• [種別]寺院
  • [名称]東福寺
  • [宗派]臨済宗東福寺派
  • [地域]洛南としてはかなり北寄り。洛中より南の、東山寄り地域に寺域が広がる。京阪宇治線およびJR宇治線の東福寺駅より徒歩10分(京阪なら四条河原町周辺繁華街から一本)。
  • [特徴]鎌倉時代の創建。奈良の東大寺と興福寺からそれぞれ一文字ずつとったのが名の由来。講堂や、もみじの密集する渓流を見下ろす通天橋が有名、新緑と紅葉の名所でもある。
  • [拝観料]2002年、境内のみは無料。通天橋500円、方丈500円。
  • [+α]でかい、広い、美しいと三拍子揃っいてるせいか、見終わると、晴れやかな気分になれる。

概略

鎌倉時代、禅宗の渡来初期の頃に、摂関の九条道家が創建に関わった、規模の大きな禅寺です。戦国時代の様式を残す大徳寺、妙心寺などとはまったく違った、空間規模が巨大な印象を与えます。

現在の建築は、主として明治時代の再建になるものが中心です。また、方丈の庭園も同様ですが、名庭園としての評価が高いものです。新緑と紅葉は混雑しますが、壮観で見応え十分です。

禅寺と思えぬ広さ

京阪かJRの東福寺駅を降りてから、10分ほど寺町を歩きます。その間に多くの塔頭を通り過ぎます(拝観可能なところもありますので、旅程に応じて入ってみましょう)。やがて小さな橋が見え、そこを渡ると眼下に渓流が見え、上流に眼をやれば東山から降りてくる空気がここを通っていることがわかります。すでにもみじ・楓が多数目に入るはずです。橋を渡り終えて、高い白壁を左手に見つつ、やっと見えた門をくぐります。

急にすべてが開けます。晴天なら、青く冴える空、黒い瓦、白壁が眩く映るはずです。そのまま少し歩めば右手に、巨大な講堂が空を覆うが如く立ちはだかってきます。単に高いというより、高さも幅も大きく、平成に建て替えた3代目の京都駅を連想させる量感があります(大げさ?)。左手には、通天橋の受け付け。境内自体も広く、室町以降の禅宗寺院が凝縮度の高さを誇るのに対して、大きくとも密度を失わない不思議なすごさがあります。東司(とうすと読む、便所のこと)も保存されているので、ゆったり歩くのがお勧め。境内だけなら無料、名所は拝観料がかかります。

通天橋と方丈

通天橋の受付で拝観料を払うと、橋を渡って対岸にある開山堂まで拝観できます。等間隔に並ぶ柱と白木の橋が美しいだけでなく、谷間の水、音、風、もみじや楓などが一望できます。また、流れのあたりまで降りて、橋を見上げることも可能です。ここはどことなく、奈良の東大寺や興福寺周辺を思い起こさせる風景です。名をとったのも納得がいきます。

通天橋から渓谷を眺めていると、遠近感がふいに消え、平面の上にパーツを並べていくような、大和絵の俯瞰のような図に見えてきます。日本の伝統的な美観は、このように見える場所を名所としてきたのでしょうか。大原の三千院にある来迎院を望む庭園で、同様の経験をしています。

橋を渡って奥へ進むと開山堂。門をくぐって、右手に東山の緑を引いた池泉庭園、左手に枯山水。池泉庭園はこの世、そして枯山水は彼岸、その間の石畳を歩いて開山堂に至る、なかなか印象深い景色。少し縁側に腰かけることもできます。夏にここを訪れた時は、池で蓮やトンボが命をきらめかせていました が、真冬に訪れた時は、氷がはって死んだように静まり返っていたのを、まざまざと思い出します。

ここを見終えて境内に戻ったら、今度は方丈へ(やはり拝観料を払う)。方丈の前は明治期の男性的な、緑のない枯山水。裏手に回ると先ほどの開山堂を望む景色が広がります。この裏手の庭は、緑の苔に白い正方形の石が散りばめられ、飛び石というより市松模様のようなパターンに見えてきます。モンドリアンの線と面によるシュールな抽象絵画が生まれる数年前の意匠と伝えられます。借景となる東山続きの緑、開山堂と相俟って、静かな動きを主張する不思議な庭です。古い禅寺なのに、新しさも経験できます。

周辺の情報

皇室の菩提寺である泉涌寺が徒歩圏内。また、塔頭で一般公開されているところもあります。北上したり南下したりする大きな散歩コースがないので、この周辺を見たなら、電車か車で他地域への移動が一般的。