バッハのカプリッチョ 変ロ長調 BWV.992


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時は1704年。バッハ家では大騒ぎ。何しろ我らがヨハン・セバスティアンの兄、ヨハン=ヤーコプが スウェーデンの宮廷楽長になったというんです。でこれからまさに旅立とうというところ。 でも、スウェーデンといえばまさに地の果て、トナカイの他には生き物はいないと信じられている土地。 「ヤーコプちゃん、いい子だからそんな遠くへ行くのはおやめなさい」ってな感じで、みんなが引き留めます。(第一楽章)

ところで、当時のスウェーデンはいわゆる「北方戦争」でロシアやデンマークと戦っている最中。 「いいわねえ、ロシアの戦車を見られるわよ」。「バルト海にはロシアの潜水艦もうようよしてるそうだ」。「人魚姫の祟りは怖いぞ」。 「ひょっとすると、アメリカのミサイルが飛んでくるかもね」と、みんな言いたい放題。(第二楽章)

「うにゃ、おら、スウェーデンさいぐだ。そして、本場もんのサウナに入るんだもーん」。ノー天気なヤーコプは頑として止めようとしないので、一同嘆き悲しみます。(第三楽章)

友達も打ち揃ったところで、別れの水盃。みんなもう二度と会えないものとあきらめます。(第四楽章)

さて、どうやってスウェーデンまで行くんでしょうか。当時のヨーロッパでは、タクシス一族というのが 郵便馬車+乗り合い馬車+宅配便のようなシステムを独占しておりました。これがタクシーの語源ですニャ。 約半世紀後にヨーロッパを駆けめぐったモーツァルト少年も、この郵便馬車で旅したわけです。 郵便馬車といえばシンボルは角笛。「ぷっぷかぷー」と吹き鳴らしながらゴトゴト走ったんでしょう。 今でも、ドイツやオーストリアでは、ポストアオトとかポストブスと呼ばれる、角笛のマークを付けた 乗り合いバスがありますニャ。もっとも現在は郵政省の管轄だそうですが・・・
そんなこんなで、とうとう郵便馬車がやってきました。(第五楽章)

最後の第六楽章はフーガです。もちろんテーマは角笛。角笛のメロディーをフーガにしちまうバッハというのも すごいですニャー。ちなみにこの曲を作曲したとき、バッハ青年は19歳。まさにこれからキャリアを始めようとする頃です。




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