大江茂重 おおえのもちしげ 生没年未詳

因幡守泰重の息子。頼重の弟。大江広元の曾孫。祖父の代より長井氏を名乗る。丹後守・修理亮を歴任。従五位下。六波羅評定衆。
新後撰集初出。勅撰入集十一首。家集『茂重集』があり、宗秀・貞秀らとの交流が知られる。

二品法親王首覚助家五十首歌に、旅泊

友さそふ(むろ)のとまりの朝嵐に声をほにあげて出づる舟人(新拾遺839)

【通釈】友舟を誘う、室の泊に吹く朝の山おろし――その風に乗って、声を帆のように高々とあげて出航して行く船頭よ。

【語釈】◇室のとまり 播磨国の歌枕。兵庫県揖保郡御津町。深い入江をなす室津湾の港である。◇朝嵐 山から吹き下ろす朝風。嵐は山の風。暴風ではない。◇声をほにあげて 「ほ」は「秀(ほ)」「帆」の掛詞。秀(ほ)は穂と同根の語で、「秀(ほ)にあげ」とは「高くあらわし」「いちじるしく際立たせ」程の意。「帆」は舟の縁語。

【補記】元応二年(1320)以前、覚助法親王が自邸で開催した五十首歌会に出詠した歌。

【本歌】藤原菅根「古今集」
秋風に声をほにあげてくる舟はあまのとわたる雁にぞありける


更新日:平成15年07月23日
最終更新日:平成21年07月29日