フェラチオが一番うまい♀職は――修行ウサシンたん卒業試験編

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 その服事の女の子は、倒れた後もしばらく心臓が動いていたんだと思う。
 首の二条の裂け目に、こぽっ、こぽっ、と血が湧いていたから。


 私と老師の前に、立派な王冠をかぶった騎士がやってきた。
 短い金髪の娘だ。豹を思わせる美貌だけど、一挙手一投足に気が行き届いていて、美しいというよりは鋭い。王冠を持っていることからも、かなりの使い手だと知れた。
 娘は室内を油断なく見回して、先客がいないことを確かめると、ベッドに腰掛けた。しばらくじっとしていたけど、じきに物入れから細い布を出して、顔に巻いた。
 目隠しだ。
 そのまま娘はじっと座り続けた。変化はひとつだけあった。娘の陶器のように白い頬が、少しずつ紅に染まっていくこと。
 数十分もたった頃、別の人間が部屋に入ってきた。カタールを持った暗殺者の男だ。そいつは物も言わず、音も立てずに娘に近づいて、やおら彼女をベッドに押し倒した。
 びくっと肩をふるわせた娘が、「あなたなの?」と聞いた。男は無言で娘の胸をはだけさせ、スカートをまくりあげて、乳房や太ももを無遠慮にまさぐる。
「あなたなのね」と娘が言った。とげとげしい口調だったが、その底に、どこかほっとしたような響きがあった。
 娘の豊かな肢体にくまなく唇を這わせて、唾液と口づけのあとでべたべたにすると、男は性急にズボンを下げて、娘の胸に馬乗りになった。いきり立ったグロテスクなものを押し下げて、娘の唇に埋め込む。「ん、むぐ、うく……」とうめきながら娘が唇を動かす。
 ぐりぐりと尻で乳房を押しつぶして、男が腰を前後させる。娘は大きく開いた太ももの間に両手を差し込んで、くちゅくちゅと音を立てて指を使う。声はほとんど立てず、ぎしぎし、さわさわ、とベッドのきしみとシーツの衣擦れだけが部屋に満ちる。
 じきに二人が、ぶるるっと細かく痙攣した。
「う……は……」
 のけぞってうめいた男が、息を吐いて娘の横に降りた。娘の唇から男の股にまで、白い粘液の糸が伸びた。
 口元をぬぐってその糸を断ち切った娘が、体を起こして胸を抱きかかえる。寒くてたまらないというように震えている。
 目隠しをしたまま男に顔を向けて、「気は済んだ?」と聞いた。男は煙草を取り出して火をつける。紙巻きがすべて煙に変わるまで、二人とも口を開かない。
 やがて、男は煙草を捨てて立ち上がった。部屋に来てから出て行くまでの間、彼が口にしたのはひとことだけだった。
「次は抱いてやる」
 男のいなくなった部屋で、娘が目隠しを外す。身だしなみを整える仕草が遅い。
 立ち上がって出て行く間際、長いまつげを伏せて、憂いを帯びた顔でつぶやいた。
「また一週間か……」
 紫煙とねっとりした体液の匂いが、部屋に残った。

 私と老師の前に、僧侶の少年と錬金術師の少女がやってきた。
 二人とも二次職だけど、服事と商人が背伸びして上級職の真似をしているような幼さがあった。うきうきした顔でベッドに上がり、向かい合って座る。
「それじゃ、しましょっか」
「う、うん。緑ポもってきた?」
「ありますよ〜」
 少女が出した毒消しを、二人で口に含む。飲むわけではなく、頬にためているようだった。
 それから二人で、互い違いに横たわって、ズボンを脱ぎ、スカートをかき上げた。腰を抱いて股間に顔を埋め、もぞもぞと動き出す。
「あ、まーちゃん……水浴びしてきたんだ」
「そうですよ〜。アコさんにはキレイなとこ見てもらいたいもん」
「ごめん、ぼく時間がなくて……」
「臨公終わったばっかりなんでしょ? 気にしないでくださいな。そのための緑ポです」
「うん、ごめんね」
 口にためた毒消しで互いのあそこをきれいにすると、二人はそのまま愛撫を始めた。幼いほそっこい体をからめて、ぴったり唇をつけ、愛しそうに舌を動かす。
「アコさん、アコさん、あたしぃっ」
「まーちゃん、今日は早いね」
「だって、だってぇっ、朝からずっとアコさんのことぉ……っ」
「ぼくもまーちゃんのこと、まーちゃんのことが」
「アコ、さんんっ!」
「まーちゃんっ!」
 びくびく震える相手の体を、きゅうっと強く抱きしめて、二人は硬直した。
 それから仰向けに体を開いて、はあはあと長い間横たわっていた。
 やがて体を起こした少女が、小瓶を取り出して唇につける。とろとろと白い粘液が流れ出した。瓶にためたそれを二人で覗き込む。
「少し飲んじゃった。いっぱい出してもらったのに……」
「そうなの?」
「でもいいか、アコさんすぐ溜めてくれるし。今度またくださいね!」
「あは、あははは」
 ばつが悪そうに頭をかいた少年と、嬉しそうに頬を染めた少女が見つめ合う。
 後片付けをすると、二人は手に手を取り合って出ていった。
 子供たちの汗の、お菓子のように甘い匂いが部屋に残った。

 私と老師の前に、僧侶の女と服事の娘がやってきた。
 驚いたことに、女はただの女じゃなかった。壁にもたれて僧衣のすそを持ち上げた女の下腹には、薄い下着を突き破らんばかりに勃起した男のしるしがあった。
 女は含み笑いをしているような口調で、静かに命じた。
「さ、今日も。……清めなさい」
「はい、お姉さま」
 ひざまずいた娘が、聖体に拝謁する信者のように、女のそこに口づけした。下着をひき下ろし、舌を懸命に伸ばして、ぺろり、ぺろり、となめ上げる。
 僧侶と服事、優艶な美貌の女といたいけで無垢な娘、落ち着いた指図と無私の服従。
 二人の姿はうるわしいと言えるほど整ったものだったけど、ただ一点、女の下腹にだけ、卑猥で露骨な光景があった。
 そのいやらしさが、じわじわと二人の全身に広がっていく。
 娘の舌が這い上り這い下りるにつれ、女がそわそわと足を踏みかえる。二人の肌に汗の玉が浮き、はあはあと呼吸が荒くなる。女がちろりと唇をなめて、低い声を漏らす。
「いい……いいわよ……あなた、いつも……顔、変わっていくもの……」
「お姉さまこそ……とても、とてもいやらしい顔に……」
「わかってる、わかってるわ。抑えられないの。この時だけは、あ、頭が……ふぅっ」
「どろどろで……ぐちゃぐちゃ……なんですよね」
「そう……そっ、そおっ!」
「イヤですよね……耐えられませんよね。だから、だから早く……」
「早く、早くこれを済ませて、私を正気に戻してっ!」
「はい、お姉さまっ。汚いの吐き出して、私に押し付けてくださいっ!」
 きりきりときしみが聞こえそうなほどこわばったものを、娘がぐっぷりと飲み込む。ぐちゅぐちゅと激しい動きを受けて、女が頭につけた天使の羽を振り乱して叫ぶ。
「吸って、吸ってぇ、根元から先まで思いっきり、あなたに吸い込んでぇっ! あなたのあったかいおくちに、きれいなおくちに、私のドロドロをぉっ!」
「ほ、ほねえはわ、ひいっ、ひいえうっ!」
「お、お願いィッ!」
 くしゃっ、と娘の桃色の髪を握り締めて、女が絶叫する。
「んーっ、んんーっ、出っ、出てるーっ! いっぱいいっぱいいっぱぁいぃーっ!」
 びくん、びくん、と娘の頭をはじき飛ばすほど激しく、腰を突き出した。
「は……あ……」
 絶頂が過ぎると、女はずるずると床にへたりこんだ。目を閉じ、口元を押さえて静かに飲み込んでいた娘が、女の懐にぱさっと体を預けて、ささやいた。
「……ありがとうございます、今日も、お姉さまを清めさせていただきました」
「はあ……ありが……とう。今日も、あなたに……」
「お礼はいりません。私、嬉しい。これからも、お姉さまの穢れはすべて私に……」
「……ほんとに、いい子……」
 二人は目を閉じて、そっと口づけを交わした。
 それから立ち上がった。女が先に立って、振り返りもせず歩き出した。
「さ、行きましょう」「はい……」
 女二人の、息苦しいほど濃い蜜の香りが、部屋に残った。

 私と老師の前に、鍛冶の男と魔道士の少女がやってきた。
 青い髪の童女のような魔道士は、終始ひと目を警戒するようにきょろきょろと辺りを見回していたが、男はいっこう気にする様子もなく、カートから様々な道具を取り出した。
「さあ、始めるよ。座ってね」
 不安げな顔でベッドに腰掛けた少女に、男は首輪をつけ、足かせをはめ、後ろに回って手錠をかけた。「目隠しは……?」と聞かれて、その前に、ともう一つの道具を取り出す。初心者が使うイボのついた棍棒だ。ただし、大きさはかなり小さい。試験管ほど。
「……クラブ?」
「超強いやつだよ。星がみっつ入ってるから、その力で勝手に動くんだ」
「どうするんですか」
「ミューが最近、物足りなさそうだからね」
 男は眼鏡の奥の目をにっこりと細めて、正座した少女の太ももにクラブを当てた。ちかちかと星のかけらが輝いて、ぶるっ、ぶるっ、とクラブが震える。
「これをあそこに入れてもいいよ」
「入れてもいいって……まるで、あたしがほしがってるみたいじゃないですか!」
「ほしがってるでしょ? 僕のこれ。奴隷のくせにさ」
 ずいっ、と男が腰を突き出す。少女はさっと顔を背けた。その顔に男が手早く目隠しを巻いて、肩を押した。少女はベッドに倒れこむ。
「きゃっ」
「はい、持って。いつでも突っ込んでいいからね。あ、でも焦らしたほうが気持ちいいとは思うよ」
「やめてください、突っ込むなんて言い方……」
「もちろん、ご奉仕もしっかりね」
 男は少し離れたベッドのはしに腰を下ろして、ズボンの前を開いた。
 目隠しをされた少女は、いっそう心細くなったようだった。何でもいいから頼れるものを、という感じであたりに首を突き出し、男のいるほうへとずるずる這いよる。
 男の足にたどり着くと、それに沿って顔を進め、突き立ったものに頬を押し付けた。それの赤みが移ったように、すべすべの頬がゆっくり上気していった。
「始めてよ」
「……はい」
 花びらのような唇を開いて、ちゅぷちゅぷと含み始めた。
 少女の髪をさらさらと撫でながら、男が尋ねる。
「どんな感じ?」
「ごつごつして……ほっぺたの中にこすれてます。あいもすおく濃いれふ。おいいさん、きょうおやっはり、まだ洗って……」
「ないよ。そのクラブ作ってたから。ミューのサイズに合わせてあげたんだよ?」
「そう……れふか……んむ……」
 少女は、無感動を装っているような平らな口調で答える。
 しばらく舌を動かしていた少女が、やがて、背中に回された手で長いマントをたくし上げ始めた。男が何気ない調子で聞く。
「あ、マントじゃまかな? ひっぱってあげようか」
「……ふぁい」
「ふふ、あそこに触りたいんだね」
 ぴくっと少女が動きを止めた。二呼吸ほどしてから、開き直ったように言った。
「ひっぱって、お尻出させてください。あたしも気持ちよくなりたいから」
「やれやれ、好きモノになっちゃって……」
「誰のせいで!」
 叫んだ少女のマントをするりと引き上げて、現れたストッキングにつつまれたお尻に、男が指を忍び込ませた。先端をくいっとかぎに曲げる。
 少女が、ひうっ! と背中を丸めた。
「そ……そこ違、おし……!」
「違う? 前がいいってことなんだね。どうぞ、好きなだけ」
 そっと指を抜いた男が、クラブを握った少女の手を取って、ふくらみの間に導いた。クラブのごつごつした先端が、太ももの合わせ目の奥の、ぴったりした衣装で覆われた少女の股間に当たるように、先を傾ける。
「さ、ぐりぐりしてごらん。気持ちいいよ」
 目隠しの下の頬を、夕日の色に染めた少女が、あきらめたように手首を動かした。
 後ろから前の部分に触っているんだから、とうてい楽な姿勢じゃない。不自然に体を曲げて、もどかしげに少女は腰をくねらせる。その頭をつかんで、男は容赦なく自分の股間に押し付ける。そろそろ抑えが利かなくなってきたらしく、少女はねだるようにして男のものを頬の中に吸う。
 うっとりした顔の男が、少女の小さな胸のふくらみをぎゅっ、ぎゅっ、と握りまわしながら、ささやく。
「想像してごらん、これがミューのあそこをぐりぐりしてるんだ」
「ふぉれ……あらひの……あそふぉ……く……ふ……」
「ミューの中に入りたい入りたいって言ってるんだ。おなかの中をいっぱいにしてくれるんだよ」
「おなは……なふぁ……」
 少女の手首に力がこもった。股の細い布をかきわけ、ストッキングをぷちっと破って、小さなひだの間にクラブがもぐりこんだ。
「ぃぁああぁはっ!」
「ふふふ、とうとう自分で破っちゃったか……」
「おいいさんっ、おにいふぁんの、これぇっ!」
「可愛いなあ、ミューはほんとに可愛いなあ……犯してあげたら、こんなに狂ったミューは見られなくなっちゃうんだろうなぁ……」
「いや、ひやぁ……おねあい、いつか、いつははくらさいよぉ……」
「だーめ。満足したくて満足できないミューが、いちばんかわいいんだからさ……」
「ふぅ、ふぅうーん!」
 悲しげに男のものをしゃぶりたてながら、せめて代わりにとばかり、少女は激しく股間の道具をひねる。
「ああ、ミュー、ミュー、大好き……だ……よっ!」
 笑顔のままで、男がうっと眉をひそめた。しっかりと少女の頭を押さえて、ぐいっ、ぐいっ、と腰を突き出す。同時に少女が、太ももをピンと伸ばして、股の間に赤いものが混じった泉をぷしゅっと噴きこぼした。
「ひくうぅぅっ!」
 ……事を終えて、少女の戒めをすべて外した男が、さわやかな笑顔で立ち上がった。
「さ、狩りに出ようか。ミュー、ストームガスト覚えたんだよね」
「ま、待ってください。まだ腰が……」
「ほら、立ってよ。稼いでくれないと、置いてっちゃうよ」
「は、はい!」
 すたすたと歩く男の後を、処女を失ったばかりの少女が、ふらつく足取りで追う。
 かすかな血の匂いが、部屋に残った。

 私と老師の前に、騎士の青年と狩人の娘がやってきた。
 頑丈なプレートを身につけたとても体格のいい青年と、豊かな胸をきっちりと胸当てで締め付けた、細身でいかにもすばしこそうな、銀髪の娘。年や強さも近そうだ。一目で、狩りの時にも助け合う前衛と支援の間柄だとわかった。
「外でするのに慣れちまったから、部屋の中だとかえって緊張するよな……」
「大丈夫だって、今日は珍しくみんなが一人もいないもの。もっとも、誰か顔を出したらすぐPTに切り替えなきゃいけないけどね」
「それもドキドキしていい、か?」
 ベッドのバネを確かめたりしていた青年が振り向くと、娘はあちらを向いて髪をいじっていた。それまでつけていた実用一辺倒の亡者の三角布を外して、代わりに心臓の形の小さな髪留めをつける。
 振り向いて、子供のように無防備な顔で、えへっ、と笑った。
「やっぱこれだよね♪ よそではつけないんだぞ」
「そのせいで、彼氏なんだからプレゼントぐらいしろってみんなに言われるんだ」
「見せてもいいの?」
「……いや、だめだ」
 顔を赤くしてじっと見つめた青年が、ぎくしゃくと歩を進めて、娘を軽々と抱き上げた。
「きゃっ?」
「おまえは、おれだけのものだ」
「……そぉだよ、ティー」
 青年の首に腕を巻きつけて、ちゅ、と娘は口づけする。お姫様のように両腕で抱えた娘を、青年はそっとベッドに横たえた。
「なあ」
「ん?」
「今日は、おれにさせてくれないか」
「何を?」
「おまえを、おれの、その……口で、してやりたい」
「えっ」
 つぶやいた少女が、戸惑ったように目を泳がせた。
「わ、わたしの……体とかじゃないよね。もしかして……ここ?」
 タイツに腰布を重ねた腹の下あたりを、ちょいと指さす。青年は真っ赤な顔でこくこくとうなずく。
 同じように赤くなってしばらくためらったものの、娘は少し顔を背けて、「今日なら、いいよ……」とうなずいた。
「ん、それじゃ……」「うん、脱ぐ」「み、見てていいか?」「それはちょっと――って言っても意味ないか。う、うん。見て……」
 ベッドのはしに腰掛けた娘が、尻を浮かせてもぞもぞとタイツと下着を脱ぐ。その前に座り込んだ青年が、目を皿のようにして見つめる。
 つま先から下着を抜き取ると、娘はひざを開いて、青年の顔を迎え入れた。閉じた唇をふるふる震わせてつぶやく。
「うあぁ……こ、これ恥ずかしいよぉ……」
「我慢してくれ、な」
 青年が娘の太ももにさわさわと頬ずりしながら、腰布の中に顔を進めた。
「ひゃう!」「うぷ……」
 娘があごをはねあげ、青年の声が何かに塞がれた。ぬちぬちと濡れた音が上がり始める。
「ん……ミルヒのここ、きれいだな。ピンクでつやつや光ってる……」
「うわ、うわぁ……い、言わないで……」
「ほんとにきれいなんだよ。おれ感動してる……それにこのトロトロ、んむ、おいしいし……」
「い、言うな言うなぁ」
 娘が力のこもっていない腕で、青年の頭をぽかぽか叩く。その動きが次第にゆっくりになって、しまいには「ふはぁ……」と手を置いてしまった。後ろに体を傾けて、大きく足を開いていく。
「き……きもち……ティー……」
「すげ、どんどん……ミルヒ、もっと飲ませて」
「で、出ちゃうのぉ、なんかしびれて、止まらなくて……」
 体を支えきれなくなって、どさっとベッドに横たわった。潜りやすくなった青年がいっそう強く顔を押し付けて、くちゅくちゅきゅぷきゅぷと舌を突き込み、喉を鳴らす。両腕で顔を隠した娘が、反芻するように小声で何度もつぶやいた。
「ティーが飲んでる、ティーがわたしの、わたしのあんなの、ティーが喜んで……」
 焦った仕草でベルトをほどいて胸当てを外し、ふるんと躍り出た乳房を手で包みながら、娘が細い声で叫んだ。
「ティー、飲んでぇ……っ」
「ぷはっ、飲ませるの、いいだろ?」
「うん、うんっ! ティーの中に、わたしがっ!」
「そのままイっちゃえよ、手伝うから」
「うんんっ!」
 青年の舌の動きと、娘の指の動きが、きれいに同じ勢いで激しくなっていった。くるくるくる、と左右の乳首を回していた娘が、きゅっとそれをつまんで叫んだ。
「中お願いっ!」
「ん、んんっ!」
「あ、いいっ、いいよそこっ、あっああぁぁっ!」
 弓なりにピンと体を反らして、娘はきつく目を閉じた。青年の顔にちゅっと潮がしぶいた。
 さざなみのように体を震わせて静止していた娘が、どっと力を抜いて横たわった。額の汗を拭いてつぶやく。
「はー……すごくイっちゃった……」
「よかったか?」
「うんー。とろけちゃった……」
「そうか。よかったな」
 笑った青年の顔を、体を起こした娘がシーツで拭いた。こんなにイったんだわたし、と
恥ずかしそうにつぶやく。
「ティー、交代するよ」
「してくれるか?」
「もちろん、いっぱいお返ししてあげる。あっ、それともこっちのほうがいい?」
 腰布の上から足の付け根に手を当てる。青年は首を振って、立ち上がった。上着の裾まで持ち上がるほど、ズボンの中が膨れ上がっている。
「おれ、ミルヒの中にしたい。でも、今日はやばい日だろ」
「……うん、こっちからわたしの中に出して♪」
 明るい顔で唇を押さえた娘が、青年のズボンを下げた。ぶるん、と大柄な体に相応しいものが飛び出す。
「み、ミルヒっ!」
 あわただしく青年が押し下げたものを、はぁい、と笑って娘が握る。とても口に入りきらない大きさなので、先端だけをかぷっとくわえて、両手の指で根元を包む。
「うはぁ……ミルヒぃ……」
「おふひって、ひもちいいよねっ!」
 じゅぷじゅぷじゅぷっと顔を動かし始めてすぐ、二人が「あ」とつぶやいた。
「うわ、ギルマス来ちゃった……」 
「み、ミルヒ、またあとで」
「……だーめっ」
 いたずらっぽく笑って、娘が動きを再開する。「はっ、くふっ」と青年がうめく。
「んふふ……ぷはっ、ティーの番でよかった」
 いったん顔を離して、ぬらぬらになった幹をしごきあげながら、娘がささやく。
「冷静に、落ち着いてね? 誤爆ったらおしまいだからね?」
「そ、そんなこと言っても……は、はぉう……み、ミルヒぃ……」
「今度ギルマスにバレたら、わたしたちこんなことできなくなっちゃうよぉ……?」
 くぷっと再びくわえて、青年の顔を薄目で見上げながら、かぷかぷと先端を出入りさせた。「はうっ、はおぅっ!」と青年が娘の頭に指を食い込ませる。
「お、落ち着けって、無理っ!」
「なんでー? ここからぴゅって出すだけでしょ? わたしみたいに体中ぞっくぞくになったりするのお?」
「なるよ男だって! そこ真っ白に……」
「まっひろになっひゃえ、いっふぁい出しひゃえっ!」
「みっミルヒっ、うぁうおおおっ!」
 じゅぷじゅぷと唾液を漏らしていた娘の唇から、ぶぴゅっと白いものが噴き出した。「ん!」と娘は顔をしかめたものの、手の動きを止めず、しっかり唇で包んだまま大きく幹をしごき上げた。
「うあっ、うはっ、うがぁっ!」
「〜〜〜っ! んごいーっ……」
 ぽーっと上気した顔で、娘は丁寧に精液をしぼり出した。ひざ立ちで身を乗り出して喉の奥深くまで先端を迎えて、ほらここに注いで、というように白いのどを指差す。
「そ、そんな奥まで……ミルヒ、すげぇ……」
 歯止めが利かなくなったように青年が思い切り腰を押し付けて、体を震わせた。
 長い間そうしてから、青年がようやく腰を引いた。萎えたものが驚くほどの長さでぬるぬると出てくる。唇が開放されると、娘はほおっと深呼吸した。
「ああ、多かった……おなか、たぷたぷ言いそうだよ」
「こ、ごめん……」
「ん、いいよ。お互い様だもん」
 ぱたぱた手を振った娘が、でも、と首を傾けた。
「ティー、誤爆らなかった……残念!」
「怖いこと言うなよ、おい……」
「ふふ、次はさせちゃうぞ」
「言ってろ」
 その後も、二人はじゃれ合うようにして互いの服を着付け、見つめあいながら出て行った。
 夏草のような汗の香りが、部屋に残った。

「このように、一口に男女の交わりと言っても、さまざまな形態があるのです」
 隠行の術を解いた老師が、そう言った。私も姿を現して、師の隣に並んだ。
 イズルードの町の空き家だ。老師はちまたの噂を調べて、ここでしばしば密会が行われているということを聞きつけた。そこで二人で見学に来たんだ。
 噂は本当だった。私たちはここで、姿を隠して何人もの交わりを見た。人が二人だけの時にどんなに大胆に、奔放になるのかを、つぶさに見た。
 それは想像以上の光景で、私は何度も、火照ったあそこに伸びそうになる手を押さえなければいけなかった。
 私だけじゃなくて、老師もそうみたいだった。片眼鏡をかけた目をきつく閉じて、やれやれというようにとんがり帽子をかぶり直す。頭の後ろで縛った緑の髪が、ゆらゆらと揺れた。平常心を保つのに、いくらか疲れたんだろう。
 老師は別に年寄りじゃない。私の国では教えを請う相手をこう呼ぶんだ。年は私より少し上ぐらいだと思う。名はオーム、オーム・エンバー。遥かな多島海に名をはせた偉大な竜の名。そして職業は魔道士だ。
 はたから見れば妙な光景だと思う。魔道士のオームを師と仰ぐ私は、暗殺者なんだから。
 でも、ちゃんとした理由がある。
 オームは私を見つめて、深みのある穏やかな声で言った。
「どうですか。これまでの見学で、男を惑わせる方法を感得できたと思いますか」
「……はい、老師オーム。私は何かをつかめたように思います。あなたのおかげです」
「それはけっこうでした、セイレン」
 オームはそう言って、かすかに微笑んだ。
 青蓮、それが私の名。異国から同じ暗殺者の兄とともにこの国へ来た。
 いや、同じ、と言っていいかどうか。
 兄の腕はこの国でも通用して、すぐ有名になった。今では世界の秩序に背く怪物を狩る、特殊なギルドに入っている。彼は私を、同じような腕利きの暗殺者にしたがっている。
 でも私は、まだ暗殺者としては駆け出しだ。何しろ転職したのはこちらへ来てからだ。
 だから、兄は私に師をつけようとした。彼が選んだのは、当然、腕の立つ暗殺者だった。
 でも私は、それを拒んだ。拒んで、オームを師に指名した。そして多くのことを学んだ。
 その関係も、今日までだ。
「オーム。今まで長い間、ありがとうございました」
 私は頭を下げる。
「あなたのおかげで、私はただの殺し屋にならなくて済みそうです。今まで想像もしなかった、さまざまな知識を教えてもらえたから……」
「二刀流や毒の入れ方を教えるのは、私の守備範囲じゃありませんけど、そんなことでよければいくらでも。アサシンの教育になるのかどうかは、自信がありませんが」
「そんなことはありません、あなたの教え方は素晴らしかったです。この見学にしても、他の暗殺者を師と仰いでいたら、どうなったか……」
「どうなったのです?」
「犯されていました」
「それは……無体な」
 オームは軽く息を呑んだ。私はうつむいて首を振る。
「女の暗殺者が敵と寝るのは常識です。体を与えて油断させてから寝首をかく。そんな殺伐としたことを教え込むんですから、師となった男は容赦しません。私が男に絶望するまで、犯しぬいたと思います。……あなたのこんなやり方は、思いつきもしないでしょう」
「……厳しいものですね、暗殺者とは」
 オームはため息をついた。この人は、その気になれば首都を吹き飛ばすこともできる大魔道士だけど、人間に対して魔法を使ったことは一度しかない。優しく、暖かい人なんだ。
 だから私は、この人を師に選んだ。
 だから私は、この人に捧げようと決めた。
「厳しいんです、暗殺者の世界は」
 私は声の震えを隠して、言う。
「付け焼刃のわざなんか通用しません。私はまだ未熟者です。だから……老師オーム、試させてください」
「何をです」
「私が男を惑わせることができるのかどうか」
 オームが私の目をまじまじと見た。私は気おされないように、勇気を奮い起こして見つめ返す。
 老師は、ふっと微笑んだ。
「そんなに気負っていては、男は逃げてしまいますよ」
「う……はぐらかさないでください! まだ始めていないんです、これからあなたを惑わせるんです!」
「セイレン、あのね」
「あなたは私の老師なんでしょう? 弟子のわざを完成させるのが務めなんじゃありませんか? あなたを篭絡できずに、私が完成したって言えるんですか?」
「……うーん」
 オームは困った顔で、とんがり帽子を直した。
「……理屈はあっています。でもね、これに限っては……」
「それとも!」
 私は、脅えでいっぱいになりながら叫んだ。
「私に、他の男に犯されてこいっておっしゃるんですか!」
「わかりました」
 オームの返事は、思ったよりだいぶ早かった。
「そこまで言うなら、付き合いましょう。……私を惑わせてみなさい。それが適えば、あなたは一人前のアサシンです」
「……はい」
 こくっとつばを飲んで、私はうなずいた。
 そして、念じるようにじっと、オームを見つめた。
「セイレン?」
 オームが笑う。
「どうしました、始めなさい。種に芽を出させるわけじゃなし、見ているだけでは何も起こりませんよ。場所もここでかまいませんし」
「あっ、はいっ」
 私はあわてて、準備を始めた。
 衣装はこのままでいい。暗殺者の服はもともと、体の線がはっきり出る紺の薄布だ。私だってそれなりに出るところは出ているから、みっともないなんてことはないはず。
 愛用の笠はまずい気がした。外して、物入れをあさる。あるものを兄に渡されていた。
 あった。ふわふわの綿毛で作った長い耳房。これなら男心をそそるはずだ。広げて、宵闇色の髪につけてみる。
 武器や防具も外して、無防備な姿になった。物心ついた時からずっと武器を身につけてきたから、心細い。心細いけれど、今は武装の必要はないんだ、と自分に言い聞かせた。
 そうやって、オームに向き直った。
「は、始めます……」
「どうぞ」
「んと……」
 鍛冶の男や騎士の青年は、女の体を見て楽しんでいた。それをやってみることにした。
 オームに、一歩の距離まで近づいて、両腕で乳房をきゅっと抱え込んでみる。
 体をひねって、脇や腰の線を見せてみる。
 思い切って後ろを向いて、爪先立ちにちょっとお尻を持ち上げてみる。
 ――反応なし。オームは静かに微笑んでいるだけ。
「それから?」
「まっ、まだこれからです!」
 見せてだめなら、触らせてやる。
 オームの手を取って、私の胸に当てた。布越しに長い指の温かみを感じた途端、ちりっと電気が走った。
「はん……」
 あわてて声を抑える。私が感じてどうするんだ。
 煙草好きの暗殺者は、押し倒した騎士の肌をもてあそんで楽しんでいた。女の肌には、男をその気にさせる力があるはずだ。
 あるはずだけど……
 胸から、二の腕や腹、太ももの外側までオームの手をひっぱったところで、私は動けなくなった。
 怖い。ひとに触られるのが怖い。触らせた途端に爪を立てられたら? 股の間をえぐられたら? きっとすごく痛い。死んでしまうかもしれない。
 ためらっていると、オームがまた言った。
「それから?」
「今度は、わ、私が!」
 自分から触ってやることにした。まだそっちのほうが怖くない。
 オームを押して、ベッドに腰掛けさせた。かがみこんで、肩に腕を回す。そ、それから……
 そうだ、くちづけ。くちづけを忘れていた。
 顔を寄せる。オームの静謐な顔が目の前に来る。じっと私を見ている。目が、近すぎる。
「目を閉じて!」
 片眼鏡の中の瞳が閉じた。それでなんとか、近づけるようになった。
 唇が……触れた。
 オームの唇に。素敵な言葉をたくさんつむぐ唇に。邪悪な私の唇が。
 ずきっ、と胸が痛んだ。痛みを我慢して、私はオームの唇を吸った。舌を押し出し、唾液で濡らす。
 つぷ、つぷという音を聞くにつれ、胸の痛みに耐えられなくなった。オームが、オームが汚れてしまう。
 私は、さっと顔を離して、唇をぬぐった。オームが薄く目を開く。
「もう終わりですか?」
「ま、まだっ!」
 私はオームの前にひざまずいて、ズボンの留め金を外そうとした。指が震えて、何度も滑る。落ち着こうとしたけど、落ち着けない。オームのいちばん恥ずかしいところを見ようとしているんだから。
 ようやく外して、下着ごと押し下げた。私は驚いた。
「オーム……これ……」
「ええ」
「これが普通、なんですか?」
「そうです。まだ勃起していません」
 オームのそれは、眠っているようにくったりと垂れていた。
 打ちのめされたような気分になった。見せたし、触らせたし、触ったのに。他の男たちは、みんな脱ぐ前からこちこちになっていたのに。
 私には、魅力がない。
 ううん、まだ最後の手段が。あの狩人の子がやっていたことが……
「オーム」
「はい」
「わ、私、脱ぎます!」
「はい」
「全部脱ぎます。あそこも見せます!」
「はい」
「あそこ触っても、口でしても、いい、から……」
 ぽろぽろ涙がこぼれてきた。
 見たくもないし、触りたくもないし、触られたくもない女のそんなとこ、誰が口でしたがるんだ。それこそ、無理やりしゃぶらせていたあの暗殺者と変わらない。
 もう、どうしていいかわからなかった。
 ひざを立ててしゃがみこんで、私は声もなく涙を流した。何が、男を惑わす方法がわかった、だ。穴があったら入りたい気分だった。
「っく……ひっく……え?」
 ふわっ、と体が持ち上げられた。
 オームが、赤ん坊におしっこをさせるように、私を持ち上げていた。そのまま、ぽすっとベッドに降ろす。けげんそうに私の顔をのぞきこんだ。
「どうして泣いているんですか」
「……悔しいんです」
「暗殺者になれないことが?」
「いいえ」
「では、何が?」
「あなたに好かれていなかったことが」
 それを聞くと、オームは、私の髪をそっと撫でた。私は目を丸くした。撫でられるなんて初めてだった。
 そしてオームは不思議なことを言った。
「大好きですよ、あなたのことは」
「え……でも……それなら、なぜ」
「好きな人がいやいややっているのに、喜べるわけがないでしょう」
「い、いやいやじゃありません!」
「嫌がっていましたよ、あなたは」
「そんな! オームとするのが嫌だなんて、私、思うわけ――」
「そうでないとしたら、暗殺者になりたくないんですね」
 私は、はたと口をつぐんだ。オームが、哀れむような顔で言った。
「うすうす、そうじゃないかと思っていましたよ」
「でも……私は、もう暗殺者です」
「いいえ」
「でも私はあの人たちを殺した!」
 こぽっ、こぽっと音が聞こえた。
 服事の女の子の首からこぼれる血。次第に弱っていく心臓の脈動。首に開いた二条の傷は、私の双撃が切り裂いたもの。
 PvP、首都。その日そこにいた三十五人を、兄の命令で、私は皆殺しにした。試合の打ち合わせをしていた剣士たちを、新しい武器の威力を見せ合っていた狩人たちを、隠行と軒隠れを駆使して、血祭りに上げた。
 間違えて迷い込んだ服事の子まで。
 累々と横たわる死体の荒野。その端にたたずんで、私はじっとその子を見下ろした。カプラ嬢の元へ帰れば、蘇ることができる。でも、殺される瞬間の痛みは現実だ。その子は最後の息で、あなたを、と言った。
 あなたを、それからなんと言うつもりだったのかはわからない。血が気管を塞いで、こぽこぽという音になった。
 死んだ者の言葉を聞くことはできない。
 その直後、私はオーム・エンバーの大魔法を食らって斃れた。近づいてきた彼に何か言おうにも、体の半分が黒焦げで、声も出なかった。言えるものなら大声で言いたかった。痛い、苦しい、恨んでやる、憎んでやる、と。
 そのとき私は、あの子の言いたかったことを、
 あなたを恨むという言葉を、
 ひとをころすということの意味を知ったんだ。
「あなたは私を殺してくれました」
 拭きもせず涙を落として、私は言った。
「あなたが私に、死の痛みを教えてくれた。あなたは私を罰する人なの。そんなあなたに触れる資格、私には……」
「それだからこそ」
 細くしなやかな指が、私の頬をぬぐった。
「死者を振り返る暗殺者がいますか。痛みを知るあなたは暗殺者ではない……あえて言えば、知ってしまった以上、もうなれないんですよ」
「オーム……」
 私が顔を上げると、緑の髪の魔道士は困ったように首をかしげた。
「おや、老師の私が、あなたを別の道に誘ってしまうとは……私も失格ですね」
「別の道に」
「そう。唱えない魔道士と同じ、殺さない暗殺者……私も一度、あなたを殺しました。あなたもきっと変われるはず」
「変われ……ますか?」
「ええ」
 静かに微笑む彼を見ていると、心の中の硬い何かが、日を浴びた雪のように溶けていく気がした。それに支えられていた体の力がすうっと抜けた。
 気がつくと、オームの腕の中で子供みたいにわんわん泣いていた。
「オーム、オーム」
「セイレン、かわいそうなセイレン。もういいんですよ、あなたの好きなようにしても」
「オーム……」
 ぐすっと鼻をすすって、私はセイレンの胸にささやいた。
「好きに……していいんですか?」
「どうぞ」
「それじゃ、さっきの続きを」
「まだ言ってるんですか?」
「違います!」
 私は顔を上げて叫んだ。
「試練じゃなくて、修行だからじゃなくて! 私がしたいからしたいんです! 私のわがままなの、わがまま言っていいんでしょう?」
「だだっ子ですね、まるで」
 苦笑したオームが、片眼鏡をきらりと光らせて、私を試すように言った。
「修行でないなら、私は、自分を抑えないでもいいんですね?」
「え……」
「あなたが喜ぶと思っていいんですね?」
「え……は……はい」
 私はうなずいた。急に、さっきよりもずっと、胸がどきどきし始めた。
「では、始めましょう」
 そう言うとオームは、とんがり帽子を脱ぎ捨てて、私の前にあぐらをかいた。ズボンの前ははだけたままだ。私はおずおずとそこに身をかがめた。
「きゃっ!?」
 オームの手が、私の両脇に滑り込んだ。防御力のほとんどない、回避のためだけの薄い衣装を、彼の細い指先がさわさわと滑って、紐で吊られた胸元にまでやってくる。
 乳房をこねられると、うなじの毛が逆立つような心地よさが湧いた。
「あ……なに、これ……」
「私だってセイレンに触りたいと思ってましたよ」
「お、オームも……?」
「誰だってそうでしょう。大事なのは、その気持ちを制御できるかどうかです。今までは制御していましたけどね、しなくていいとなると、さて……」
 手のひらが円を描いて紺の薄布を滑る。私の乳房が大きく形を変えて動く。オームが気難しげに眉をひそめてる、ううん違う、感触を……楽しんでる。
「……この衣装のあなた、ひどく蟲惑的でした。これを正直に鑑賞してもいいというのは……セイレン、嬉しいです」
 オームが楽しんでくれている。
 きゅんっ、と乳首がしびれた。布を突き上げてぷっくり立ってしまう。乳房全体まで、ジンジンうずきだした。はあああ、と息が震える。
「セイレンも気持ちいいんですね」
「はぁ……はい……」
「それです。それなら私も嬉しくなる……ああ、セイレン……」
 薄く閉じていた目にあるものが映って、私は瞳を開いた。オームのあれが、動き始めた。むくむくと、少しずつ……
「……オーム!」
 私は歓声を上げた。オームが反応してくれた。私をほしがってくれている。
「待って、オーム、愛させて」
 オームの手を押しのけて、私は身をかがめた。ためらいや汚さなんてかけらも感じなかった。あの錬金術師の子や、狩人がしていたみたいに、女ならみんなすること。ましてオームのものなら。
 そうっとつまみあげて、口に含んだ。ふわりとした柔らかな肉の中に、細い歯ごたえがあった。
「あ……芯が」
「芯?」
「ふぁい、真ん中に、硬い芯が」
「ああ、まだ最初ですから……そのうち太くなりますよ」
 本当だった。私の口の中で、みるみる芯が太くなってきた。全体の太さそのものも増してきて、唇がこじ開けられた。とくん、とくん、と一つ鼓動するたびに真上を向いていく。
 やがて、芯の硬さが皮にまで行き渡った。それ自体が硬い芯のようになったものが、元気よく私の口の中を突き上げた。私は愛しさに目を細めてつぶやく。
「オーム……」
「大丈夫ですか、苦しくありませんか?」
「こんなときでも冷静なんですね」
 口を離して見上げた私は、思わず瞬きした。オームが頬を赤く染めて、苦笑いみたいな顔で唇をかみしめていた。
「冷静な……ものですか」
 熱くなった両手が、私のむき出しの肩や、柔らかい二の腕をさする。
「すごく欲情していますよ。あなたのフェラチオを味わえるなんて。ああ、これは……夢まぼろしでなければいいんですが……」
「オーム……夢じゃないです、もっと欲情して!」
 私はオームのあれに顔と両手を添わせて、できる限り隙間が生まれないように、なめて、含んで、こすって、しゃぶって、しごいた。ああ、ああ、とうめいたオームが、ぎゅっと私の腕に指を食い込ませる。
「セイレン、好きです」
「あい」
「私も他の男たちと一緒です、あなたの美しい顔を汚すのが楽しい」
「ふぁいっ」
「あなたに触れたい、あなたにくちづけしたい、肌をたっぷり味わいたい」
「ふぁ、はぁいっ」
「股を貫きたい、喉に押し込みたい、めちゃくちゃに犯して、身動きできないよう抱きしめて、あふれるまで注ぎ込みたいっ!」
「はぁいぃっ♪」
 すごい刺激だった。オームがひとこと言うたびに、ぞくん、ぞくん! と背中を寒気が突っ走った。特に最後の台詞!
 おなかを貫いて、口に押し込んで、壊れるほどぐいぐい犯して、潰れるほど抱きしめて、溺れるぐらい注いでくれるなんて――あのオームが!
 耳がきーんと鳴るほど興奮して、私はめちゃくちゃにオームのあれをなめ上げた。ぺろっ、ぺろっ、と文字通り音がして、唾液がしずくになって飛び散った。
 どうしよう? と頭の隅で考える。今なら多分、処女を捧げても一生後悔しない。それとも口で続けたほうがいいのか? どちらがオームは喜んでくれるだろう?
 口にしよう、と決めた。怖いからじゃない。オームに気を使わせてしまうからだ。きっとオームは私の痛みを気にして、自分の気持ちよさは二の次にしてしまう。
 このまま口で。今までに見たたくさんの女たちと同じように、オームの精液を唇と舌で引き出して、飲んであげよう。体の中までオームに染まってあげよう。きっとオームは喜んでくれる。
 それに、私自身、飲みたい。みんな喜んでた。きっと素敵なんだ。
「オームぅ……」
 半ばまで口に入れて、ちゅぷちゅぷしながら喉へ入れる角度を試していると、くーっとこらえたオームが、手招きした。
「せ、セイレン。腰をこっちへ」
「ふぇ……?」
「触ってあげます。触りたいんですよ。さあ」
 私は体をひねって、オームのそばに下半身を横たえた。太ももにオームの手が乗る。
 さわさわと撫で回していたそれが、股の間に入ってきた。細いそこの布を指でかき分けて、くぷっ、とひだにもぐりこんで来る。思わず、ぎゅうっと太ももを合わせた。
「痛いんですか?」
「ち、ちが……いいのっ!」
「本当に?」
「あなたが私になめられたのと同じくらい!」
 その一言で伝わったみたいだった。オームはためらいなく指を進めて、私のそこをすみずみまでなぞり始めた。恥ずかしさで私は顔を見られず、ごまかすみたいに必死に口を動かした。決してきれいな場所じゃないんだもの!
 でも、そこを触ってもらえるというのは、底抜けに気持ちよかった。足がどんどん開いて、恥ずかしいひだを空気にさらしてしまう。あさましいとは思ったけど、我慢が利かなかった。
「せ、セイレン、こっちがいいですか?」
「んっ、ううんっ、いえっ!」
「でも、本当にほしそうにひくひくして」
「いいんです、おくちでっ! おくちにください、飲ませてっ!」
「……そ、そうですね。こちらならあなたも、痛みが……」
 がくがくっ、と肩を動かして、オームが早口に言った。
「そ、そろそろです。私も慣れてませんから、あまり我慢が……」
「出あふか?」
「はいっ。あと二十秒ほど……いやっ、もう、もうすぐっ!」
 くっ、くふっとオームが息を呑んで、片手で私の兎耳をつかみ、もう片方の手でぐいっとあそこの中をえぐった。そのせいでぱあっと頭の中に火花が散って、絶頂してしまいそうになった。懸命にこらえて、オームを待ち受けた。
 たくさんの男たちと同じ、あれが――射精が始まった。それは思ったよりもはるかにけなげなものだった。
 ぴしゅっ、ぴしゅうっ、と細く熱い筋が口の中を撃つ。くわえていなかったらベッドの外まで飛びそうな勢い。確かにすごい、膣のすぐ上にある子宮を狙うのに、なんでこんなに勢いが必要なのかって思うほど、強い。
 でも、小さい。私の口の中がかろうじていっぱいになるぐらい。たったそれだけのものを、長身のオームが全身の力を振り絞ってびくびくと撃ち出している。
「はっ、かはっ、はあっ!」
 股間のじんわりした気持ちよさにひたって、とぷとぷと口の中に溜めながら、私は不思議な優しさとともに、うめいているオームを見上げる。たったこれだけのことで、男たちは天にも昇るほど気持ちよくなれるんだ。
 なんて他愛なくてけなげなんだろう。
 精一杯がんばっていた感じのオームのものが、やがて勢いをなくした。とろっ、とろっとわずかな残りを吐き出すだけになる。私はくむくむと唇を締め付けなおして、根元に溜まっているものまで出てくるよう、ちぅっと念入りに吸い上げた。
「くぅ……セイレン」
 一声うめくと、はあっとオームは息を吐いた。はあっ、はあっと荒い息を繰り返して、ぽたぽたと顔から汗を垂らした。
 私は顔を離すと、シーツで丁寧にオームのものを拭いた。それから体を上げて、オームの前で頬を指差した。
「んーんんん?」
「はい? ……ああ、どうするかって?」
 オームはあきれたように笑った。
「そこまでしてくれるんですね、あなたは。……ええ、お願いしますよ。飲んでください」
「んっ」
 私はのどを見せ付けて、精液を飲み込んだ。その頃ようやく味がわかってきた。苦味と辛味の混ざった、とてもねっとりした液だった。
 甘い、と言っていた娘もいたような気がする。すると、個人差があるんだ。でも、苦くて残念とは思わなかった。味がいいからほしいわけじゃない。
 オームのだからほしいんだ。
 すべて飲み干すと、匂いのついた息がかからないようにちょっと横を向いて、私は言った。
「満足してもらえましたか、老師オーム」
「……ええ、とても」
 オームは晴れやかな笑顔で言って、ちょいととんがり帽子を直した。それで気づいたけど、この人は行為の最中、服どころか帽子も片眼鏡すらも外していなかった。
 妙な気持ちが湧いた。脱がせたい。この人を裸にして、自分も裸に……
 その想像に赤くなっていると、オームが言った。
「あなたはまだですね。次は私がしましょうか?」
「え、それは……どんなことを?」
「どんなことでも。うまいわけではありませんが、誠心誠意お努めしますよ」
 ちょっと考えた。頼んだら、脱いでくれるかもしれない。生まれたままの姿で、二人……
 頭を振って打ち消した。そんなの、早すぎる。今日はこれだけでも十分だ。急いで交わる必要なんかどこにもない。
 ううん、あった。一つだけ、これだけは頼んでおかなくちゃいけないってことが。
「老師!」
 私は身を乗り出した。なんですか、とオームが顔を引く。
「お聞きします。老師は今、恋人がいらっしゃるんですか!」
「ああ、そんなことですか」
「そんなことじゃありません、大事な――」
「あなたです」
 指が鼻に当てられた。
「あなたに恋をしました。惹かれています。――これでいいですか?」
 老師オームは、めったに魔法を使わない。でも使えばとてつもない威力を発揮する。
 その指に、大魔法がかかっていたように思えた。私は一瞬で真っ赤に燃え上がった。
「修行が終わっても?」
「ええ」
「兄ににらまれても?」
「ええ」
「ずっとそばに、いてもいいですか……?」
 オームはうなずいた。
 私はその胸に、深々と体を預けた。



「明晩二十時に来い、城攻めだ」
 イズルードの私たちのところを訪れた兄が、来て当然、というように言う。
 私は勇気を出して首を横に振る。
「行きません」
「何を言う、許さんぞ」
「許されなくても。私、人に刃は向けません」
 兄は、私のそばに立ったオームに目を移す。
「吹き込んだな」
「多少はね。でも悪いとは思っていません」
「色香に迷ったか。中原一の賢者が聞いて呆れる」
「なんとでも。私はセイレンを守ります」
「ふ……そこまで入れ込むとは、ある意味、成果だな」
 兄とオームがにらみ合う。私は、二人の髪型が、色こそ違え同じであることに気がついた。
 だからどうした、と言われてもよくわからないけれど。
 兄はまた私を見る。
「青蓮、くノ一としては完成したな」
「違います」
「違わん。くノ一は暗殺者とは違う。殺しに徹しきれないこともある。おまえはしょせん、その程度の女だったということ。……もう無用だ」
 その一瞬だけ、兄の表情が和らいだような気がした。
 けれども、すぐに兄は身を翻して、歩き出した。少し先で待っていた、日よけ眼鏡の僧侶や、焦げ茶の髪の女騎士や、長い銀髪の女鍛冶師に声をかける。
「妹は使えん。拙者らだけで赴こう」
「残念ですね……」
 女騎士だけがそうつぶやいて、私に手を振った。
「でも、それもまた生き方ですね。がんばって、セイレンさん」
「はい……」
 私は手を振り返して、一行を見送った。
 二人だけになると、オームの顔を見上げた。
「すみません、私のために老師の評判が……」
「もともと望んで得た評判ではありませんよ。賢者だなんて気恥ずかしい。私は、あなたの老師、それだけで十分です」
「オーム……」
 私は目を閉じて、オームの肩に頭を当てる。兎耳がオームの頬に当たった。彼が面白そうに言う。
「笠はどうしました」
「もう、いりません」
 私はイズルードの青く澄んだ空を見上げる。
「陽の光を恥じるようなことは、何もないから」
 老師は笑っている。見抜かれたかな、と私は少し焦る。
 笠を捨てた理由は、嘘じゃない。
 でももう一つ――いつでも老師に意識されたい、と思うようになったから。
「おめかしですね」
 見抜かれてた。でも老師はからかったりせず、うなずいた。
「たくさん、愛し合いましょうね。私たちが見た、多くの人たちのように」
「……はい」
「期待しますよ」
「任せてくださいっ!」
 それだけは自信を持って言えた。なにも暗殺者だからじゃない。
 みんなの交わりを見て、みんなに負けないほど好きな人を持っているから。
 男の人をいちばん満足させてあげられるのは――私。



終わり

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このページのオチは書いた順番によってこうなってしまいました。製作者はどっちかというと騎士子たん萌えです(^^;