京都旅行2001年春

等持院、御室桜の満開

 

●八坂の後は?

八坂神社の行事は午前中でおしまい、というか、まぁお昼過ぎまでやっていた。(結局参列者がえらくゆっくり見学するので時間オーバーだったのだ。)

とりあえずお腹が空いたので何か食わないと・・・適当なお店を思いつかず、何となく先斗町の開洋亭に足を運ぶ。連れが「前に行きたいって言ってて行けなかったし、今は洋食も大丈夫」(連れは少食)というので、久々に入ってみた。
感想はこちらにまとめてある

午後の予定は昨日の夜に話し合っておいた。せっかくだから仁和寺の御室桜を見たい。なら、大好きな等持院から仁和寺というコースにしよう。というわけで、四条河原町のバス停から立命館大学行きのバスに乗って、一路衣笠へ。

●等持院

立命館大学前で降りて、大学裏手の住宅街(ところどころに大学生相手の喫茶店がある)を10分弱歩くと、等持院の山門に辿り着く。入っていくと、観光案内のタクシーが何台か先に停まっている。やっぱり相変わらずタクシーのコースになっているらしい。

そのせいか、受付でも5〜6人の団体が出てくるところですれ違う。とりあえず見学の受付だけを済ませて、方丈から鑑賞する。
汗ばむ陽気の中、光を浴びて澄んだ青葉が枯山水を優しく守る。風がすぅっと通る・・・あぁ、すてきだ。そうそう、こういうの。京都に来た感じがずんずん広がる。ちょっと座ってみる。一方でタクシーの運転手に案内された主婦三人組が、解説にしきりに嬌声をあげて応じている。戸の絵が立体のように浮かび上がっている、これは墨で書いただけで、風雨に洗われてこうなった・・・三人とも手を出す、手を出す。まぁ、運転手が勧めれば無理もないが・・・減るよ、そんなことすると!
と声は出さずにいると、霊光殿に入っていった。ここは足利十六代と徳川家康の木造が安置されている。私は何度も見ているし、同居人も興味がないのでとばして先へ行くことにした。

方丈をぐるりとまわってから庭に出る。方丈前の枯山水とともに、魅力的な心字池がある。降りて歩ける庭というのも人気の秘密なんだろうけど、実は私が最初に来た二十年くらい前は、ろくに人が訪れない、静かなお寺だったんだよ・・・
まわろうとするが、どうも今までまわっていたのと逆方向でまわるらしい。タクシーの運転手が案内すると、まず小高いお茶室を先に案内して、池のほうに降りていく。一方、以前(というか二十年前から一昨年まで)はまず池を見てから最後にお茶室を見ていた。かまわず池のほうから見るが、他の人、特に団体さんとすれ違うと難儀。でも、池に出ると水が陽光に映えて薄緑に広がり、亀が日光浴をし、あめんぼが動き、春の躍動が目前に広がる。適度な起伏がここの風景を独特のものにしていて、こういう庭はやっぱりいいなぁ。

困るのは、茶室を見ようと思うと、記念撮影をしようとしている人たちがちょっと邪魔そうにしていること。だって・・・写真を撮りに来たの?見に来たんじゃないの?

疲れたので、受付に戻ってからお抹茶券を買う。庭に面した畳の席は、以前は自由に座ることの出来た。今はお抹茶のお客さん専用。観光客の数自体がすごく増えたから、交通整理が必要になったのだろうか。
なんだかすっかり変わっちゃったねと、連れと言いつつ、それでも緑鮮やかで花が咲く庭に目が吸い寄せられる。

のんびりしすぎたので、慌てて仁和寺に向かう。京福電車でそう遠くないはず。

●初めて見る御室桜の満開

御室に着いたら、しかし、午後四時をとっくに過ぎている。やはり等持院でのんびりしすぎたかな。それにしても、すごい人・・・山門をくぐると広々とした白砂利が人で埋まっている!もともと広いお寺だからうるさく感じるほどではないのだが、こんなに人がいる仁和寺は初めて見た。

特別拝観の受付時間には間に合わず、桜を見るしかなくなってしまった。いつもは無料の境内も、この時ばかりは観桜券三百円也を納める。「満開」の文字がどんどん人を呼び込んでいるようだ。階段を昇り、門をくぐると・・・

そこは桜の園だった。確かに葉の茂る桜を何度も見てきた。でもでも、これはなんというのだろうか、とにかく狂ったように咲く桜が真っ白に空気を染め上げる。御室桜は確かに人より少し高い程度、それが延々と並ぶ、百も承知のその事実が、真っ白な桜の波で衝撃に近いパンチを受けて、思考が停止してしまう。

花に酔うって、ほんとにあるんだね。

歩みが自然にゆっくりになる。風が抜けるとさぁっと桜吹雪が舞う。左手の桜と講堂。右手には若葉の緑と五重塔。その境を割る石畳を人々は歩み、緩やかな傾斜を進む。歩む先は金堂。
金堂で突き当たると、左に折れる。ここからは御室桜の群れを見下ろすことができる。人々の上機嫌な酔いがそのままあちこちに放散されているようだ。あと、東京の上野の山にあるような、おバカな宴会になってないのもいい。

一周すると、御茶屋で休憩。団子を食べる。しかし、人々のこの幸福そうな顔。ここに毎年、ふらりと来られる関西の人がうらやましいぞ。

穏やかな陽気が徐々に肌寒くなる中、午後六時前くらいか、ゆっくりと下ることにした。帰りは京福電車、帷子ノ辻で乗り換えてから四条大宮へ、そして阪急電車で河原町へ。電車の中でも、白い空気の酔いがほくほくと体の中でたゆたっている。

●夕食

街へ戻り、少し新京極や寺町京極を散歩してから、夕食は二条のビストロ Le Bouchonへ。食事については、こちらにまとめたので、そちらを参照していただくとして。

到着して通された席は、店の奥の方。そのすぐ隣に、夫婦がいた。これがメシを食いながら、大声で喧嘩をしている。ちょっとなぁと思い、注文を済ませてから「席を替わっていいですか」といって、少し離れたところに変えてもらった。ところが、私はまだまだ奥さんのキレた声が聞こえてくる。せっかくメシを食いに来たのにこれじゃなぁ・・・
店の人が気づいたようで、窓際の席が空いたことを教えてくれた。早速そちらへ移って、ようやく落ち着いた食事になった。

ところが、おもしろいもので、隣に家族連れがいたのだが、この方たちは出る間際に「どうも子供たちがうるさくてすいません」と謝るのだ。「いえ、全然」というけど、とにかくここの子供たちは別にうるさくもない。席を移ったのを、子供をいやがったのと勘違いしたらしいのだ。
ちなみに、うるさかった喧嘩夫婦は、奥さんのキレがおさまらず、店にも因縁つけていた。

もちろん、席を離してもらってから出てきた料理はおいしかったです。


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