2 次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                                                       だと思へば 愛しくてならぬ佐保山である *訳 以前はおろそかに見てゐたものだつたが 我が妻の眠る塚                              我妹子が奥津城と思へば愛しき佐保山 三|四七四           昔こそ外にも見しか             悲緒未だやまず更に作る歌          *                             から 早くも時は流れ去つた 私の涙はまだ乾きもしないのに *訳 生きてゐた時 妻がその前に立つて眺めた庭に花が咲いて                                  吾が泣く涙未だ干なくに 三|四六九           妹が見し屋戸に花咲き時は経ぬ                                       又家持の作る歌                      *                                             り 亡き人が恋しくてならなかつたことだ *訳 現世が無常であるとは承知してゐるのに 秋風が寒いあま                                  秋風寒みしのびつるかも 三|四六五                            空蝉の世は常無しと知るものを                         朔移りて後 秋風を悲しび嘆きて作る歌    つきうつ