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インターネットを用いた服薬ケアのためのPOS症例検討
〜つくばファーマシューティカルケア研究会活動報告〜


第22回日本POS医療学会にて発表

日付:平成12年3月18日
会場:パシフィコ横浜
共同研究者:○岡村祐聡1)、池田朋文2)、稲田三知3)、植野良子4)、渋谷憲司5)、柳徹也6)、仁礼久貴7)


1)服薬ケア研究所(茨城県)、2)(医)高梁病院(岡山県)、3)ななしま薬局(長崎県)、4)さつき橋アルファ薬局(神奈川県)、5)水海道コヤマ調剤薬局、6)田中病院、7)寺島薬局(以上茨城県)


目 次

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初めに

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図1

つくばファーマシューティカルケア研究会では、今回インターネットのメーリングリストによる、全国の会員を結んでの症例検討を試みましたので、報告いたします。

研究会紹介

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研究会について紹介します。

図2

 

 つくばファーマシューティカルケア研究会は、茨城県つくば市周辺の薬剤師が集まって、薬剤師の医療を考えていこうという目的で作った研究会です。自分たちが勉強して行くだけでなく広く議論を呼びかけ、薬剤師のレベルアップのために行動して行くことを活動理念としております。

 平成9年の7月に第一回定例会を開催して以来回を重ね、平成12年2月には第23回の定例会を開催いたしました。

 その主な活動は、つくば市において月一回開催する定例会、同じく月一回開催する症例検討会、そしてインターネットを利用した会員限定のクローズドなメーリングリストによる追加討議、自由討論などです。そして研究会の内容は、インターネットホームページへの定例会報告の発表により、誰にでも見れる形で広く公開しております。それ以外にも、共同研究による各種学会への発表を通して提言を行なったり、定例会報告の小冊子による出版なども行っております。

 これらの活動を通して、当初は茨城県つくば市のローカルな研究会として始まったつくばファーマシューティカルケア研究会は、インターネットを媒介とした全国規模の研究会へと発展してまいりました。

 研究会の発展に伴って多様な意見やニーズに応えるために、平成11年5月より定例会以外の分科会として、TDM分科会を開催してきました。この分科会は、平成12年1月まで2ヶ月に1回開催され、TDMの基礎から症例検討まで幅広く学んでまいりました。そして本年2月からはTDM分科会の延長として、TDMに限らない薬剤師の医療全般を考える意味で、症例検討会を毎月行なっています。

 現在の会員数は約100名弱です。病院薬剤師と薬局薬剤師はほぼ半々で、会員は半分以上は地元茨城県以外からの参加であり、会員の所在は北は北海道から南は九州まで、ほぼ全国にわたっております。

定例会

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図3

 

 これは今年の1月につくば国際会議場で行ないました、第22回の定例会「服薬ケアについて〜薬剤師の担うべき医療を考える〜」の様子です。

 服薬ケアとは、当研究会の活動理念とも言うべき、薬剤師の担うべき医療についての考え方で、その概要については、平成9年と10年の本学会において既に発表したとおりです。

  服薬ケアについては、ホームページ「服薬ケア研究所」(http://www.ne.jp/asahi/fukuyaku/care/)をご参照ください。

 定例会は誰でも参加できるよう公開しております。この第22回定例会は一般参加も含めて60名程の参加者がありました。

 POSは研究会の発足当時から重視しており、平成9年8月、平成10年4月、6月、9月の4回、テーマとして取り上げております。来月4月の定例会でも取りあげる予定です。

 定例会の報告は、まずメーリングリストに流され、そこで全国の会員の間で追加討議を行ないます。最近メーリングリストで盛り上がったテーマとしては、一月の定例会の後、薬剤師の医療の中で担うべき役割、あるいは理想と現実のギャップなどを取り上げた話題がしばらく議論されました。新しく始めた症例検討会の内容も話題を呼び、症例検討会の後もしばらくメーリングリスト上で討論が続けられました。また介護保険関連の話題も、その中で薬剤師がどんなふうに役立てるのかといった観点で、繰り返し話題に上っております。

ホームページ

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図4

 

 これは当研究会ホームページのトップページ(http://member.nifty.ne.jp/tpc/)の画像です。メーリングリストで一通り議論された定例会の内容は、一定期間後にホームページで公開致します。ホームページにはアクセス制限は一切かけておらず、すべてのページを誰でもが自由に見ることが出来ます。

  定例会の報告以外にも、研究会として各種学会へ発表した内容もそのまま公開しており、コンテンツの内容も質量ともに充実してまいりました。このように研究会の内容をホームページへ公開することが、我々の研究会としての提言の意味もありますので、大変重視しております。

日経DI

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図5

  このような活動の様子が日経DI誌昨年9月号で紹介されました。インタネットを媒介とした全国の薬剤師を結んでの研究会活動が、新しい試みとして着目されたものと考えています。

 そして今回、その特徴を活かして、メーリングリストを用いての症例検討を試みました。全国各地に点在する会員薬剤師をメーリングリストで結ぶことにより、様々な意見を集めることが出来ました。直接討論する臨場感こそありませんが、2〜3日のタイムラグを置きながらの討論は、かえって内容を深く考えてから意見をアップすることができ、一味違った症例検討会となりました。

 メーリングリストでのやり取りを、そのまま再現することは出来ませんが、そのいくつかをここで紹介いたします。

症例.1

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 最初の症例です。

図6

 これは病院薬剤師から提供された症例です。

 U.Tさん、50歳、男性です。平成5年10月入院。病名は精神分裂病,肺結核。初発病年齢30歳前後。処方薬は図のとおりです。

 ここに載っている情報以外に服薬指導サマリー、プロブレムリスト、服薬指導評価表など、病棟業務に用いている書式、フォーマットなどの情報が、実際にはメーリングリストにアップされました。

図7

 これは何度かにわたってアップされた患者さんとの会話の一部です。そして症例を提供した薬剤師が着目したSOAPもアップされましたが、それにこだわらず、自由に意見を募りました。

図8

 これはその会話を他のメンバーがSOAPに書いてみたものです。

 このとき、SOAPにするにあたって追加の情報を要求するやり取りがあり、以下のような質問とそれに対する答えや意見がメーリングリスト上で交わされました。

・慢性期で頻発する副作用はどのくらいの頻度でどのくらいの期間確認するのが良いか?
・与薬はODPかどうか?
・本人の服薬意欲はどうか?
・外泊から戻ったときの残薬確認の有無は?

 これらのやり取りで得られたこととしては、

・慢性期になるとつい記載を省略してしまうが、指摘されることによりそのことが良くわかった。
・キーとなる言葉や、ポイントはわかりやすく端的に記載しなければいけない。

  などがあげられました。

症例.2

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 次の症例は薬局薬剤師からの提供された症例です。

図9

 N.Sさん、50歳、女性。病名は糖尿病,高血圧。アレルギー歴は特になし。併用薬なし。ご主人も高血圧の薬を服用中で、二人暮らしをしています。8年前脳外科の手術をしてからずっと薬を飲んでいます。現在仕事はしていません。

 処方薬は図のとおりです。

図10

 この症例でも何度も薬歴の内容がアップされました。ここに示したものは、そのうちのある日の薬歴のSOAP部分です。

 このSOAPからは、血糖コントロールに関して、顔では笑いながらそんなに気にしていないふうを装ってはいるが、実はとっても気にしている患者さんの薬識の状態が窺い知ることが出来ます。この日は満足いくまで話すことが出来ずに「次回また話しをよく聞こう。」と次のケアへ橋渡ししている事がわかります。

 この日のSOAPではありませんが、S/Oとしてまとめて記載しているものがあり、意見交換の中で「数値はOとして分けた方が良いのではないか。」という意見が出ました。しかしそれに対して、「POSそのものが目的ではなく、患者さんへのケアをより良くするための手段であるので、頭の中がPOSになっていれば、SOAPが多少乱れても構わないのではないか。」という意見も出され、患者中心の考え方を再確認することが出来ました。

 また、他の薬剤師がO情報を分けて書いたSOAPをアップしてみたところ、「S情報は患者さんの薬識を探る上でとても大切なので、背後の感情を探るためにも、Sを優先させた方が良い。Oに同じ数字を2度書くのは無駄である。」などの意見が出されました。

 これは当研究会で薬局薬剤師がPOSに取り組むための工夫点などを何度か定例会で取り上げてきた経緯があり、その延長線上として、実際の業務に出来るだけ負担にならないようなSOAPの書き方を実践してきた薬剤師からの意見であり、実際に業務の中でPOSを活かして行くためには、非常に参考になる意見だと考えます。

小冊子

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 最後に、これまでインターネットホームページのみで発表してきた定例会の報告ですが、内容によって反響が大きいものがあり、今回その一部を小冊子としてまとめることにしました。ご希望の方はFAXかまたはホームページから申し込んでください。

図11

(冊子の販売は終了いたしました。)

 以上報告を終わります。どうもありがとうございました。

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