3 次コオナアへゆくまへがきへ戻る       *                                                                       袖の中に入れておくこと   袖にこき納れとは 花を袖に擦り付けて匂ひを移し その                        散つてしまひさうなので 袖にしごき入れたのだ 藤の花を  ほととぎすが羽をふるはせて囀る その羽に触れただけで                                袖にこき納れつ藤浪の花                             霍公鳥鳴く羽触にも散りぬべみ                              一に云はく                        *                                             掛けるか 家持独自の用語です なほハブレと訓む説もあり  羽触とは 羽がかすかに触れること これに羽振りの意を                        散つてしまつた 盛りの季節が過ぎたやうである 藤の花は  ほととぎすが羽をふるはせて囀る その羽に触れただけで                                   盛り過ぐらし藤なみの花 一九|四一九三                            ほととぎす鳴く羽触にも散りにけり