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 好きな作家といえば、一番にカフカをあげたい。次に、ゴーゴリあたりをあげたい。その後には、コンラッドシュニッツラー、最後にはキング

 日本の作家では、村上春樹を一番読んでいるけれど、好きなのは、安部公房。


カフカ


 カフカは色々な解釈が出来る。ドストエフスキー並に解説本が出ている。けれど、難しく考えるより、カフカの世界に飛び込んでいくのが一番の楽しみ方だろう。不条理な結末、想像を絶する未知の物体、意外で冷静な視点、強烈な暴力。カフカにはこれらの要素が入っている。不条理な結末と言えば、どれもこれもそうだ。有名どころの「審判」などもなぜか、Kは殺されてしまう。未知の物体といえば、「流刑地にて」であろう。謎の処刑機械がそうだ。意外で冷静な視点といえば、短篇の「橋」においての、生きた橋の視点であろうし、超有名な「変身」の虫の視点でもそうだ。強烈な暴力は先ほども述べた「審判」での最後のKを殺す場面。犬のように心臓を突かれて死んでしまう。もう一つ、要素があるのを忘れていた。「ユーモア」だ。どの作品もユーモアがある。それは死の間近にあったり、破壊的な場面にあったり、と様々である。

 カフカの小説は幾つか出ている。一番、名訳なのは、岩波文庫の池内紀さんの「カフカ短編集」や「カフカ寓話集」だ。この二冊を読めば、必ず、カフカの虜になるだろう。


ゴーゴリ


 ゴーゴリは超有名な「鼻」が好きだ。鼻が逃げ出すというドタバタ不条理劇である。今読んでも、大笑いするほどの面白さだ。そして、この小説は不思議なもので、映像化は決して出来ない作品だ。今なら、CGで鼻を作ることだって出来るかも知れない。しかし、鼻を露骨に映像化すると、すぐにこの小説の魅力を失ってしまう。小説の場合、数々の状況に直面した鼻を思わず想像して、一瞬、ぷっと笑ってしまうのだが、すぐにその姿は頭の中で消えてしまう。その一瞬のユーモアがこの小説の味なのではないだろうか。「外套」もなかなか、温かい小説であり、読後感は不思議に爽快だ。


コンラッド


 ジョセフ・コンラッドの作品ははっきり言って、「闇の奥」しか読んだことがない。一番、有名な作品だが、やはり有名なだけあって、素晴らしい。コッポラによって映画化されたが、この小説の持つ本当の狂気はまったく映像化出来ていなかった。カンヌで賞をとったのは、おそらく、功績を認めただけのことで、芸術を認めたわけではないだろう。この小説を語るのは、止めておきたい。ぜひ、自身で読んでもらいたい。


シュニッツラー


 シュニッツラーは最近、一躍有名になった。映画「アイズ・ワイド・シャット」のおかげだ。前から目をつけていたが、僕の好きなのは「レテゴンタの日記」だ。おちを言っては興ざめなので、止めておくが、非常に面白い。数ページの短篇ながら、恋愛、決闘、さらに幻想と娯楽要素が満載だ。描写が過不足なく成されているおかげで、スムーズに展開する。最近では、あまりに露骨な描写が増えているためか、シュール、と感じる人が多いようだ。


キング


 キング。スティーブン・キングといえば、誰でも知っている、モダン・ホラーの旗手の異名を持つ、大作家だが、あまり、その人の作品は知られていない。やはり、ホラーということで、敬遠されているのだろうか。はっきり言って、彼の作品はホラーではない。当時の米国の年代誌だ。キングは言わずと知れて、描写が緻密だ。主人公の周りにある固有名詞が次々に名前を並べる。あまりにリアル過ぎて、ホラーに感じるようだが、本当のホラー要素はほとんど無いと言える。こんなことを書くと、ファンが怒るのかもしれないが、まったくのアクション小説である。