top page   stories   illusts   BBS
  

D棟のミキちゃん


 医局で同僚と話をしていると、インターホンが鳴った。
「総城だ」
「D201号室です。夏尾さんが、また……」
「すぐ行く。刺激しないように」
 ナースに言いつけると、私は立ちあがった。同僚の島根がこちらを見た。
「また、『ミキちゃん』か?」
「ああ」
「脱走癖のあるGID患者なんてやっかいなもんだな。いつもどうやってドアを開けてるんだか。同情するよ」
「そうだな」
 私が生返事すると、島根はすぐに自分のカルテに目を戻した。「彼女」にはたいした興味も持っていないようだった。皆そうだ。私以外の医師は、「彼女」をもてあましている。
 私は医局を出てD棟へ向かった。長い渡り廊下を通り、ゲートでIDを示して中に入る。D棟、長期入院患者隔離棟。出入り口はここだけだ。
 中学生ぐらいの可愛らしい女の子が、手ぬぐいで目隠ししたまま、しっかりした足取りで歩いていく。地蔵のように穏やかな顔をした老人が、壁を見つめながら円周率を暗唱している。廊下の角からするするっとよつんばいで現われた男が、親しげに言った。
「やあ総城先生、いいお天気ですね」
「ああ」
「これぐらい晴れてると、立ってもいいんじゃないかって気がしますよ」
「立ったらどうです」
「その手には乗らない。ほら、刈り取り機の音がする」
 男は、にやっと笑ってワニのように走り去った。反対側では、掃除婦が掃除機を動かしていた。
 D棟はいつも静かだ。なぜならば、静かにできない者は廊下に出させないから。穏やかな光景は、厚さ三百八十ミリの防音壁が作り出している。
 私は急ぐこともなく一階から順に見てまわった。三階の廊下で、「彼女」を見つけた。
 二人のナースが、ソファに腰掛けてしゃべりあっている。
「……でね、杉田さんったらとっても素敵なんですよ。お見舞いのバラを一本わたしにくれたの」
「そ、そう」
「でも困ってるの。わたしは総城先生が好きだから。杉田さんをふっちゃったら傷つけないかなあ?」
「う、うまくやれば大丈夫じゃない?」
 まだ少女のような、ショートカットの若い看護婦の言葉に、二十代の看護婦が、戸惑いがちに相槌を打っている。知らない人間が見たら、ナースたちのただの息抜きだと思うだろう。
 私は声をかけた。
「ミキちゃん」
「あ、先生!」
 若い看護婦がうれしそうに立ち上がり、私に飛びついた。頬を胸に押しつける。彼女が「ミキちゃん」なのだ。もう一人がほっとした顔になる。新米らしい。
「ああ、総城先生」
「ロッカーに入れておかなかったのか?」
「入れました。でもいつのまにか。どこから手に入れたのかわからないんです」
「あとで聞いておこう」
「ねえ先生?」
 ミキちゃんは私たちの会話など耳に入っていないように、私の顔を見上げた。
「ミキ、杉田さんにラブコールされたのよ。どうしたらいいかな?」
「困ったね」
「困ったねじゃないでしょ! コイビトが口説かれてるってのに!」
「そうだね、妬ける。ミキちゃんは僕の彼女だものな」
「やっ、カノジョだって! うれしいなあ!」
「さあ、お部屋に行こう。しばらく一緒にいてあげるよ」
 ミキちゃんは頬を染めてうなずく。私はミキちゃんの肩に手を回して、歩き出そうとした。
 そのとき、新米の看護婦がミスをした。
「よかったわね、夏尾くん」
 ミキちゃんが足を止めた。振りかえって看護婦を見つめる。爬虫類のように冷たいまなざしを受けて、看護婦は凍りつく。
「わたし、そんな名前じゃない……」
「まっ、ミキちゃん! ごめんなさい、間違え――」
「わたし、男の子じゃない!」
 止めようとしたわたしの手をすり抜けて、ミキちゃんは看護婦に襲いかかった。床に押し倒して、ぐいぐい首を締め上げる。
「わたしは女の子! 女の子なのッ!」
「大変よ!」
 廊下の向こうから、三人ほどの看護婦が走ってきた。彼女たちと一緒に、私はミキちゃんの腕を引き剥がそうとした。四人がかりでやっと剥がせるほど、凄まじい力だった。
「いやあーっ! 離して、触らないで!」
「ミキちゃん!」
 私は、ミキちゃんの頬を平手打ちした。はっとミキちゃんがひるむ。その隙にポケットからテープを出して、ミキちゃんの両手首を縛りつけた。
「やめてェ! いやァ!」
 のどを押さえて咳込む看護婦を他の看護婦に任せて、私はミキちゃんを引きずり倒した。そのまま廊下を引っ張っていく。力はあっても体重は軽い。
「先生! 大丈夫ですか?」
「ああ。加療してくる。君らは戻ってくれ」
 ミキちゃんを引きずる私の後ろで、看護婦たちがささやいている。
「ダメよ、あの子の前では禁句があるの」
「総城先生にしか扱えないのよね」
「でも、どうやっておとなしくさせるのかしら? いつも先生が連れてったあとでは、見違えるぐらい温和になるけど……」
「さあ。でも、任せておけば大丈夫よ」

 ミキちゃんの部屋に入って、医師用のキーで鍵をかけた。これで、院長のマスターキー以外では開かなくなった。音も完全に封じられる。
「やめてよぉ! 乱暴しないで!」
 私は、ミキちゃんを引き倒した。いったん倒れた彼女の手首をつかんで、引き上げる。ミキちゃんはひざ立ちの姿勢になる。
「だめだろう、ミキちゃん。あんなに暴れたら」
「だってだって、あの人わたしのこと『夏尾くん』なんて」
「その通りじゃないか、夏尾美樹君。きみは――」
 私は腕を上げたまましゃがみこみ、ミキちゃんの白衣の上から股間に手を押し当てた。
「こんなものがある」
 そう。そこには、柔らかい肉の器官が確かに隠れていた。
「――いやッ!」
 ミキちゃんは唇をかみ締めて、顔を背けた。
 これがミキちゃんの病気だった。米国精神障害診断マニュアルDSM-IVに規定されるところの、Gender Indentity Disorder、性同一性障害。小児期に起こるそれは自然に解消することが多いが、ミキちゃんはもう六年以上、十四歳になっても、自分の性に対して強烈な嫌悪を抱き、女であると主張しつづけていた。その拒否反応が、時に我を忘れて暴力を振るうほど強力であったため、このD棟に入れられているのだ。
 閉じ込められても、ミキちゃんはどうやってか部屋から逃げ出した。そしてしばしば女装する。別の患者のワンピースを奪ったこともあるし、看護婦の白衣を盗んだこともある。看護婦たちは白衣を隠すようになったが、それでもミキちゃんはまた、どこからかそれを手に入れた。
「いくら否定したところで、君の体は男だ。君の年齢では、SRS――外性器形成手術をすることもできない。認めなさい」
「いやっ! いやっ!」
 ミキちゃんは私に半分宙吊りにされながら、涙ぐんで首を振る。ショートカットヘアがさらさらと揺れる。E・クレッチマー分類による分裂気質−細長型体型。非社交的、内気、まじめ、繊細、神経質、善良などの性格と、やせていて顔が細く胸の薄い体型は、典型的なものだ。そんな自分を隠すために、まったく逆の、明るくほがらかで攻撃的・大胆な女性人格を作り出している。
 確かに、ミキちゃんの化けっぷりは堂に入っている。このまま町へ出たら、タレントにスカウトされるかもしれない。それほどうまく、可愛らしい少女の姿を演じている。
 なまじ可愛い外見を持ってしまったのが、この子の不幸だ。
 ミキちゃんは、しゃくりあげながらつぶやく。
「わかってる。わかってるけど……ダメなの、耐えられないの」
「……」
「自分がオトコだなんて考えたくない。そんなの絶対イヤ。お願い先生、わたしをオトコにしないで」
「そうだね……」
「アレするから。ね、アレしてあげるから。わたしを女の子でいさせて」
 私は薄く笑う。これを……この言葉を、いつも待っているのだ。
 だが、簡単に許したりはしない。
「そんなことを言ったって、これはどうするんだ?」
「きゃっ!」
 片手でミキちゃんの両腕を吊り上げながら、私は彼女の白衣をめくり上げた。レースのついたパンティ、それを押し上げる、あってはならないはずの器官。
「これはなんだい」
「……いやあ……」
「言ってみなさい。これは」
「知らない……」
 ミキちゃんは首を振る。私はパンティに手のひらを当てる。ビー玉ほどしかないふたつの玉が隠れている。持ち上げると暖かい。ふたつの袋を指先でやわやわと挟んでやる。
「ミキちゃんの精子を作る器官だぞ。これは何」
「やめて……」
「じゃあこれは」
 指を上に。口紅ほどしかない小さなホース。人差し指を上へ、下へと滑らせる。押しこむとふにゃりとへこみ、頼りない。
「ミキちゃんの精子を飛び出させる器官だぞ。この名前は」
「……」
「言いなさい。さあ!」
「……おちんちん……」
 ミキちゃんは細い声でつらそうに答えた。私はうなずき、手のひらでペニスをくるみこんで、さらに揉み上げた。
 若い性器がすぐに反応し始める。硬く、大きく。どくどくと血が流れこみ、熱くなり、パンティを押し上げる。
「勃起が始まったぞ。女の子がこんなことでいいのか?」
「そんな……」
「そんなじゃないんだ。これがしてほしくていつも逃げ出すんだろう?」
「違います……」
「嘘をついたらだめだ」
 ギュッ、と私は握り締めた。「んあっ!」とミキちゃんは苦鳴を漏らす。育ちきってもパンティの上からはみ出さないほど未熟だが、骨が入っているように硬い。思春期の子の煮えたぎる性欲が詰まっている。
「ほら、こんなに硬くなってるぞ」
「うう……」
「言いたまえ、触ってほしかったと。認めなければ、手当てはしてやれない」
 私がのぞきこむと、ミキちゃんは、思いきり顔を背けた。今日はいつもより、抵抗が長い。
「言わないと、どんどん男の子として感じることになるぞ……」
 私はミキちゃんのペニスを引きぬくようにぐいぐいとしごく。ミキちゃんの足から力が抜け、私の腕に体重がかかり始める。
「ん……ふわ……」
 ミキちゃんは、嫌悪と愉悦の入り混じった複雑な表情を浮かべている。その目許がほんのりと赤く染まり、小さく吐息を漏らし始めた。
「ダメェ……先生、離してェ……」
「離さないよ」
「わたし、いやァ。こんな風にぶら下げられて、無理やりいかされるなんて……」
 体をくねらせて、ミキちゃんは腕を下げようとする。だが、それはもはやさっきのような凶暴な暴れかたではない。頭では逃げたがっているのだが、体がそれを拒んでいる。
 もっと愛撫されたい、と。 
 見せかけの抵抗を続けながら、ミキちゃんは上り詰めていった。息が荒くなる。パンティの布の上にじわじわと先触れのつゆが浮かび、ピクピクとペニスが震える。目がうっとりと潤む。 
「せ、せんせい……」
 ぐっと息を詰めて、ミキちゃんは射精しようとした。
 その一歩手前で、私は袋の下を強く押さえこんだ。愛撫の手を止める。
「やっ、やあっ?」
 ミキちゃんが泣き出しそうな目で私を見る。私は強い声で言った。
「女の子のくせに、射精する気か?」
「いや……」
「自覚しなければだめだ。さもないと、このままずっと男の子として感じさせつづけるぞ」
 私は、弱い愛撫を幹に加えてやる。亀頭を軽くつまむ。布の上からでも、そこがつるつるに張り詰めているのがわかる。吐き出したい、という無言の訴え。
 だが、許さない。ぎりぎりで破裂しないように、中途半端な愛撫を繰り返す。
「そんなぁ……先生ひどい、苦しいよう……」
「何がだね」
「い、言えないよ……」
「じゃあずっとこのままだ」
「うう……」 
 まるい頬に一筋、涙が垂れる。ミキちゃんは、血を吐くようにつぶやいた。
「そうです。わたし、おちんちん触ってほしかったの」
「それだけか?」
「出させてほしかったの! 先生にくにくにしてもらって、おつゆいっぱい出したいの!」
「そうか」
 私は、ミキちゃんの顔をじっと見つめる。震える唇、濡れた頬。強すぎる性欲でアンバランスに歪んだ、十四歳の幼い顔。
「ちゃんと言ったでしょ! はやく、はやくいかせて! こんな男の子のやらしい気持ち、わたしから追い出して!」
「よし」
 私は、ミキちゃんのペニスを一息にしごきたてた。呼吸を読んで、最も気持ちいいペースに保ってやる。
「あっ、ああっ!」
 許された安堵で、ミキちゃんが嬉しそうに叫ぶ。ぎゅっと眉をしかめて、腰を突き出した。
「先生、イクっ! お願い!」
 指に当たる尿道を、びゅろっ、びゅろっ、と精液の塊が通りぬけた。布の中にべったりと張りつき、パンティの隙間から腹にしぶき上げる。
「あああっ!」
 吊り下げられたまま、ビクビクとミキちゃんは射精しつづけた。私は丁寧にペニスを絞りたて、ミキちゃんに思う存分吐き出させてやった。
 射精が収まると、私はミキちゃんの白い腹に張りついた精液を指ですくいとり、口にした。ツンと香りの立ち上る、若い青臭い樹液だった。

 ぐったりとなったミキちゃんを引っ張って、私は壁際に近づかせた。
「さあ、立って」
「え……」
 ミキちゃんはぼんやりと立ちあがる。その背を押して、私は壁に備え付けられた介護用の手すりにつかまらせた。
 ミキちゃんの手首を、テープで手すりに縛り付ける。
「先生……なんで縛るの?」
「さっき廊下で暴れたお仕置きだよ」
「……」
「覚悟はいいね」
「はい……」
 ミキちゃんは従順にうなずく。そう、本来このタイプの患者は内気で善良だ。フラストレーションがいくぶん解消されて、素直になっている。
 それに、これからするのは、本人が望んでいることなのだ。
「ミキちゃんは、どうされたいんだ」
「先生に、犯してほしいです」
 はっきりとミキちゃんは言った。
「先生のおちんちんを、ミキのあそこに入れて下さい。中に射精して」
「どうしてか、わかってるね」
「わたしは女の子だから……」
 桜色の頬で、ミキちゃんは振り向く。
「男の人にセックスされるのは、正しいことなんです」
「そうだね」
「でも、わたしを女の子として見てくれるのは先生だけ……」
 ミキちゃんは、ちょっと寂しそうな顔をする。が、すぐに顔を上げて、健気に言った。
「いっときのお手当てでもいいの。そのうち本当に男の子にされちゃうなら、今だけでも女の子として生きたい」
「女の子だよ、ミキちゃんは」
「先生、やさしい……」
 ミキちゃんはにっこり笑うと、床にひざを付いて、尻を高く上げた。
「おトイレ、済ませてます。ミキのお尻使って……」
 私は表情を隠して、ミキちゃんに近づく。
 ミキちゃんは、私の説明を素直に信じて、私の行為を治療だと思っている。女になりたがって壊れてしまう自分に、一時的に女としての慰めを与えてくれる麻酔だと。
 だが、それは違う。そんな治療は存在しない。効果があるのは、本人が信じているからだ。私がそれをする目的も、治療ではない。
 むさぼりたいから。
「じゃあ始めよう」
「はい……」
 私は、ミキちゃんの白衣をゆっくりとめくり上げた。ストッキングが太ももで終わり、食い込んでいる。境目の肉の盛りあがりが、いかにも柔らかそうだ。するするとスカートを押し上げると、きれいな乳白色のお尻が現われた。
「ミキちゃん、きれいだよ」
「はい……先生のお尻よ。先生だけの」
 ぷりぷりとミキちゃんは尻を振って誘う。私の中で熱いものがたぎり始める。
 丸いふくらみに食いこむパンティ。それに指をかけて下げると、股の部分がぬちゃりと音を立てた。底に大さじ二杯はありそうな精液がたまっている。男の自分を嫌悪するミキちゃんはオナニーをしない。だから、たまに射精する時は驚くほど大量の精液を吐き出す。
 どろどろに汚れきったパンティを、足から抜いて横に置いた。
 それから私は、ミキちゃんのお尻に顔を押し当てた。
「先生……なめて……」
 唾液をたっぷりと垂らし、舌を這わせる。さっきの興奮で汗が浮かび、ほのかに塩からい。舌をとがらせると、柔らかい肉がそれを包んでしまいそうだ。私は思わずそこにかみつく。
「いた……せん……」
 ミキちゃんはうめくが、止めない。私が歯を立てても、じっと耐えている。さっきの言葉は嘘ではないのだ。多分、私が本当に尻をかみきっても、彼女は悲鳴をこらえて耐えつづけるだろう。
 薄い歯型を残して、私は噛むのをやめる。
 尻と太ももの境目の谷間をねぶり、ストッキングの手前まで太ももをなめ下ろす。ここの中身は脂肪ではなく筋肉。まだ固まっていないしなやかな筋肉が、むっちりした弾力で舌をはね返す。
「あ……いい……なんだかザワザワするよ……」
 ミキちゃんがつぶやく。
 それから、私はミキちゃんのお尻に顔を戻した。中心――暗い桃色をしたすぼまりに舌を押し付ける。
「ひゃん!」
 ミキちゃんがはねる。肛門がきゅっとすぼまる。だが、すぐに柔らかくなる。ひだをさらす穴の奥に、私は舌をつき込む。
 ちゅぷちゅぷちゅぷ、と唾液を塗りこめた。「先生、もっと、もっと……」とミキちゃんがねだる。もう彼女のここは、完全な性器になっている。
 私は少し下の袋にも吸いついた。ミキちゃんの小さな玉。「そこは……」と戸惑いながらミキちゃんが言いかけるが、構わない。垂れてきた精液で濡れた袋を、口の中に含んでころがしてやる。
「あっ、ああっ!」
 がくっ、がくん、とミキちゃんが崩れそうになった。ここを含んでやるのは初めてなのだ。
 股から手を入れてペニスに触ってやる。そこはもう蘇って、腹にへばりついている。精液でぬるぬるのそれをしごいてやる。ミキちゃんが焦った声を上げる。
「やめて、ミキを男の子にしないで。それよりお尻……」
 私は手を離してやった。ここにもまだ口で触れたことはない。だが、そのうち味わってみたい。
 私は、顔を上げて聞いた。
「もう、いいかな」
「はい……ミキに突っ込んでください」
 私は、そばに落としたパンティからミキちゃんの精液をすくいとって、肛門に塗りこめた。それから、自分のペニスを取り出した。
「入れるよ」
「……」
 私は、ふたつのふくらみに両手を置いて、真ん中にペニスの先端を押しつけた。
「ほら、飲みこんでみなさい」
「はい……」
 ミキちゃんは、自分から尻を押し付けてきた。ぐっと力がかかる。
 張り詰めた亀頭が、傘の下が、血管の浮いた茎が、ずぶずぶと肉の中に飲み込まれていった。
「んっ……ふっ……」
 ミキちゃんは鼻を鳴らして腰をくねらせ、うまくペニスを奥へ導こうとする。そのつたない動きが、私の欲望を燃え立たせる。
「は、入りました、奥まで……」
 ミキちゃんが報告した。振りかえって私を見上げる。
「どうですか? わたしのお尻……」
「ああ、素敵だよ。ねっとりしていて温かくて……女の子そのものだ」
「うれしい……もっともっと、わたしを味わって」
 動き出す前に、私は手を伸ばしてミキちゃんの体に触れる。白衣の上から背中をなで、胸をすくいあげ、狭い肩をつかむ。ふにゃふにゃの二の腕をつかみ、ナースキャップを乗せた髪をかきまわし、のど首をこすり上げる。尻にも触り、太ももにも触り、唇に指を突っ込んでなめさせる。
 そこもあそこも、このみずみずしい体がすべて、今は私のものなのだ。私はこの体の中に肉棒を突き刺し、体液を注入することができるのだ。
 私はミキちゃんの背中を見下ろして、叫びたいような征服感を味わう。
 きゅっきゅっ、とペニスの根元が締めつけられた。ミキちゃんがもの欲しそうな目で見ている。はやく、と言っているのだ。
 私は動き出す。ミキちゃんが安心したように言う。
「先生、好きなだけ刺して……好きなだけいってね。そして、わたしにおつゆいっぱい注いで……」
 彼女の言葉と肛門の動きが心地いい。普通アナルは内部が広がっていて、口の部分にしか締めつけ感がない。だが、十四歳のミキちゃんは直腸もまだ細く、長さも短い。ペニス全体が締めつけられ、亀頭にはじけるような内臓の感触が当たる。ぐいぐいと腰を動かして、腹の中を探るようにペニスをねじる。
「当たってるゥ……先生のおちんちん、ミキのおなかの中に当たってるよぉ……」
 うれしそうにミキちゃんが漏らす。
「もっと奥まで突いて……持ち上げられるの、ゾクゾクするの……」
「ああ、こうだね? こうだろ?」
「そお……ああん、わたし、おなかかき混ぜられちゃってる……」
 腹を破られる危険と背中合わせの快感に、ミキちゃんの声がとろけ出す。
 もっと奥まで、深くまで。私は勢いよく腰を打ちつける。ぱんぱんぱん! と尻に当たる音が響き、あふれ出した腸液がしぶきを上げる。ミキちゃんが縛られた手をもぞもぞさせ、哀願する。
「先生、ミキも出したい、ミキも触りたいよう」
「だめだ、女の子がそんなことしちゃ」
「ああん、そんな……」
「女の子のままいくんだ。いきたければ、私のペニスで感じて射精しなさい」
「じゃあ、もっと、もっと強く……」
 言われるまでもない。私は慈悲のかけらもなく、ミキちゃんの体内にペニスをこすりつける。そうすればするほど彼女は喜ぶ。普通の女は、体だけが目当ての男を嫌う。だがミキちゃんは、体を女として扱われるのが望みなのだ。
「先生っ、かたいっ! おちんちんかたいよ! 感じてる? ミキで感じてる?」
「ああ、すごく気持ちいい」
「うれしい、出してよ? そのまま出してよ? 途中で柔らかくなっちゃダメっ!」
 私も余裕がなくなる。ミキちゃんは美しい。そのことを他の誰も知らない。私だけの患者、大切なペット。
 強く摩擦されたミキちゃんの粘膜が、ぐちゃぐちゃに柔らかくなっている。肉棒にからみついてめくれる粘膜を指でもみ、尻の肉をつかみ潰す。太ももに滑らせてストッキングのゴムに手を突っ込み、思いきりナイロンを引き裂く。ぴーっ! と音を立ててナイロンが破れる。真っ白な太ももに爪を立てて強く引っかく。
「いたあァん!」
 ミキちゃんが嬌声を上げる。痛みすら快感なのだ。さらさらの髪の中の脳は、あさましい獣欲で沸騰してしまっている。可憐な少女の皮をかぶった、セックスの肉人形。
「アッ! アッ! アッ!」
 半開きの口からよだれの糸を落として、意味のない叫びを上げる。頂点だった。ミキちゃんはいま、全身が絶頂したいだけの性器になっていた。
 その華奢な背中にしがみついて、私は思いきり抱きしめた。
「出すぞ!」
「はァっ、はいッ!」
 私はミキちゃんの腸壁に亀頭を押し付けて、ドクン! と射出した。柔らかくへこんだ粘膜の周りに液が飛び散るのがわかる。ミキちゃんの腹の中を貫くように、鋭い粘液の槍を浴びせつづける。
「せっ、せんせいイッてる! イッてるよう!」
 歓喜の絶叫とともに、ミキちゃんも震えた。ビクッ、ビクッ、と下腹部が痙攣している。私の幹の下で前立腺の収縮、激しい射精。白衣の腹は精液まみれになっただろう。
「もっとぉ、もっと出してェ!」  
 次の交わりはいつになるかわからない。いま出せる限りすべての精液を吐き出そうと、私たちは股間の筋肉を絞り上げた。

 廊下に顔を出して人がいないのを確かめると、私はミキちゃんを抱いてシャワールームに向かった。
 白衣を脱がせ、介護用のバスに沈めて体を洗ってやる。
「んん……」
 ミキちゃんはとろんとした目で、私のなすがままになっている。気絶はしていない。至福の表情で私を見つめている。こうやってお姫様のようにエスコートされるまでが、彼女の特別な時間なのだ。
 きれいに体を清めてから、患者用のパジャマを渡した。ミキちゃんはおとなしくそれを身につけた。
 私は汚れた白衣を捨てる。また、新しいものを手に入れなければいけないだろう。
 ミキちゃんが部屋を抜け出すのも、衣装を手に入れるのも、すべて私の手助けでやっていることだった。誰もそれを知らない。
 教えてたまるものか。ミキちゃんは、私がこの辺鄙な精神病院で初めて見つけた、最高のペットだ。
 彼女は二年前、親類に連れられてここへやってきた。その頃は、私も普通の患者として彼女を扱っていた。
 女装した彼女を初めて見たのは、入院して三ヶ月の時だった。その時彼女は、全裸の体にシーツをまきつけ、妖精のような姿で廊下を歩いていた。それを見たとき、私は変わった。
 ミキちゃんは掛け値なく美しい。この先私が生きていても、これ以上美しい人間には会えない、そう思えるほどに。
 だが、同僚やナースたちにとって、彼女はまず患者であり、次に男だ。彼らにはミキちゃんの美しさも、余計な付随物でしかない。
 また、ここには患者たちの正常なコミュニケーションもない。ミキちゃんを見舞う人間もいない。ミキちゃんの美しさは、私が受けとめてやらなければ、そのまま捨てられ、朽ちていくものなのだ。それを手に入れて、何が悪いのか。
 私は彼女の主治医になり、彼女の行動を二十四時間規制できる立場を手に入れた。それから、慎重なプロセスを踏んで、彼女を抱くことに成功した。
 そのとき知った。ミキちゃんがこうなった原因は、彼女の父親にあった。父親は少年愛の嗜癖があり、その歪んだ欲望をミキちゃんにぶつけたのだ。ミキちゃんは父親を避けるために女装を始めたが、すでに開発されてしまった強い性欲までは、消すことができなかった。
 それがわかれば簡単だった。女として扱い、感じさせてやればいいのだ。私の読み通り、ミキちゃんは完全に私になつくようになった。
 以来ずっと、このひそかな「治療」が続いている。
 だが、それはいつまで?
「先生、帰ろ」
「ああ」
 私はミキちゃんを腕につかまらせて、廊下に出る。しばらく行くと、ステーションからやってきた看護婦が合流した。
「まあよかったわね、ミキちゃん。先生と仲良し?」
「うん」
 うなずくと、看護婦は私の耳元で小さくささやく。
「大丈夫でしたか」
「マッピング法と誘導催眠で抑えた。根治療にはならないがね」
「ご苦労様です」
 疑いもせず看護婦はうなずいた。まだ当分、医師にあるまじき私の行為が発覚することはないだろう。
 部屋の前で、ミキちゃんは私と向き合った。
「先生、ありがとう」
「ああ」
「先生……あのね」
 ミキちゃんは彼女らしくもなく少しためらったが、やがて言った。
「ミキ、先生のお嫁さんになりたい。いいですか?」
「……」
「ダメ?」
「ああ、いいよ。ミキちゃんがここから出られたらね」
「ありがとう! ミキ、早くよくなるね!」
 明るくうなずいて、ミキちゃんは手を振る。看護婦が扉を閉め、鍵をかけた。
「じゃあ、私は戻るから」
 私は歩き出す。いまの嘘を思い返す。ミキちゃんがここから出る日、か。
 そんな日は永遠に来ないのだ。ここはD棟。デッドエンド、行き止まりの建物。ここに入れられた患者は、死ぬまで出ることはできない。医学的な理由のある患者はむしろ少ない。それ以外の事情で彼らは幽閉され、それゆえに出されることはない。
 ミキちゃんを入院させたのは、異常な行為の露見を恐れた父親だ。資産家の彼が病院への献金をやめない限り、ミキちゃんはここに留められるだろう。
 そして、私のペットでありつづける。 
 出口のゲートまで行くと、反対から同僚の島根が入ってきた。
「おっ、総城。今日メシ食いに行かんか? ナースたちといっしょに」
「いや」
「付き合い悪いなあ。おまえ狙いの娘もいるんだぞ」
「きれいどころなら間に合ってるよ。君もデートしてみるか」
「勘弁してくれ、おれはオカマを見ると熱が出るんだ」
 医者がそんなこといっちゃいかんな、と笑いながら、島根は去って行った。そんなものだ。彼らにとってミキちゃんは男。それでいい。
 ミキちゃんは、私だけの女の子だ。



―― 了 ――



top page   stories   illusts   BBS