W 検討が必要な規制 
学校教育に関する規制をまとめると次のようになる 
1 学校設置に関するもの
 (1)学校の設置主体
 国際標準は、「個人および団体が教育機関を設置し及び管理する自由」(児童の権利に関する条約第29条第2項、国際人権A規約第13条第4項)であり、個人まで含めて設置主体に制限を加えない。国際条約は、教育機関が最低基準に従うことを求めているが、設置・管理の自由は妨げられないとしている。
 個人の教育機関設置・運営の自由がなければ、江戸時代の寺子屋も、吉田松陰の松下村塾も、福沢諭吉の慶應義塾も現れなかったであろう。
 日本の教育基本法第6条は、「国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみがこれを設置することができる」として、個人を除外し、団体を制限している。教育基本法(1947)は、世界人権宣言(1948)、国際人権規約(1979批准)、子どもの権利条約(1994批准)より前にできているので、国際条約の内容が織り込まれていない。
 学校教育法第2条は「国、地方公共団体、学校法人」と限定し、その学校法人については、私立学校法が詳しく規定する。 
 個人まで教育機関設置の自由を認めることが本筋であるが、当面の規制改革問題として設置主体法人を論じる。法人は、個人と比べて
     学校として契約主体になれる
     施設が個人所有でないため、相続問題が生じない
     税制上優遇される
という利点があるため、個人の教育機関設置が認められたとしても、法人による学校運営が主流になるであろう。 
設置主体の改革方法に3種類ある。
     学校を設立できる法人を広げる。(NPO法人、株式会社、各種公益法人等)
     学校法人を、設立しやすいものにする
     設置容易で教育を行いやすい新しい法人枠を作る 
一般的に、教育を行うために有利な法人の持つ条件は
     設立容易。
     教育を実際に行う者が、教育現場を知らない理事、株主等に制約されない
     組織構成の自由を持つ。いかなる組織構成をとるかは、教育に影響するため。
     施設・設備のための資本蓄積が容易。施設・設備の拡充に課税されない
     役員賞与、配当などで資本流出しない
     非営利で、寄付や補助金のための社会的信用を得やすい
である。 
 学校法人を初めとする公益法人は、教育運営に好条件であるが、設立が困難である。NPO法人は、税制面での配慮を加えれば、かなりの好条件である。
 すべての法人の学校設置を認め、自律に任せる道もある。
 営利法人を拒む理由はないが、営利法人は公益法人と比べて資本蓄積がしにくく、条件的に有利ではない。 
公設民営型学校は、この設置主体問題と財源問題を、現制度を大きく変更せずに解決できる。
一方で、公設民営型は、自治体と協力関係を築き、予算を依存するため現実的には干渉も受けやすいと考えられる。独立性の高い法人による私立学校運営の道も用意し、新規設置しようとする人たちのために二本立てとすることが望ましい。当面、NPO法人に学校設置を認めることが適切である。


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