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ウタカタカタカタ イチ
「朝からTV点けんなうるせえ」
「おはよー」
「挨拶ぐらいこっち向いて言え……しかもNHKかよ」
「NHKは面白いよ。笑えるよ」
「メシ」
「冷凍庫にパン」
「焼けよ」
「おまえが焼け」
「女だろうが」
「子供は産めるよ。でもメシは作れん」
「メシ産めよ……」
じーーーーっ、チン
「おめ、今日仕事?」
「あ、サンキュ。ブルーベリー塗ってよ」
「メシに甘いもん食う奴ァ人じゃない」
「仕事よ。えーと、天気予報は……」
「黄金週間だろうが。ちゃんと晴らせろ」
「でも雨って言ってる、NHK」
「言われたとおりにするのがおまえの仕事か」
「そだね。晴れにする」
「あー味気な。メシ食いてー。米食いてー」
「自分で炊け。つーか刈れ」
「秋になったらな」
「植えろ」
「おまえが植えろ。じゃ、行ってくんわ」
「今日はどこの狩場?」
「山」
「あたし耳飛び鼠がいい」
「てめーの餌狩りに行くわけじゃねェ」
「死なないでね」
「おまえもな」
「お帰りー」
「てめ一体どういうつもりだ。昼から土砂降りだったじゃねえか。蓑びしょびしょだ」
「濡れた方が女はかわいいゼ」
「鉄砲も詰まっちまうし。電管はじけてシビレるとこだったぞ」
「んー、晴れにするつもりだったんだけどさあ。どーも喉が痛くって」
「それでも祈祷師か」
「なんちゃって祈祷師」
「結局NHKの言うとおりじゃねえか」
「獲物は?」
「耳飛び鼠と暴れ狛犬」
「あ、覚えててくれたんだ」
「いたから撃っただけだよ」
「じゃあ焼くね。醤油? ソース?」
「俺は醤油だって百万回は言ったはずだ」
「はいはい」
「ごっそさまー」
「酒はねえのか酒は」
「沖縄の芋焼酎なら」
「酒ったらビールに決まってんだろーが! 麒麟端麗樽で持って来い樽で!」
「それはビールじゃない」
「発泡酒がビールじゃないなんて言う奴はブルジョワだ」
「もう寝る?」
「風呂」
「あ、あたしも一緒に入る」
「狭くなんだろうが」
「じゃあ入らない」
「どっちだよ」
「それはつまりあんたがエッチしたいかしたくないかによる」
「するに決まってるだろが。脱げ」
「脱がずに布団っていう選択肢もあったか」
「あーその方がそそるかもな」
「嘘。入ろうよ、あたしも今日は動いたし」
「匂いがあったほうが」
「フェチめ。恥ずかしいから嫌だ」
「はー、ご馳走様」
「ムードねえなこの男は……腕枕ぐらいしろよ」
「いや、鉄砲の手入れがあるから」
「やるだけやっといて優しい言葉一つないなんて最低」
「へえへえ、可愛かったよ」
「それは当然」
「何様だゴルァ」
「はい煙草。吸うでしょ」
「うぃす」
「明日も山?」
「明日は原っぱ。スライムでも撃って来らー。あ、CRC取って」
「はい。ああ、今日も平和だったねえ」
「俺らはな。世間は?」
「別にい。モーむすが増えて牛が焼かれて人も焼かれて小泉が流されてた」
「うちは平和だね」
「ねえ、それ終わったらもう一回しよう」
「却下」
「なんでよ」
「一度に一発しか撃たねんだよ俺は」
「スタミナのない言い訳にしか聞こえない。これでどお?」
「……前言撤回」
「本当チラリズムに弱いねあんたは」
「やかましい。よし終わり、と……」
「はいこっち。あ、電気消してね」
「注文多いなこの小娘は」
ぱちん
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