2) 試験をする教育と試験をしない教育 
 世界の教育には、大別して二つの流れがある。一つは、生徒に修得すべき知識・技能を提示し、それを修得できたことで教育の成果とするものである。「試験をする教育」とまとめることができる。
もう一つは、個々の子どもの発達過程を援助していくもので、一律な修得目標を課さない。家庭教育が典型的である。「試験をしない教育」とまとめることができる。学校教育においてもこのような教育法はいくつか存在するが、教育の主流とはなっていないので「オールタナティブ教育」と総称されることもある。
「試験をしない教育」は、世界的にいくつかの教育法がすでに確立されている。日本にも紹介され、すでに民間で実践されているものとしては、シュタイナー教育、フリースクール、モンテッソーリ教育がある。子どもの人間発達そのものに、教育方法の理由を求めている。
「試験をしない教育」は、生徒の全人格的発達を重視し、いわゆる学力増進を教育の中心には置かない。このタイプの教育は、学力競争に対して根本的な価値観の転換をもたらす。受験競争の弊害を考えるとき、このタイプの教育機関を合法とすることは、きわめて重要である。
現在も、学力競争に巻き込まれない教育を望む人たちが少なからず存在しているが、その要望はまったく取り上げられないままである。 
 欧米諸国のほとんどは、公立学校のほかに、教育内容の自由を持つ学校設置を、きわめて容易にして、親または生徒本人の選択の自由に任せることが確立している。この理由は
 ・親と子どもの教育選択権を実現する
 ・子どもが公立校に合わない場合の教育手段を確保する
 ・多様な教育を併存させて、教育の画一化を防止する
 ・先行的私学の実践成果が、公立校に普及する。
である。
 
もくじに戻る