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ナウシカの幸せ。
このたった一言が、結局「風の谷のナウシカ」に僕の望んでいた全てだったのかもしれない。
最初に言っておくと、僕は救いのない作品は好きではない。それは単に僕の経験上、現実の世界の方が圧倒的に悲惨な事や、救いのないことが多いと感じている事や、金や時間を使ってまで、あえて人の不幸を見たくはない（少なくとも、エンターテイメントであるなら）と思っている事。そして僕にとってもっと大事なことは、生きて行く上で必要な精神的な活力、夢や希望を与えてくれると思っている事だ。
アニメやコミックの全てとは言わないが、その大多数はエンターテイメントだと思っている僕は、必然的に救い、そして夢や希望を作品に求める。
それは「風の谷のナウシカ」という作品であっても同様だ。
もともと、自分の作品はエンターテイメントの言い切る宮崎監督が、アニメにできない事をと始めたナウシカであり、そういう意味では宮崎監督の中で違う考えも有るかも知れないが、僕にとっては、趣味性の高い商業誌に掲載される以上、これは当然の事と思っている。
今、この小文を書くに当たって、改めてコミックの全巻を読み返してみても、「風の谷のナウシカ」が僕にとって最良の作品だという思いは動かない。僕は読書が好きだが（漫画だけじゃないよぅ〜・・・笑）、この作品に出会えたことは、望外の幸せだったと感じている。（この作品のお陰で出会えた人たちの事を思うと、僕にとって、これは決してオーバーな表現ではなく文字どおりの意味だ）
ただ、最後に来て救いのない作品だとも感じている。そしてその救いのなさは、主人公であるナウシカを筆頭に作中の人物が幸せだとは思えないことが最大の原因になっていると思う。
ラストのナウシカの儚げな表情。
あれが幸せな人間とはとうてい思えない。
真実を隠蔽し、回りの人間を欺き、滅ぼそうと考えていた巨神兵に名まであたえ、最後には死なせてしまう。あれが名も知らぬ赤子を救い。蟲たちにも涙を流したナウシカと同じ人物だとすれば、その人間が精神に異常を来していない限り、心の中はさぞ酷い状態ではないかと思えてならない。
そして少なくとも僕は、それが幸せな状態とは考えられない。
連載が始まった最初の頃（アニメ版ナウシカの時代）、インタビューで宮崎監督が語っていたナウシカの将来（作品自体ではなく、個人としてのナウシカ）は幸せを予感させるものだった。詳しくはロマンアルバムなどを参考にして欲しいが、回りを子供たち（ナウシカ自身の子供や、他の子たち）に囲まれ、幸せそうに暮らしているナウシカを幾度も想像したものだった。
それが最後には、全ての秘密を胸に秘めた（セルムは知ってる訳ですが、オーマとの関わりや、それ以外の主要人物との関わりで知らないことが多そうなので・・・）あんな表情のナウシカを見せつけるなんて宮崎監督も残酷な・・（ナウシカファンにとって）。
ナウシカの不幸（？）が決定的となったのは、最後の連載が始まったあたりからだろうか？丘の上で何年も（苦笑）またされたファンとナウシカだったが、一気に作品が終末へ突き進む中、話しはどんどん膨らんでゆき「一体、これでどんな結末になるのだろう？」と固唾をのんで毎月を楽しみにしていたら（何しろ、某十二国記同様、どんどんどんどん暗い方向に進んで行くものだから・・笑）、とたんにシュワの墓所で最終決戦。それでも人々の暮らしは続き、神聖皇帝一族の滅亡と前の皇族であるチククの登場。ヴ王の死とクシャナの王権の継承により、土鬼戦役は両国の痛み分けの形で終了し一応の平和が訪れるのは理解できるが「生きねば」といっても人は、そして誰よりもナウシカ自身は何を目指して生きてゆけというのだろうか・・。
ナウシカは、母は私を愛さなかったと言った。うがった見方をさせてもらうなら、ナウシカは最後には生みの親である宮崎監督からも、愛されなかったのかもしれない。無論、宮崎監督がナウシカという作品と、その主人であるナウシカを単純に嫌っているといっている訳ではない。ただ、極めて長期に渡った作品であるために、作者自身が当初描いていた世界観、価値観と言った物が変容（１０年も過ぎれば、そのことは当然だと思うが）し、結果として持て余し気味になった。そんな感じさえしてしまう。
僕がそんな気持ちのなっていた時、On Your Markの天使の笑顔のなんと晴れやかな事。僕が望んでいたのは、ナウシカがあんな顔で最後に微笑んでくれる。そんなエンディングだったのだと思う。（あの作品はあの作品で、いろいろとあるのだろうがとりあえず天使（？）の表情だけを見て・・）
なにやらエンディングに対する宮崎監督への不満の文章になってしまたが、最後にもう一度。
「ナウシカに幸せ」ただそれだけが欲しい！！
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