2 つづきを読むまへがきへ戻る       *                                              冒頭から真澄鏡までは二上山にかかる序詞                                              一九|四一九二                           染まば染むとも      花の色が染みつかうとかまはずに                           引攀ぢて 袖にこきれつ  つかみ寄せて 袖にしごき入れたのだ             藤浪の 花なつかしみ   それで私は藤の花がいとほしくなつて              立ちくくと 羽触にちらす 繁みの間を潜つて鳴く時に 羽が触れて藤の花を散らせてしまふ                           遥遥に 鳴く霍公鳥    遥かに遠く囀るが                           夕月夜 かそけき野辺に  夕月の光がかすかな野辺では                           呼びとよめ 朝飛び渡り  鳴き声を響かせて 朝早く飛び渡り        木の暗の 繁き谿辺を   ほととぎすは 樹樹の深く繁る谷を                           真澄鏡 二上山に     澄んだ鏡 その蓋ならぬ二上山                           娘子らが 手に取り持たる 少女たちが 手に持つてゐる                           咲みまがり 朝影見つつ  曲げて微笑み さうして朝の面立ちを映して見ながら                           青柳の 細き眉根を    青柳のやうに 細くしなやかな眉を                           にほひたる 面輪のうちに 照り映える 顔の輝きのうちに                           桃の花 紅色に      桃の花さながら 紅く                             霍公鳥と藤の花とを詠む 并せて短歌