「個人特定可能医療情報のプライバシー基準」概説


  Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996(1996年医療保険の引継・説明責任に関する法律)に基づいて保険運営の効率化のための諸規則が作られる流れの中で、2000年8月17日に連邦法令集の 45 CFR Subtitle AにSubchapter Cが追加された。このSubchapter Cは Part 160(一般規定) とPart 162(運営効率化のための規定)から構成されていた。2000年12月28日にFederal Registerに収載(公布)された個人特定可能医療情報のプライバシー基準(Standards for Privacy of Individually Identifiable Health Information)は、このうちPart 160を改正し、Part 164を新設する形式をとっている。369ページ(82461〜82829)にわたる膨大なものであるが、その多くの部分は、本基準作成の背景、基準案へのパブリックコメントの紹介、およびパブリックコメントへの対応を記述したものであり、規則本文(改訂Part 160と新設Part 164)は82798〜82829ページに収載されている。
 これまで米国では医療情報への患者のアクセス権、修正権などは州法で規定されていたが、この規則により初めて連邦レベルでそうした権利が明文化されることになった。この規則は更に、個人特定可能な医療情報の利用/開示について本人の同意を求めるべきことを原則として打ち立てた。この基準は、医療機関、保険会社、雇用者、研究者および政府機関が医療に関する個人情報の使用/開示を行う際の連邦レベルでの規則である(州がそれよりもっと厳しい法律・規則を有する場合はそれが優先される)。この規則により、患者は自分についてどんな情報が他人と共有され、共有する者が誰であるか、どんな目的で共有するかを知る機会が以前より増大する。同時に、医療に関する個人情報を受け取る者/組織はその情報が有効に保護されることを確保する責任を負うことになる。この規則では本人の同意を求めるべきとみなされるケースがあまりに広いため、医療実務上実施困難であることを理由に医療業界が新政権にこの規則の見直しを求めたため、当初より1ヵ月半遅れの2001年4月14日に発効した。ただし、発効後2年間は準備期間として、違反者への罰則も適用されず、この期間に実務 上実施困難な点の修正がなされるとみられている。研究目的での個人情報の使用/開示については、従来のIRB(施設内研究倫理委員会)あるいはこの規則に基づいて組織されるプライバシーボードの承認が得られれば本人の同意は不要とされ、またpublic health activity(公衆衛生活動)のための使用/開示についても本人への説明・拒否の機会提供は不要とされているなど、公益に関連した適用除外例がかなりあるのが特色である。

[プライバシー基準の構成]

Part 160(一般手続規定)
Subpart A(総則)
  §160.101(根拠法)
  §160.102(対象者)
  §160.103(定義)
  §160.104(修正)
Subpart B(州法との関係)
  §160.201(適用)
  §160.202(定義) 
  §160.203(原則・例外)
  §160.204(例外取扱申請手続き)
  §160.205(例外取扱期間)
Subpart C(遵守・履行)
  §160.300(適用)
  §160.302(定義)
  §160.304(協力・支援)
  §160.306(長官への異議申し立て)
  §160.308(監視)
  §160.310(対象者の責任)
  §160.312(長官の対応)
Part 164(安全とプライバシー)
 Subpart A(総則)
  §164.102(根拠法)
  §164.104(対象者)
  §164.106(他のPartとの関係)
 Subpart B-D(未定)
 Subpart E(個人特定可能医療情報のプライバシー)
  §164.500(対象者)
  §164.501(定義)  
  §164.502(保護対象医療情報の使用・開示 -- 原則)
  §164.504(使用・開示 -- 組織に求められる事項) 
  §164.506(治療、支払あるいは医療付帯業務のための使用・開示への同意)
  §164.508(特別許可の必要な使用・開示)
  §164.510(本人に諾否表明の機会を与えるべき使用・開示)  
  §164.512(同意、特別許可、諾否表明機会の不要な使用・開示)
  §164.514(保護対象医療情報の使用・開示に関するその他の要件)  
  §164.520(保護対象医療情報の取り扱いに関する方針明示)
  §164.522(保護対象医療情報のプライバシー保護を求める権利) 
  §164.524(保護対象医療情報への本人のアクセス)
  §164.526(保護対象医療情報の訂正)
  §164.528(保護対象医療情報の開示履歴の報告)  
  §164.530(管理規定)
  §164.532(経過措置)  
  §164.534(実施猶予期間)
  


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