3 2000年分権一括法 
 2000年分権一括法により、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」第52条にある「文部大臣による是正措置要求」が消えた。これは、伝家の宝刀というべき条項で、抜かれはしなかったが、文部省権限を支えていた。また、県教育長人事の文科省による承認も消えた。
 このため、権限としては、文科省は教育委員会に対してほんとうに指導助言しかできない立場になっている。法制上、各教育委員会が独自の方針を打ち出したとき、文科省は対抗することができない。しかし、この重大さは理解されず、教育委員会は、長年の慣行に従っているところが多い。
 国法、省令を通じた規制は引き続き残っている。 
 90年代後半から、文科省も教育改革に乗りだし、教育委員会の活性化、現場の活性化を促そうとしている。しかし、なにが改革を阻害しているかの原因究明を伴わずに、理想論と精神論を打ち出した。
 この時期の文科省は、正式な権限委譲と規制緩和を伴わずに、さまざまな現場努力が起こることを促した。また、受験教育体制をそのままにして「ゆとり教育」を打ち出した。いずれも、原因を放置したままの措置なので、実効は小さかったし、混乱ももたらした。
 教育界の悪弊がある。人々を動かしている制度や規制を直視せずに、努力や心構えなどの精神論を唱えることである。日本の教育界は明治以来長年にわたり、制度の枠を疑うことなく教育にたずさわることを余儀なくされてきた。そのために生じた現象である。
 
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