2  次頁へゆくまへがきへ戻る        *                                            といふ          知らず誰が家の子ぞ 花を看る桃李の津 を念頭に置いたものか 言つたもの 玉台新詠巻五の 江南二月の春 東風緑蘋を転ず  題詞の江南は 難波堀江以南の地 上町台地一帯を中国風に                           て美しい人が立つてゐる あれは誰のいとしい妻であらうか  見渡せば 向うの岡の斜面には桜が咲き誇り 花に照り映え                               照りて立てるは愛しき誰が妻 二十|四三九七                          見わたせば向かつ峯の上の花にほひ                           館の門に在りて江南の美女を見て作る歌             *                                             帰るとは 難波から平城京に戻ること                           でに すつかり散り失せてしまふだらう  龍田山を越えながら眺めて来たあの桜の花は 私が帰る頃ま                               散りか過ぎなむ我が帰るとに 二十|四三九五                          龍田山見つつ越え来し桜花                           独り龍田山の桜花を惜しむ歌