2  次頁へゆくまへがきへ戻る       *                                              阿太は 奈良県五条市の東部 大野の萩の花は散つてゆく  葛の生えてゐる原を靡かせて 秋風が吹くたびに 阿太の                                 阿太の大野の萩の花散る 家持集&十|二〇九六       あ だ   真葛原なびく秋風吹く毎に   まくず                        花を詠む           *                                             繁みなどから追ひ立てること       呼び立ては 大声を出したり鹿笛を吹いたりして驚かせ  去つて行くだらう 秋の萩原を胸で分けながら  狩をする宮仕への男たちが大声で追ひ立てたので 牡鹿は                                   胸分け行かむ秋の萩原 二十|四三二〇                          ますら男の呼びたてしかばさ牡鹿の        *                                             族が着用した衣服             袖つけ衣は 長い袖の縫ひつけてある衣のこと 官人や貴 高円の離宮である   宮仕への人びとの袖付け衣が 秋萩に照り映えて 色美し                                   にほひ宜しき高円の宮 二十|四三一五                          宮人の袖つけ衣秋萩に                            独り秋の野を憶ひて聊かに拙懐を述ぶる