教育基本法第10条

第10条(教育行政)   中教審答申による改正の方向 中教審答申に対する意見

 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。

A 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

●教育は不当な支配に服してはならないとする規定は、引き続き規定することが適当。

●教育基本法制定時に、不当な支配が「政治支配」と「官僚支配」を意味することは、自明のことでした。
 現在の教育問題は、官僚による教育への過剰な関与によって、教育がすべて「お役所仕事」化し、子どもと親に対して十分に責任を取らなくなったことが最大原因です。
●現教育基本法が、行政の権限をなにも定めていないのは意図的なものです。これを維持すべきです。

●国と地方公共団体の適切な役割分担を踏まえて、教育における国と地方公共団体の責務について規定することが適当。

●教育は、子どもと親にまず責任を負わなければいけません。それには、代議制や行政組織を通じるだけでは不十分です。教師と学校が直接に子どもと親に責任を負う制度にすることが重要です。学校も、責任を負えるだけの決定権を持つことが必要です。学校自治が原則とならなければなりません。
 これは、現行条文の意図するところであり、現行条文で可能です。第10条中の「直接責任」の意義はこれまで見過ごされてきました。
●現在も、文科省は教育委員会に対して指導・助言しかできません。
 しかし、「学校教育法施行規則」(文科省令)は、細かく現場を規定し、教育政策を左右できるほど異様に肥大した省令です。これによって教育の中央集権が維持されました。
 法制的に責任をとることのできない文科省が「学校教育法施行規則」で、日本全国の学校をコントロールしていたことが、教育全体を無責任なものにしました。
●憲法の「教育を受ける権利」、日本が批准する国際条約の「教育への権利」、教育基本法第3条の差別禁止規定などを実現することや、その他たくさんの条件整備が、国の責務です。国の責務はすでに十分にあります。
●地方自治は重要な原則です。しかし、そのついでに国の責務を書いてはなりません。また、地方自治も、学校自治を援助するものでなければなりません。
 現在、変化が始まっているので、基本法制の検討は実情の推移を見守ってからが適切です。
 現行条文は、十分に抽象的なので、変化を妨げません。

●教育振興基本計画の策定の根拠を規定することが適当。

●「教育振興基本計画」策定の根拠を置くことは、教育内容の中央統制を可能にします。これは、教育基本法全体の柔軟性を侵すものです

 文部科学省は、指導・助言の原則を貫くべきです。「ゆとり教育」の早々とした撤回など、これまで、中央集権的に教育方針を策定したことの失敗を考えるべきです。


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