洛北:下鴨神社周辺・概略

 

地域の位置づけ

上賀茂神社と並んで、京都でもっとも古い神社の一つである下鴨神社。非常に特徴ある地形に位置します。

上賀茂神社周辺のところでも触れましたが、出町柳駅から鴨川を見ようと西へ少し歩くと、高野川と賀茂川が合流して鴨川になる場に出会います。この合流する場所に、糺ノ森と下鴨神社があります。

洛中の賑わいが終わろうとする場に、川の合流点がある。そこには古くから神社があり、平安京遷都の際に、鬼門をおさめる場、王城を守る場でもある。

現在の京都御苑北端(今出川通沿い)より少し北に、二つの名所があります。洛中にほど近く、しかも落ち着いたところです。

下鴨神社

京阪の出町柳駅から歩くか、バスで直接行くのがよいでしょう。ここでは、出町柳駅を降りて、高野川と賀茂川に挟まれた三角地帯を、葵公園から北上してみることにします。

参道に至ったことは、鬱蒼とした森が見えてくることですぐにわかります。特に参道の西側を糺ノ森と呼びます。摂社もあるこの森は、突然周囲を隔絶し、聖域に入ったことを実感させます。

やがて、下鴨神社が現れます。この社は、上賀茂神社のように複雑な地形ゆえの、様々な空気感はありません。しかし、本殿脇の湧き水から御手洗池があり、森と水と平らかな地が織りなす安定感があります。

このあたり、上賀茂神社とセットで廻るのも一興です。賀茂川は京都盆地の平野を斜めに抜けています。平安京遷都以前から交通要路として重要な位置にあり、その要路を治めやすい場に、セットとなる二つの神社があったことになります。古代に政治・宗教・権力などが一体となっていた頃のこと、さらに複数の神々が折り重なって日本神話を形作っていった頃のことを、様々に想像させてくれます。

相国寺

下鴨神社からしばらく(20〜30分程度)西へ歩くと、相国寺です。

京都五山第二位の禅寺は、様々な塔頭を従え、規模の大きな法堂が有名です。寺域も広く、禅寺特有のからっとした空気。境内をぶらぶらすると、下鴨神社とはまったく別の空気を味わえます。ここは実は、金閣寺と銀閣寺が所属する総本山でもあります(正確には、金閣寺と銀閣寺は、本山の膝元にいない、山外塔頭という位置づけになる)。

ここを有名にしているのは、承天閣美術館でしょう。特に冬の京都キャンペーンなどに関連して、特別展が開かれることもあるので、訪れる際には事前に内容を確認しておきましょう。

その近く

相国寺の南側は、同志社大学があります。赤レンガの洋館建築が立ち並ぶキャンパスは、白壁に黒瓦の禅寺と対照的ながら、統一感という意味では共通しています。御所北端の空気とともに、そぞろ歩きを楽しめます。

逆に、相国寺から北へ向かえば、御霊神社(上御霊神社)があります。ここも特に古い神社ですが、その名の通り、御霊信仰(政敵などを誅した後に、彼らの魂を鎮めるように祀る信仰)に関係しています。平安京遷都を行った桓武天皇は、非業の死をとげた早良親王をここに祀りました。応仁の乱発端の地とも伝わっています。

なお、上御霊神社と呼ぶのは、下御霊神社と区別するためです。下御霊神社は京都御所の南東すぐ、寺町丸太町より少し南にあります(下御霊神社が現在地に移ったのは秀吉の都市再建以降という)。こちらは少し離れているのでバスで廻るか、別途、寺町二条周辺の散歩に組み込んでもいいでしょう。