2000夏京都・7/27

●到着

夏の京都は暑い。誰もがそう言うし、自身で十数回も経験している。わかっていて、また行く。最初は会社の休みにあわせるしかなく、7月末に行っていた。7月の京都は祇園祭もあってか、街全体が月が満ちる前のように張っている。8月頭に一度静まり、続いて送り火になる(こちらはまだ経験したことがない)。山鉾巡業を終えても続く、この独特の空気を味わっているからかもしれない。
そうはいっても、冷え切った新幹線から出る瞬間、それなりの覚悟はいる。今回もデッキで身構えて、扉が開くのを待つ。あれ? 予想したほどでもない。
背景はある。実は、前日に大阪出張をしている。仕事の日帰り出張(昨今、大阪あたりの日帰りは当たり前)、翌日からは楽しい休みでもあり、一度帰宅して「仕事モード」を振り落としてから再度出発した。大阪方面は(仕事先は繁華街ではなかったが)東京より2〜3度気温が低いくらいだった。どうも台風の影響らしい。それがそのまま続き、京都も例外ではなかったということだ。

2度も京阪神方面への往復を立て続けにするせいか、慣れてしまって、長く電車に乗る感じがあまりしない。実はよく考えると(いや、考えるまでもなく!)、東京→名古屋→京都を2時間半ほどで行ってしまうのは、生物学的・生理学的に考えるととんでもない速度。これを頻繁に繰り返す営業マンらは、きちんと適応できているのかね?

何度見てもいまだに慣れた感じのしない、あのばかでかい京都駅。烏丸中央口へ出て中央通路を北へ。ジェイアール伊勢丹前からバスターミナルへ出る階段を降りる。階段とエスカレーターが視界に入ると、「このエスカレーターは実はハリボテで、このまま絶壁を飛び下りるんだ」といつも思うのは、なぜだろう。黒光りする床はソリッドにエッジがたっていて、開けた空間の淡い色と鋭く対立する。そのせいか。そんなことを思いつつ、今回も手すりにつかまってするすると地上に降り立つ。

市バスに乗って宿(ホテルフジタ京都)に向うのだが、間違って5番のバスに乗ってしまう。これでは京阪三条から銀閣寺方面へ行く、川端通りも市役所前も通らない。久しぶりで市バスの番号を忘れていた上に、事前調査をまったくしていなかったせいか。ぬかった・・・

●街の様子

仕方なく、暑い中、三条から二条まで歩いてホテルに辿り着く。途中、ちらほらと街並が変化している様子に気付く。見たことのないカフェ、見慣れない店。ホテルへ至る道のあちこちがこぎれいになっている。

ちょっと気分が高まってくる。スムーズにチェックイン、部屋から鴨川を眺める。おお、ここは変わらないなぁ。そして、さらなる街の調査へ。
気付いたことをいくつか。

総じてだいぶ変化してきたようだ。私の印象だと、1990年代前半はめちゃくちゃに大きな変化は少なかったが、京都駅リニューアル以降、うねるように変化していく。来るたびに、何か大きな変化がある。

散策の途中、新しい建物になったイノダコーヒー本店に寄った。火事により、建物をリニューアルしたのだが、昔の空気を壊さないような、うまいつくりだ。これで思い出すのは、鍵善良房を建て直した時。何となく昔のムードを残しているが、実は建物は新しい。こういう建築は、東京でももっと見直されていい。
味は変わってないですね。思わずアメリカン・クラブ・サンドイッチ(分厚く馬鹿でかいサンドイッチ)を頼んでしまう。
これは思い出の一品。一人旅を始めて間もない頃、歩き疲れて初めて入った四条烏丸のイノダ(野村のビルの地下)で、お腹が減って減って減ってたまらなくて、「高くてもいいや!」と清水の舞台から飛び下りるつもりで食べたこのサンドイッチの、おいしかったこと。夏の暑い盛り、たんぱく質やビタミンを効率良く補充したくなるが、補って余りある充足感。京都の暑い夏に、このサンドイッチと濃いコーヒーの味がセットになっている。

 

●タイムマッサージを求めて

栄養補給が一段落ついて、正気に戻ると、びっくりするほど身体が疲れていることに気づく。前日の出張のはるか前からの、疲労の累積。
せめて20分くらいでいいからタイムマッサージをしてもらおうと、お店を探す・・・が、見つからない。四条河原町周辺は京都一の繁華街、あってもおかしくないはず!とばかりに探すのだが、どうも目に入らない。以前、河原町通沿いに一軒入ったことがあるが、それも見つからない。いや、四条から御池の間、河原町通を中心に東に入ったりしても、まったく見つからない。四条を烏丸通方面へ歩いて、ジュンク堂書店にも情報なし。

疲労をとるための店を探して、さらにくたびれて、だんだん立腹してくる(そんなことで腹を立ててもかえって疲れるだけなのだが、おさまりがつかなくなっている)。
仕方なく、ドトールコーヒーで一服しながらPDAでWebに情報がないか探す。今度はPHSがうまくつながらない、電波の入りが悪い。

しかし、東京には乱立していると言ってもいいタイムマッサージ(10分1000円くらいの料金で、首から肩などをマッサージしてくれるお店、だいたい15分か20分くらいやってもらうが、30分以上でももちろんやってもらえる)が、これほど見つからないとは。実はあとで見つかるのだが、東京に比べると異様に少ないと断言できる。

京都の人は東京よりストレスが少ないのだろうか?・・・などといいつつ、ここまで来てタイムマッサージの必要な自分を反省したりもする。

●お豆腐や〜い

マッサージを諦めて、とりあえず夕食。先斗町に向う。以前宿泊した旅館のすぐ近くにお豆腐屋があり、どうもそこがやっているらしいお豆腐料理の専門店を、以前に見つけていた。ツレがおいしいお豆腐を食べたいと言っていたこともある。
通りを全体にチェックするが、特に目を引く店もないようだ。目当てのお豆腐屋に入ってみた。

2階で、靴を脱いで通される。座敷がいくつかあるが、カウンターに落ち着く。悪くない感じ、若い女性が働いている和食のお店。ただ、私にはちょっと変わった雰囲気に感じられる。どこがと言われると困るのだが、女性だらけの気安さと厳しさが同居していて、牽制の少ないというか、ストレートなのにどこか柔らかい感じ。
料理は・・・多くを語るまい。まぁ、あまりに豆の味や香りの少ない、かといって嫌みの全然ない、でも特徴もない・・・よく考えると、このお店の雰囲気にちょっと似ているような。いや、まずい料理ではまったくないのだ。ただ、断じて「味が薄いので関東の舌には合わない」わけではない。

端的に言えば、私には不満足だった。豆の味が薄いなら薄いで、料理にもう一仕事ほしい。逆に、豆の味を活かすなら、もうちょっと豆腐自体に味わいがほしい。少々残念。

疲れ果ててホテルに戻り、おさまりがつかなかったマッサージを、ホテル経由で依頼する。やってきたのは指圧系のマッサージ。ホテルの柔らかいベッドでよくマッサージできると感心しつつ、一応背中が軽くなるところまできちんと揉んでくれた。とりあえずありがたい。


前へ  旅日記目次へ戻る  次へ