5 次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                                                       見てゐたい いつも見てゐたい意が混然としてゐます  めづらしには 滅多に見られない 珍重すべき意と もつと い            今すぐ逢つて 花を愛でるやうに貴女の笑顔をずつと眺めてゐた  庭に咲いた季節外れの藤のやうに 稀にしか逢へない恋人よ                                                     今も見てしか妹が笑まひを 八|一六二七               我が屋戸の時じき藤のめづらしく                           坂上大嬢に贈る歌              時じき藤の花と萩の黄葉の二物を攀ぢて       *                                          面に散らせてしまつた  あなたが見た後で鳴いて欲しいものを 霍公鳥は橘の花を地                                 花橘を土に散らしつ 八|一五〇九               妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥       *                                             待たねばならなかつたのです それで 花は満開になつても それを見せるのは月が満ちるまで  当時 男女の逢引は十五夜前後の月夜に限られていました  うと思つた 庭先の橘です  十五夜過ぎの澄んだ月夜になつたら いとしい貴女に見せよ                               我妹児に見せむと思ひし屋戸の橘 八|一五〇八                            望ぐたち清き月夜に                              反歌