1  次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                             くす に拠る ち夢に十娘を見る 驚き覚めて之を攬れば 忽然として手を空し  下句は 唐の小説遊仙窟の一節 少時にして坐睡すれば 即 来ないのですから あなたのすがたは無く いくら手探りしても 触れることさへ出  夢での逢瀬とは 苦しいものだつたのですね 目が覚めると                              覚きて掻き探れども手にも触れねば 四|七四一               夢の逢ひは苦しかりけり       *                                 りあつて行き 仲良く寄り添つてゐようものを  人の住まぬ国がどこかに無いものか 愛しいあなたと手を取                              我妹児と携ひ行きてたぐひてをらむ 四|七二八               人も無き国もあらぬか                              離絶数年 復会して相聞往来す       *                                      私はこの花を貴女になぞらへて見守つてゆくつもりです  我が家の庭に蒔いた撫子は いつになつたら咲くだらうか                             いつしかも花に咲きなむ擬へつつ見む 八|一四四八               我が屋戸に蒔きし撫子                          坂上大嬢に贈る歌                   *                                   家持秀歌選 一 坂上大嬢