概略
知恩院といえば、京都の大晦日はここの除夜の鐘、NHK行く年来る年でもおなじみの大きな梵鐘を持つことで、つとに有名。他にも、鴬張り(忍び返し)の廊下、左甚五郎の忘れ傘(火除け)と、逸話に事欠かず、大衆性とでもいうべき親しみやすいさを持ったお寺。東山は、銀閣寺、南禅寺、知恩院、清水寺を押さえておけばいいというくらいの有名スポット。
しかし、ここは浄土宗知恩院派の総本山。お堂や寺域など、規模を誇るお寺でもあります(徳川家の帰依があったことも大きいが)。単に親しみやすい以上の何かがあります。
でかく、さわやか
青蓮院から歩いてきても、円山公園・八坂神社からでも、とにかく大きい。北(青蓮院)から来れば、まず長々と続く寺域を眼にしますし、南(円山公園)から来ても、門の大きさに度肝を抜かれます。
その大きさは、三門をくぐって階段を上り(この階段も不思議と美しい)、境内に上ってもじゅうぶんに実感します。法然上人を記念する御影堂、大小の二つの方丈、庭園もみな大きい。鴬張りの廊下の板も、諸堂の屋根瓦も、パーツから何からでかい。その大きさは東福寺や奈良のお寺を思い起こさせますが、ここは山の中というのが大きな違い。境内から街を見下ろすと、よくわかります。
ですが、歩けばわかるのは、大きさより爽やかさかもしれません。南禅寺の興った南禅院周辺、東山の暗さを感じさせるポイントとは違い、ここははるかに青く爽やかな空気があります。それは同じく法然上人を慕う法然院に通じる感じとでもいいましょうか。
面白いのは、ここで若いお坊さんにすれ違うと、よほど急いでいない限り、すっと立ち止まって合掌し、挨拶されることも多いこと。その瞬間、場の空気と相まって、なるほど、教育というより自然にこうなるのかもしれないと感じることがあります。
私個人は、知恩院はちょくちょく訪れるところではないです。たまにのぼって、そうか、東山ってこういう空気もあったな、そういうポイントを選んでいるのだな、本物の宗教者というものは、ということを確認したら下りてくるところ、実感するところだと思っています(やや大げさながらも)。
周辺の情報
ここは意外に祇園の北側が近く、三門から知恩院通りを西へ、あるいは黒門から華頂通り(華頂学園という女学校がある通り)を西へ、坂を下ってゆくと、東大路にぶつかります。ここからは、祇園の北側の美観地区(白川や巽橋方面)、骨董街の門前通り・新門前通り、一澤汎布などへアクセス可能。もちろん、南下すればすぐに円山公園、ここからさらに南進するもよし、八坂神社を通って四条通りへ遊びにゆくもよく、このあたり、八坂とともに人を集める力を持った神社寺院街なのでしょう。
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