■魔境の面影■
 (葛生の今)


1.鉄道魔境葛生

 く・ず・う・・・・「てっちゃん」ことさらトワイライターにとっては、特別な響きを持つ地名ではないでしょうか。この地から遠く離れた山口県を生まれ故郷とする私にとっても少年時代から印象深い地名です。(鉄だからこそ知り得た地名だった思います。)
 もちろん、初めて訪れたのはずっと後年のことですが、宇都宮からの国道に沿って走る東武会沢線や、工場内の側線のような東武大叶線、そして、葛生駅構内に待機する貨物列車群を目にすることができました。

 葛生は、明治生まれの蒸気機関車や、ナローの専用線、トロッコ、専用鉄道、多くの貨物線など怪しい鉄道をぎっしり詰め込み、「てっちゃん」には胸の躍る魔境でした
東武貨物列車 葛生駅構内
葛生駅に進入する貨物列車
S59.7
葛生駅に待機する貨物列車
S59.7


2.現在の葛生

葛生の地図  左の地図は、葛生に存在した1067oゲージ鉄道を表しています。(Not to scale)
 現在(2002.8)では、いずれの路線も、廃止されており東武鉄道葛生駅以北にレールは存在していません。また、徐々にではありますがその痕跡も薄れつつあるように思います。

【各線開業廃止時期】
■東武会沢線 4.6km
  T9.8   開業
  S61.10 廃止
■東武大叶線 1.6km
  S4.4   開業
  S61.10 廃止
■日鉄羽鶴専用線 6.2km
  S26      開業
  H3.11.26 廃止
■東武上白石駅
  H9.3.20 最終貨物列車の運行
  H9.9.30 廃止

3.上白石駅の今

2001.9.9時点の様子を紹介します。葛生へ行くといつも強烈な印象を受けますが
ここも、みるものに強烈なインパクトを与える風景が展開しています。

上白石1 上白石駅構内を望む。
架線・レールは撤去されているが、架線柱の配列からその壮大な規模が伺える。
ちなみに、駅は、大荷主であった住友セメント栃木工場と隣接している。
奥が葛生駅方。
住友セメント栃木工場前の踏切跡、右側に工場がある。奥には、貨物ホームが見える。 上白石2
上白石3 駅構内をアンダークロスしていた道路と架道橋の橋台。ガーダーは撤去されている。
クリアランスが少ないが、ガーダーには桁下何メートルとかかれていたのだろうか?
構内のはずれにある架道橋。
こちらはガーダーも現存。
奥が、葛生駅方。
右が、葛生駅への線路跡、左は引き上げ線跡。
上白石4
上白石5 二度と進行を現示することはない腕木信号機が毅然として建っていた。

4.日鉄羽鶴専用線のいま

 この専用線を有名にしたのは、ひとえに明治生まれの蒸気機関車を予備機とはいえS50年代まで使用していたことによります。1070形式1080号機、もとをただせば、明治時代に東海道本線で活躍した旅客用テンダ機関車をタンク機に改造したものです。(この機関車についてはこちらをご覧ください。)
 以下の写真は2001.9.9の状況を記録したものです。

羽鶴1 上白石駅をでて国道293とクロスする手前の鉄橋跡。大叶線との並行区間。
奥が、上白石方。
大叶線と別れ、葛生の住宅地を走る。
水路に短い鉄橋が残っていた。
羽鶴2
羽鶴3 同じく、住宅地を走る区間。
当時からあった、門型の送電柱が線路跡を教えてくれる。市街地では、線路跡の多くの部分が菜園や花畑として利用されている。奥が上白石方。
中間駅であった「常盤駅」の様子。
同駅は、田沢工業の構内のようなところに存在した。ワムが2両残されている。
奥が上白石方。
羽鶴常盤駅
羽鶴ダルマ貨車 それもダルマじゃなく、足周りも存在しレールの上に乗っている。
仙波地区の山裾をヘロヘロと走って、羽鶴駅構内に至る。
右のカーブした道路が線路跡。
ここは、もう羽鶴鉱山の敷地内。平行する道路も、公道か私道か見分けがつかなくなる。
羽鶴終点
DL273
上の写真は「栃木の元鉄」様のご好意により掲載しております。
S46ごろに撮影された羽鶴駅構内の写真であるとのことですが、このDLはS27/28新三菱重工業三原車両製作所製の272または273のいずれかですが、ラジエータグリルの形状から273(S28.1製 製番766)ではないかと思われます。S29に羽鶴初のDL(試運転を除く)として入線した機械式DLですが、稼働環境のせいか、あるいはDL黎明期の作品であるが故か比較的故障が多く、このことが1080の復活に結びついたそうです。

 日鉄羽鶴専用線についてはKEIさんの「葛生トワイライトゾーン」
にも大変優れたレポートがあります。

5.あとがき

 葛生からは、かつて我々をとらえてはなさなかった鉄道風景は失われてしまいました
しかしながら、未だに我々を引きつける何かがあります。なにもないことはわかっていてもついつい足を向けてしまうのです。
 もしかすると、ひっそりと眠りについているはずの1080が仙波の山奥から我々を呼んでいるのかも知れません。
「早く目を覚まさせてくれ」って・・・。
できることなら、目を覚まさせてやりたいと思うのは私だけではないでしょう・・・・



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更新    2003.2.11  住友セメントの保存機ページとリンク
       2002.12.3  羽鶴のDL写真を追加
作成    2002.8.9
写真撮影 2001.9.9

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