Alternative Views》 2001年10月21日

ひらがなのチューニング

内田明 <uchida@happy.email.ne.jp>

Kandata補完計画の頃に修正したひらがなだけでなく、カタカナだって手直ししたい気持ちはやまやまですし、現在のひらがなで十分素晴らしい仕上がりだなんて思っているわけではないのですが、それはさておき。現在のひらがなになったいきさつを軽くメモしておきます。


あ
あ
あ
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仮想FUnit64」に記した通り、補完データは可能な限り軽く作ろうと思っております。また、作業を始めた当初は、2次スプライン曲線から3次ベジェ曲線への変換(つまりTrueTypeからPostScriptへの変換)に際しても全く困らないようなデータにできれば楽しいな――と考えていました。

そうした夢想に基づき、最も初期のひらがな案は、曲線を完全に排除し、基本的な字面サイズが32分の24em角となるよう調整した24×24の格子の交点を結ぶ直線によって描いた字形としていました。

この時期のひらがなは、次のようなイメージで作ってみたものです。

下書き画像を元に作成したアウトラインデータを1文字1文字眺める限り、ほぼ、狙った通りの姿を表現することができたと感じられました。そこで、文章として組まれた際のバランスを確認するため、9ポイント〜72ポイントまでの何段階かで文字組みした各種いろは歌を、96dpi環境(CRTモニタ)や180dpi環境(ドットインパクトプリンタ)、360dpi環境(インクジェットプリンタ)等に出力してみました。

まず、大きすぎる文字や小さすぎる文字、偏って見える文字などについて、調整を加えました。次に、“直線のみのデザイン”を諦め、曲線的になっている方が無難な部分を丸くしていきました。

曲線化を終えた段階でリリースしたのが、Kandata1.8.2です。

リリースしたフォントを用いて漢字仮名交じり文をレンダリングしてみると、想定していたよりも仮名の字面が大きくなりすぎていたので、慌てて縮小し、次の版のKandata(1.8.2.2)をリリースしました。この際に、1.8.2の仮名を単純に92%縮小することで新しい仮名のデータを作成したので、しばらくの間、「仮想FUnit64」の方針からは離れてしまうこととなりました。

その後、「仮想FUnit64」の考え方に合わせることと、線の強弱を見直すことなどを目指して、ひらがなに手を入れ始めました。調整を経て、現在“拡張Watanabe明朝 (ver.0.2001.1010)”が実装しているものと同じデータの平仮名を実装したのは、Kandata2.01.0706からです。

チューニングの過程に興味をお持ちの方や出発点に興味をお持ちの方は、最初期のひらがな案を、一覧ページまたはダウンロード用にまとめたファイルにてご笑覧ください。