 使えると、もう少しまめに更新する気持ちがわいてくる。 いや、自分の怠慢さに、いまさらながら気づく次第だ。

でも、ASAHI-netは、個人のホームページ50MBまで だいじょうぶだし(追加料金一切なし)、セキュリティが きつめな面、いろいろ面白いところがあるので、 活用しないともったいないとは思っている。
文章ばっかりで50MB埋め尽くされたページ、って いうのも、あったらすごいだろうねぇ。(笑)


●98.07.23 -- MP2100を手放す
闘病通信も、こちらも、えらく 間があきました。うーむ。なんか忙しくなって、体調を 整えるの必死で、こういうのを書く余裕がない。 いかんですね、こういうことでは。余裕がないと、 またおかしくなる。


唐突ですが、MP2100を手放しました。
日本語版(Newton Language Kit、略してNLK)が、入れ込んで 宣伝されていて、こっちも入れ込んで買った割には、正直 いってそんなに燃えなかった。しかも、私の持っているPHSを、 認識しない!NTTパーソナルの営業所はひどく怠慢だし、 そりゃ自分で情報集めて営業所に詰め寄って努力すれば いいんだろうけど、はっきりいって、

便利になるために買った道具のために、なんで こんなに時間を割いて努力しなければいかんのだ?
と思ったら、ちょいとさめてしまった。

私の場合、MP130以来のユーザーだから、そちらで使えて いたソフトやデータが見えないと困るのに、そういう部分が いまひとつ対応ができてない。それに、通信しないなら、 MP2100は「速いMP130、一部データ見えず」でしかなく、 それに倍以上の金額を出していたことにも気づき、 もういらんと判断。
ほしがっているユーザーを見つけて、売りました。 売った先の方は喜んで使っておられる様子。双方、幸せ。

もしかして、これを読んでいる人の中には、ほしがって いたはずの人もいるのだろうか?そういう人から見れば、 わざわざ買っておいて売るなんて、という人もいるかも しれないけど、ブツが役に立つかは、買ってからでないと わからんこともありますよね。


ぜんぜん関係ないけど「手放す」と変換しようとして、 「手鼻す」と変換するかな漢字変換ソフトもすごい。
マイクロソフト、おまえんとこのMS-IME97だ!

手鼻をかむ、とはいうけど、「手鼻す」という サ行5段動詞になるか?と思って「てばなせない」 と変換すると「手放せない」しか候補にない。
どうも、「手鼻」という名詞を、さ変動詞にも なり得ると辞書に入れたのではなかろーか。 と思って「てばなする」と変換してみたら、 「手鼻する」です。そうか、辞書担当者の一人は 畑で手鼻をかんで育ったんだな。でも、これは さ変動詞にならないぞー。

笑えるから許す、ともいえるか?いや、いえないぞ、こりゃ。 辞書はちゃんと作れよー。



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