Kondo, J., O. Kanechika, and N. Yasuda, 1978: Heat and momentum
transfers under strong stability in the atmospheric surface layer.
J. Atmos. Sci., 35, 1012-1021.
近藤純正、1982:大気境界層の科学.東京堂出版、pp.219.
近藤純正、1987:身近な気象の科学-熱エネルギーの流れ.東京大学出版会、
pp.189.
近藤純正、2000:地表面に近い大気の科学.東京大学出版会、pp.324.
近藤純正編著、1994:水環境の気象学.朝倉書店、pp.350.
付録
付録1 空気温度の変化、無次元表示
空気温度の時間変化が放射ではなく、分子熱伝導で決まる場合は、
式(191.4)で示したように、温度拡散係数 K が高さによらず一定の場合、
各距離 z の温度 T の変化は誤差関数 erf(x) で表される。
注意(時間 t の基準をずらした)
本論で説明してあるように、中模型の実験では空気層容器の上側にバケツ3個分
の高温水を瞬間的に注ぐことが難しく、注ぎ始めてから0.5分後に空気層の
温度変化が始まった。それゆえ、上記の図の作成では、時間 t を0.5分(30秒)
ずらした時間を t としてプロットしてある。
クイズ 下面にアルミホイルを敷いた場合の温度は?
付録2では空気層の下を断熱材とし、その表面温度が時間変化する実験である
(実験 E とする)。
断熱材は発泡スチロールであり、長波放射(赤外放射、熱放射)に対して近似的
に黒体とみなせる。
この発泡スチロールの上面(空気層の底)に長波放射をよく反射するアルミホイル
(台所用品、厚さ12μm=0.012mm)を敷き、同様の実験を行う
(実験 F とする)。
実験 F では、空気温度の昇温速度と温度鉛直分布は実験 E と比べて、
どのように違ってくるか?
ただし、この実験装置では空気層の上に注ぐ高温水は実験 D とほぼ同じ10℃
ほど高く、ほぼ一定温度に保てるのは時間経過50分程度までである。
t=0~50分の時間帯についてのクイズである。5時間以上経過すると装置内は
ほぼ等温状態に近づいていく。
回答 例1: 実験 F では、放射と乱流の作用で空気層全層が早く昇温する。
(下面で反射された長波放射は、空気層全体に伝達され、安定成層をなして
いる空気を全層にわたって昇温させる。ある程度時間が経過すると上下の
温度差が小さくなり、下層から乱流が発生する可能性がある。乱流が発生
すれば、空気温度はより早く昇温する。)
例2: 実験 E と比べて空気層の昇温速度は特に下層で増加する。
(上からの放射がアルミホイル面で反射され、その放射の作用による。)
例3: 実験 E と比べて空気層の温度上昇は小さい。
t=0直後、実験 E では底面の発砲スチロール表面が急激に昇温するが、
実験 F では下面のアルミホイルが放射の多くを反射し、アルミホイル自体の
昇温は殆どない。
t=0直後、熱拡散を無視するならば、空気層は上面からの放射と、下面で
反射された放射の両方による加熱を受ける。ただし、上面に比べて下面からの
放射は空気層の吸収分だけ小さく、上・下が非対称な昇温率と温度分布に
なろうとする。