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プラナー50mm F1.4をE-1で試す (補足)

35mmフルサイズ版のレンズを使って、けられないの?

 フォーサーズシステム用のボディであるE-1は、CCDの大きさに合わせて、ミラーやミラーボックスが作られています。そのため、35mmフルサイズの銀塩一眼レフに比べると、ミラーやミラーボックスがかなり小さくなります。

 では、そのボディに、35mmフルサイズ版のレンズを付けると、ミラーやミラーボックスの小ささが問題にならないのでしょうか。ミラーボックスの狭さのせいで、周辺部の光量が減ったりしないのでしょうか。ちょっと気になります。

 単純に考えると、けられそうです。ところが、イメージサークルの中央部分しか、しかも面積では1/4しか使っていません。これが良い方向に働き、けられを生じさせない気もします。加えて、レンズを通って後玉から出た光は、円錐状に近い形でCCDに達するため、ミラーボックスでけられにくくなっています。

 いろいろ悩むよりも、実機で調べてみるのが一番なので、さっそく試験撮影をやってみました。使用したレンズは、プラナー50mm F1.4です。その結果を紹介しましょう。

点光源をぼかす方法で、けられが調べられる

 まず最初は、けられているか調べる方法を決めます。方法は非常に簡単です。点光源をわざとぼかして、その形を見るだけです。見る箇所としては、画像の中央、上下左右の各辺の中央、それと四隅です。このうち、一番けられやすいのは四隅ですね。もしミラーボックスでけられていれば、ぼけた形の一部が欠けているはずです。

 点光源といっても、本当の点光源でなくても構いません。蛍光灯のような細長い照明はダメですが、電球のように丸い照明なら大丈夫です。ぼかす量を大きくすることで、本当の点光源でなくても、点光源と同じ役目を果たせます。

 今回は、撮影方法を細かく決めてしまいました。点光源の写り具合が明確になるように、撮影は夜に行います。10m以上離れた電球を被写体にして、レンズのピント位置を1mに設定しました。こうすれば、かなり大きくぼけますから。露出を同じにするために、自動露出ではなくマニュアルのモードを選びます。また、手ブレを起こさないように、シャッター速度も1/125に固定します。露出不足で暗く写ったら、RAW現像で増感すれば大丈夫ですから。

 以上の条件で、絞りを変えながら撮影します。けられは開放に近いほど発生しやすいので、開放のF1.4、1段絞ったF2、2段絞ったF2.8の3段階で撮影しました。それ以上絞った結果も必要だと判断したときは、追加で撮影するつもりでしたが。最終的には撮影しませんでした。

光学ファインダーを覗いて、けられを確認

 撮影する前に、光学ファインダーを覗いて、けられが発生するかを調べてみました。今回のような確認方法だと、銀塩の35mm一眼レフの場合でも、光学ファインダーではけられが発生します。上辺の中央部と、上側の2つの四隅です。原因は、一眼レフのミラーの構造から来ています。ミラーは斜めに付いているので、片側がフィルム面から離れています。これが原因で、光学ファインダーから覗いたとき、けられるのだと思います。もちろん、実際の撮影画像でけられることはありません。

 E-1でも同じように、光学ファインダーを覗いてみました。上側は、銀塩一眼レフと同じようにけられています。これは問題ありません。下側を覗いて青くなりました。上側と同じように、けられているからです

 こうなったら、実際に撮影してみるしかありません。実際に撮影する画像でも、同じようにけられが発生するかどうか。

 その前に、けられの程度を調べてみました。絞りをどれぐらいまで絞ったら、けられがなくなるのかをです。試してみたところ、絞りをF8まで絞ると、けられが解消できました。光学ファインダー上でのけられの解消は、けっこう絞り込まないとダメなようです。

実際の撮影画像では、けられが発生せず

 いよいよ、点光源のぼけの撮影です。ぼけの位置を、全体の中央、上下左右の辺の中央、四隅に変えて撮影します。開放のF1.4に続き、F2、F2.8と撮影してみました。液晶で確認したところ、けられている感じはありません。念のためにパソコン上で撮影画像を開いても、けられは発生していませんでした。

 実際に撮影した画像から、点光源のぼけの部分をトリミングした結果を、表としてまとめました。全部を含める意味はないので、全体の中央、上辺の中央、右上の角の3つだけに絞ってあります。どの画像も同じように暗かったので、各色のピクセル値を2倍にする形で明るくしてあります。

全体の中央
上辺の中央
右上の角
F1.4
F2
F2.8

 簡単に解説しましょう。開放では、絞りが使われてないので、全体の中央が丸いぼけになっています。ぼけが上辺の中央にあると、口径食(レンズ自身によるけられ)が発生し、満月が少し欠けたような形に変わります。右上の角にいくと、レンズ自身によるけられがより大きくなって、欠けの程度が増えます。このように中心から離れるほど多く欠けるので、周辺ほど光量が低下するわけです。実写した写真では感じませんでしたが、このぼけを見る限り、開放での周辺減光は発生していますね。

 ちなみに、ぼけの中で一部が明るくなっている原因は、完全な点光源でないからです。点光源の変わりに用いた光源が、カメラから見て斜めに照らしているので、ぼけの中の明るさにムラが生じました。また、ぼけの明るさがほぼ同じなのは、大きくぼかしているからです。絞りによって光が減る影響は、ぼけの明るさではなく、ぼけが小さくなる形で出ます。それと、右上の角のぼけ位置が一定でないのは、手持ちによる撮影だからです。

 F2に絞ると、ぼけの形が絞り羽根の形に変わります。絞ったことにより、上辺の中央や右上の角のぼけの形も、絞り羽根の形になりました。これらの形は、開放F1.4のぼけの形から、絞りによって周囲が削られた結果です(右上の角のぼけを見ると分かるように、左側は絞りで欠けていますが、右側は口径食が大きいので、絞りの形が出ていません)。また、中央と周囲を比べて、ぼけの大きさに差がないので、周辺減光はほとんど発生しません。

 F2.8まで絞ると、どの位置でも同じ形のぼけになります。こうなると、周辺減光はゼロに近いでしょう。F2のぼけの形と比べると、より六角形に近い、絞りの形がそのまま現れています。

 以上を見て分かるように、E-1によるけられは発生していませんでした。F1.4のレンズは、F1.4として機能しています。ただし、口径食による周辺減光が発生するため、全体としては、F1.4より少し暗いレンズと同等になるでしょう。E-1に付けた際の露出を見ると、F1.4でのシャッター速度の変化は、F2より2/3EVしか速くなってませんでした。換算すると、F1.6の明るさになります。

 このF1.6の明るさは、口径食が原因なので、銀塩一眼レフに付けたときも生じます。35mm版フルサイズの場合、イメージサークルをもっと広く使うので、換算した実効F値は、さらに低下するはずです。実際、同じレンズをCONTAX STに付けて、点光源のぼけの形を見てみました。すると、周辺部では相当に小さくなり、より大きな周辺減光を確認できました。

 もう1つ付け加えるなら、こうした明るいレンズでは、開放での周辺減光は大きいものです。開放F1.4のレンズなら、実効でF1.6とかF1.8とかF2とか。特別なことではなく、ごく普通のことなのです。

光学ファインダーのぼけの形状が変

 以上のように、光学ファインダーでの見え方と、実際の写りとには差があることが分かりました。他にも気付いた点があるので、まとめておきます。

 光学ファインダーと撮影画像では、けられ以外にも違いがあります。光学ファインダーのぼけの形状が、変な形に見えます。本来なら、模様のない円形や六角形になるべきなのですが、そうは見えません。雪印のマークで有名な、六角形の雪の結晶の形を、崩してぼかした状態に見えます。ということは、通常のレンズのぼけの部分も、変な形に崩れて見えていると推測できます。スクリーンの特性なのでしょうか。

 光学ファインダーのけられが専用レンズでも生じるかどうか、50mmマクロを付けて調べてみました。すると、プラナー50mmと同じように、下側でもけられが発生します。また、ぼけの形状も同様に変でした。どうやら、E-1の光学ファインダーの特性のようです。原因は、よく分かりません。

F1.4の単焦点ラインナップに期待

 今回、F1.4のレンズを使ってみて、明るいレンズの有効性を改めて実感しました。ズームレンズより2~3EVも明るいので、暗い場所でも手持ちで撮影できることが多いかったです。やっぱり、明るいレンズはいいですね。

 今後は、単焦点レンズの明るいラインナップに期待したいです。F1.4(価格差がそれほど大きくないならF1.2でもいい)の明るさで、14mm、17.5mm、15mm、45mm、70mm(35mm版換算だと28mm、35mm、50mm、90mm、140mm)といった感じで(ぼけが小さいので、望遠側の端数を切り上げてみました。ぼけ自体はそれほど変わらないでしょうが)。CCDが小さいフォーサーズなら、小型化はもちろん、魅力的な値段で出せると思うのですが……。

(作成:2004年4月22日)
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