著者:近藤純正 1. はしがき 2. 気温分布や対流に関するQ&A(4件) 3. 放射とスペクトルに関するQ&A(4件) 4. 極小低温層の形成に関するQ&A(5件) 5. 盆地の放射冷却や斜面流に関するQ&A(6件) 6. 室内の微気象と人体エネルギーに関するQ&A(4件) 7.その他のQ&A(6件) 参考文献ご質問など、ご意見をお寄せください。
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(参考1) 放射影響の距離による変化 100mの距離で黒体放射の影響がおおよそ半減するのは、物体の温度がたまたま 400℃(673K)の場合である。これは400℃の黒体放射のスペクトルピークが 水蒸気や二酸化炭素の吸収帯の近くにあるからである。 ウイーンの変位則は、エネルギー密度が最大となる波長をλMAX (μm)、温度を T(K)とすれば、次の式で表される。 λMAX=2897 / T T=673K では、λMAX=4.3μmとなる。 図22.2によれば、波長4~8μm付近には二酸化炭素(CO2) と水蒸気(H2O)による強い吸収帯がある。このことから、400℃ の物体から出る放射エネルギーは500m程度の距離でほぼ半減する。 物体の温度が、たとえば17℃(290K)であれば、λMAX=10μmと なり、オゾンの吸収帯(9.6μm前後)を除けば、その両脇は水蒸気による 吸収が弱い。この特徴を利用して、宇宙の人工衛星から地球表面の温度 (雲があれば雲頂温度)を知ることができる。 一方、15μm付近には二酸化炭素の吸収帯があり、遠い場所からの放射は 減衰するが、そのかわり近い場所からの放射が影響する。これを利用して、 宇宙から地球を見れば、宇宙に近い大気層(高層大気)の温度を知ること ができる。 太陽放射は温度5780Kの黒体放射のスペクトルで近似され、エネルギー ピークは0.5μmである。図22.3によれば、この付近では空気分子により散乱 されるが吸収が少ないので、太陽が天頂付近にあれば、地上における 日射量は大気上端における日射量(太陽定数=1360 Wm-2) の70%ほどが到達する。 なお、大気の全質量の99%は約50km以下の成層圏と対流圏に含まれているが、 密度が地上と同じになるように圧縮した場合(等密度大気の場合)、 厚さは約8kmになる。 太陽放射や大気放射は電磁波である。電磁波には長波・短波の電波、マイクロ 波、X 線、ガンマ線などがあり、それぞれの特徴を利用して肉眼では見えない 物の探査や通信に応用されている。 |
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