大原大刀自 おおはらのおおとじ 生没年未詳 別名:五百重娘

藤原鎌足の子。不比等・氷上娘の妹。天武天皇の夫人。新田部皇子の母。

天皇、藤原夫人に賜ふ御歌一首

我が里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後

【通釈】我が里に大雪が降り積もっている。お前の住む大原の古ぼけた里に降るのは、ずっと後のことだろうよ。

藤原夫人(ぶにん)の和(こた)へ奉(たてまつ)る歌

我が岡のおかみに言ひて降らしめし雪の砕けしそこに散りけむ(万2-104)

【通釈】私の岡の水神にお願いして降らせてもらった雪の、砕けたかけらがそちらに散ったのでしょう。

【語釈】◇おかみ 水を司る龍蛇の神。

【補記】大雪の降った日、大原の実家にいた藤原夫人のもとへ、浄御原の宮から天武天皇が歌を贈って来た。それに答えた歌。

藤原夫人の歌一首

ほととぎすいたくな鳴きそ()が声を五月(さつき)の玉にあへ()くまでに(万8-1465)

【通釈】ほととぎすよ、あまりひどく鳴かないで。おまえの声を五月の薬玉にあわせて糸に通すまでは。

【補記】万葉集巻八夏雑歌の巻頭。「五月の玉」は五月の節句に息災を祈って飾る薬玉。菖蒲や橘の実などと一緒に時鳥の声も糸に通して飾りたいから、その時まで鳴き惜しみをしてくれ、と呼びかけた。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成21年03月11日