K14.温暖化問題(専門向け講演)
著者:近藤純正
	はじめに(温暖化の実態)
	14.1 温暖化の問題点
	14.2 最低気温極値の上昇傾向(都市化、除雪効果)
	14.3 気象要素に及ぼす都市化と陽だまり効果

	14.4 気温上昇と年平均風速の関係
	14.5 観測所宿舎等の跡地の現状
	14.6 まとめ(気温上昇の原因、観測所のありかた)
	
	14.7 付録:温室効果・気候形成の基本原理
	要約
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これは2005年12月19日、気象庁で行った2時間の講演「地球温暖化問題ー 気象観測体制の強化に向けてー」の概要である。(2005年12月27日完成)

同じ主題名(副題は変更)の講演は2004年10月~2005年11月にかけて 行い、その都度バージョンアップしてきたが、今回はこれまでのまとめである。 これまでの講演は、 気象庁関係では網走、旭川、横浜、鳥取、高松、高知、石垣島の各地方気象台 と気象研究所、大学関係では筑波大学地球科学系、富山大学理学部、 鳥取大学乾燥地研究センター、高知大学理学部、研究機関では国立防災科学 研究所、農業環境技術研究所(つくば市)、近畿中国四国農業研究センター 四国センター(香川県善通寺市)、九州沖縄農業研究センター(熊本県 西合志町)、国際農林水産業研究センター沖縄支所(沖縄県石垣島)において 開催した。

旭川地方気象台では「放射冷却」に重点を、学生を対象とする大学 では情報としての気象データから何を読み取るかに重点をおいて話した。

これらの講演は、一部を例外に、原則として筆者のボランティア活動として(旅費・講演料は無料で)
行ってきた。今後も引き続き、日本各地の観測所などを見て回る予定であり、希望する大学や研究
機関があれば、受講者のレベルに合わせた内容で特別セミナー(無料)を行うつもりである。


はじめに(温暖化の実態)

** 以下に並ぶ表の右列は講演時に使用した図表である。 左列の説明文と共に合わせてご覧ください **

(01/42) これまで言われている地球温暖化 の上昇率の数値について、私は以前から疑問をもっていました。 その疑問を解くために始めたのがこの研究調査であります。
私は気象官署と都市化の影響のない田舎観測所の周辺環境を見て回って います。観測所の現状について、一日も早く皆さんにお伝えしたく、そして 温暖化量をより正しく評価する観測体制がつくられることを願って います。

ここでは最初に、温暖化の実態を示すことにします。
(02/42) 気象庁が都市化の影響が少ない として選んだ17地点は、殆んどが中都市にあり、都市化による気温 上昇率が大きくなっている。 上図は例として、彦根における年平均気温の経年変化を示す。 下図は彦根の北方約27kmに位置する木之本における経年変化である。 木之本は北陸街道の宿場町から発展してきた町であり、 気象観測所は3回移転したが、いつも町並みから離れた場所に置かれ、 都市化や陽だまり効果の影響は殆んど無かったと判断される。そのため、 観測値はこの地域の自然の状態を表していると考えられ、彦根におけるような 大きな気温上昇率は見られない。
(03/42) 上図は気象庁が選んだ 17気象官署のデータを平均した年平均気温の経年変化であり、 この100年間に約0.9℃の割合で上昇している。
下図は私が選んだ16田舎観測所のデータを平均した結果であり、100年間の 上昇率は0.2℃程度である。

地球温暖化を表す長期の傾向とは別に、気温は40~50年程度のサイクルで 上昇・下降しており、両者はよく対応している。 1980年代以後の気温急上昇から、温暖化問題に対する国民の関心が 高まっている。この状況にある今、国民の理解を得て観測体制の強化を進め るべきであろう。過去数百年間をみても40~50年の気候変動サイクルがあり、 最近の気温急上昇は、やがて冷却期に入り、温暖化問題に対する関心も冷めて くるかも知れない。
(04/42) これまで見て回った気象観測所は、 北は北海道の網走とその周辺アメダスから、南は石垣島と日本最南端の 波照間島まで51箇所である。
(05/42) これより5つの問題について 議論したのち、まとめを行う。

最後に、温室効果の基本原理を復習し、大気中の二酸化炭素濃度のほかに、 地球の気候形成において何が重要な役割を担っているかを再確認する ことにしよう。

14.1 温暖化の問題点

(06/42) 図は大気中の二酸化炭素濃度 について過去40万年間の変動を示している。 産業革命以後の二酸化炭素の増加は過去の変動に較べて、 あまりにも急激であり、しかも人間活動による影響であることが問題である。
(07/42) 現在、広く公表されている 100年先までの温暖化予測は、都市化の影響を受けた観測所のデータと 過去100年間の計算結果が合うように行われている。

ところが実際の気温上昇率はそれほど大きくないので、今後の改良計算に よる予測は曲線②のようになるかもしれない。
一方、人間の考える計算モデルには重要な過程が見落とされている可能性が あり、それが考慮されれば曲線③のような結果となるかも知れない。
(08/42) 気温観測データから平均気温に ついて気候変動を求めるとき、観測方法の違い等から、0.1℃程度の誤差が 含まれる。この前提のもとに議論を進めよう。
(09/42) 年平均気温が昔と今で1~2℃ 変わったことをわれわれが体感できる現象に置き換えてみよう。東京を例にすると、 50年前の夏、寝苦しい夜は10日ほどであったが、最近は31日ほどに増えた。 また冬の朝は、晴天なら毎日のように結氷が見られたが、最近では僅か3日 しか起きなくなっている。

14.2 最低気温極値の上昇傾向(都市化、除雪効果)

(10/42) 北海道の旭川では、年最低気温の 極値はこの100年間に10℃ほども上昇している。年最低気温は、風の弱い晴天 夜間に放射冷却によって生じやすい。特に積雪が概略50cm以上のとき放射 冷却量は大きくなる。

都市化でビルが増えると、地面から見える天空率が小さくなり、人工熱の 排出量も大きくなる。さらに機械による道路除雪が行われると、夜間に 地中からの熱伝導が大きくなり激しい放射冷却は生じなくなる。 除雪面積は一部であるが、その熱的効果は大きい。 植物葉面に占める気孔面積は1%程度であるが蒸散量が多いことに似ている。
(11/42) 他の都市における年最低気温の 上昇率と年平均気温の上昇率の関係について、データの多い最近の50年間 を調べた。気温の日変化パターンが同じ場合、両者の関係は斜めの細線 (y=x)上に並ぶはずであるが、殆んどのデータは細線より右側に プロットされている。これは放射冷却が近年弱まっていることを意味する。 太線は平均的な関係である。 冬期の積雪地=青森、札幌、旭川、秋田、福島、盛岡、山形では、太線より、 さらに右方にプロットされている。

徐健青氏と本谷研氏が同じ関係を中国とアメリカについて調べたところ、 同じ傾斜をもつ太線の周辺にプロットされ、都市化の影響が3国で殆んど 同じ関係になるのは興味深い。

14.3 気象要素に及ぼす都市化と陽だまり効果

(12/42) 都市化の影響は上記のように、 年最低気温(極値)の上昇傾向として現れる。そのほか、都市化によって 風に対する空気力学的な粗度が大きくなると、地上の平均風速は減少する。

「陽だまり効果」は測風塔上の風速が一定でも、露場のごく近辺が 立て込んでくると露場の風速は弱まり、平均気温が上昇することである。 同時に地温・気温差が大きくなり、さらにパン蒸発計蒸発量は減少する。 降水量の観測は昔は雨量小屋の上に受水口を設置していたが、最近では 露場面に雨量計を置くようになり、実際の降水量が不変だとしても 観測値は見かけ上大きくなる。これは雨量計の補足率が強風速で 小さくなることに依る。
(13/42) 1923年の関東大震災によって、 東京も横浜も大火に見舞われた。火災後の横浜の年平均気温は約0.8℃低下 したが、東京では気温低下は生じなかった。当時の東京(中央気象台)の 露場は濠端にあり、広々としていたので、震災前も陽だまり効果は生じて いなかった。しかし、横浜測候所の露場は狭いところにあり、震災前は 陽だまり効果で平均気温は高めに観測されていた。震災で周辺の建物が焼失 し、風通りがよくなって平均気温の観測値は下降した。
(14/42) 震災前の横浜測候所は大桟橋の 付けもとにあった。百葉箱と庁舎の距離は5~10mほどしかなかった。 しかも、横浜における最多風向は図の手前から海の方向に向かうため、 露場の風通りはきわめて悪かったと考えられる。
(15/42) この写真は滋賀県、琵琶湖西岸 今津町(現在、高島市)にある高島高校屋上から撮影した ものである。水平線は傾いて撮影されており、左上方の遠方に琵琶湖が 見える。

江戸~明治時代には、琵琶湖岸に沿って街道があり、その宿場の町並みに 寺がある。修行僧たちの食堂(じきどう、現存)が明治維新後に郡役所と なった。その庭で気象観測が始められた。当時、現在の今津市街地は沼地で あったが、だんだん埋め立てられて市街地ができた。気象観測所は旧制 中学校に移転、後に新制の高島高校に改名された。
(16/42) 今津と木之本のおける年平均気温の 差の図示である。木之本は図(02/42)で説明したように、都市化も陽だまり効果 もない理想に近い観測所である。今津は町が発展するにつれて陽だまり効果 が強化されてきた。

ところが1979年、町外れにアメダスが設置されると、 年平均気温は約1℃もダウンした。1990年代以後、再び気温は上昇傾向に ある。その理由は、 ①アメダス周辺に住宅が増えつつある、②アメダスが生垣で囲まれ しだいに繁茂する状況にある。 全国にはアメダスが生垣で囲まれたところがある。風通りのよい フェンスに取り替えるべきだろう。風通りが悪いと、気温は10m程度の狭い 空間しか代表しなくなる。
(17/42) 網走地方気象台の平屋建て旧庁舎 が二階建ての大きな新庁舎に建て替えられ、露場の風通りが悪くなり年平均 気温は近隣アメダスと較べて急激に0.4℃も上昇した。

私がもっと早く、陽だまり効果の重要性に気づいておればよかった。 気象台敷地は広いので建て替えに際し、新庁舎は旧庁舎の西側(図の左側) に建設し、広い露場は確保すべきであった。露場が50m×50m (=2500平方m)の平さになっていれば理想的だったのに、残念である。
(18/42) これまでに判った陽だまり効果の 一覧を掲げた。表の(7)福野農学校は2階建て校舎から25m離れて百葉箱が 設置されて、理想的であった。しかし、当時の露場周辺には、つつじの植栽と 背丈の高い樹木があり、それらによる陽だまり効果で年平均気温が0.3℃ほど 高めに観測されていた。

14.4 気温上昇と年平均風速の関係

(19/42) 多度津は海陸交通の要衝に あり香川県で最初に測候所がつくられた。1965~1982年にかけて、測候所 の北側の海水浴場が埋め立てられ住宅地となった。この事業にともなって、 年ごとに年平均風速が減少してきた。1983年以後、年平均風速はほぼ一定と なったが、2002年に庁舎と宿舎が解体された。同時に庁舎測風塔は低い鉄塔 となった。風速計高度が低くなったので、風速は弱くなるはずだが、庁舎と 宿舎がなくなることで風通りはよくなり、平均風速は僅かながら増加した。

こうした風速変化にともなって年平均気温がどのように変化しているか、次の 図によって調べてみよう。
(20/42) やや内陸の滝宮では明治時代から 気象観測が行なわれてきた。現在の滝宮アメダスは農学校の 農場内にある。 図は多度津と滝宮における年平均気温の差の経年変化である。 1965~1982年にかけて多度津測候所周辺の宅地化にともない、 年平均気温は約1℃も上昇した。

しかし1990年代以後、気温差は減少傾向にある。 その理由は、(1)滝宮アメダスに隣接する記念見本園内の低木と、南東側 50m前後にある背丈10m前後の樹木が伸びたこと、 (2)アメダスのフェンス外側の 生垣を挟んで北側のビニールハウス、道路を挟んで西側のビニールハウスの 大型化によると考えられる。そのため、今後は滝宮に代わって財田アメダスの データを用いることになる。
(21/42) 都市化による気温上昇は 人口と関係づけられた研究が多い。しかし、これまで見てきたように、 観測所のローカルな風速と気温が密接に関係する。そこで、観測所で観測 される年平均風速と100年間当たりの都市気温上昇率との関係を図示した。

日本の全気象観測所約1000箇所について風に対する粗度が風向別に求められて いる。この粗度を用いていろいろな高度で観測された風速を高度50mの 風速に換算し、それを横軸に用いた。各補助線は年平均風速に反比例する 曲線である。鉛直方向の拡散係数は風速にほぼ比例するので、風が強く なるほど、地表面付近で温められた空気が上空へ拡散され、 気温上昇は小さくなることがわかる。

14.5 観測所宿舎等の跡地の現状

(22/42) 露場の風通りが悪くなると、 年平均気温は上昇することがわかった。その応用問題として、 高知地方気象台の露場周辺の都市再開発によって年平均気温が上昇するか、 下降するか、自分自身を試験してみることにした。都市再開発は2001~2005年 に行われた。

図は高知における年平均気温の経年変化である。
(23/42) 高知地方気象台は、昔は街外れに あり、敷地面積は概略50m×100mほどもあった。1970年の高潮により 気象台は浸水被害に遭い、それが契機となり庁舎のみ合同庁舎に 移転した。露場はもとの宿舎のあった場所に少し移動した。

露場周辺は近年住宅が密集し、観測露場としては風通りは悪くなっていた。
(24/42) 周辺の再開発によって、高知の平均 気温は上がるか下がるか?

自分自身を試すこの問いに対して、私は「下がる」と答えてあった [本ホームページ「研究の指針」の 「8. 温暖化問題Q&A」、8.1 都市気温上昇と風速に関するQ&Aの A8.1(その1)を参照]。

都市再開発に伴う気温変化は、近隣の測候所・アメダスにおける 気温との差の経年変化から見ることにした。
(25/42) 図は高知と各観測所における 年平均気温の差の経年変化である。再開発の影響を明瞭に見るために、 1990年代における差がゼロになるように、清水の気温は+1.3℃、 ・・・・・室戸岬測候所の気温は-0.2℃の補正をほどこしてある。

図から明らかなように、私の予想とは逆に、再開発によって高知の平均気温 は0.3℃ほど上昇している!

予想が間違っていたので、再び高知の露場周辺の変化を詳細に調べるため、 高知市役所高知駅周辺都市整備課と、高知県立図書館へ行くことにした。
(26/42) 図は再開発直前の状態である。赤色 は住宅が建てられている部分である。露場に接して南側には2階建て住宅が 密集し、特に冬期には露場に日影ができるほどである。露場の西側には江ノ口 東公園があった。
(27/42) 2005年11月現在には、再開発は ほとんど終了していた。元の江ノ口東公園には2~3階建ての住宅が建てられ ている。その西側は幅26mに拡幅された舗装道路ができた。露場周辺の 住宅団地内の道路も拡幅された。
(28/42) 露場の西側に接した子供用の サッカー練習場の周りには背の高いフェンスが張られ、蔓が繁茂しつつある。 ①最多風向(南西風)に対して風を弱める作用がある、②サッカー 練習場の裸地と公園内の舗装された通路などによって蒸発が抑制されること、 ③それまでの露場の日影が減少した。これらはいずれも気温上昇を生むので、 高知における再開発後の気温上昇の事実が納得できた。
(29/42) 観測所庁舎や宿舎等の跡地の現状 について、まとめた。

観測所庁舎などの跡地を売りに出すとは、なんと貧しい国の現状なのか!
観測所は周辺数km~数10km範囲を代表する気象を観測する施設である。 狭い敷地にしてしまっては、観測値はごく局所の状態しか代表しなくなって しまうのだ!

14.5 まとめ(気温上昇の原因、観測所のありかた)

(30/42) 気象要素は環境パラメータである。
(31/42) 気温上昇には3つの原因がある。 今後はこれらを意識してデータ解析をしようではないか。
(32/42) 気象観測所のうち、周辺環境が 理想的なものは皆無である。現実的な対応としては、観測所の役割りを3つに 分けて再整備することを提案したい。

地球規模の気候変動観測所は新たに設置するよりは、現在ある 観測所のうち、それにふさわしいものを指定し再整備するがよい。 理想に近い観測所は少数で、しかも将来数十年~100年間以上に わたり環境が悪化する観測所もでる可能性があるので、現時点では 20箇所ほどの候補を探す必要があろう。
(33/42) 気象観測のための露場について 昔からあった基準は、 ①広さは600平方m(=20m×30m)以上、②周辺は開けており、 大きな建物・樹木はないことであった。しかしながら、基準②が 守られている観測所はほとんどなくなってしまった。

新しい基準として露場の広さは2500平方m以上としておけば、陽だまり効果 による昇温はほとんど無視できると考えられる。
(34/42) 再整備の候補例を挙げた。
例えば、「3.弾崎アメダス」は佐渡北東端の切り立った弾崎の上の 平坦な敷地にある灯台の隣にある。気象庁アメダスは高さ8.1mの 風を測るのに対し、海上保安庁灯台の高い測風塔は海上も含む周辺一帯を 代表する風を観測する。同じ国土交通省の気象庁アメダスと海上保安庁 測風塔は併合させ、広い敷地面積を専有させる。実際上の 草刈り等は隣にある公園「はじき野フィールドパーク(ログハウス・オート キャンプ場)」に依頼すれば、一帯は整備の行き届いた綺麗な公園、理想的な 気象観測所となるだろう。
(35/42) 近年、環境省ではモニタリング・ ステーションを設置して、大気微量成分を観測している。その場所は 理想に近いところにあるが、気温など一般の気象観測には重点が置かれて いないように見受けられる。せっかくの観測所であり、国民の同じ税金を 使って運用しているのであるから、気象観測にも力を注ぐようになって 欲しい。

農水省関係では、気象庁管轄の観測所に較べて、広くて理想に近い圃場で 気象観測が行なわれている。私の呼びかけに応じて、これら観測所における 気象データがほぼ同じフォーマットでインターネット上で公開される準備が 進められている。

14.6 付録: 温室効果・気候形成の基本原理

(36/42) 温室効果の原理を復習しよう。
(37/42) 地球の温度の決まり方について 復習しよう。複雑過程の中にあるごく基本的なことがらを理解しておこう。
(38/42) 地球の温度は惑星アルベド3%の 変化に対して2℃の変化が生じる。アルベドについて、過去100年間の変化 に関する知識は乏しく、将来100年間についての変化予測もきわめて難しい 問題である。
(39/42) 地球が取り込む太陽エネルギー が一定とした場合、大気・地表面を含む地球の放射平衡温度(有効温度) は一定であり、温室効果の作用によって、下層大気はそれより高温に、上層 大気は低温に保たれる。地球温暖化とは、下層大気がより高温になることを 言う。
(40/42) 大気組成のうち、温室効果を もつ気体は水蒸気、二酸化炭素、オゾン、ほか、少量の気体である。 そのうち、温室効果に最大の寄与をしているのは水蒸気である。 地表面の改変によって森林が砂漠化したり、海洋汚染によって水循環が 変化すると、大気中に含まれる水蒸気量も変わてくる。その結果、水蒸気 による温室効果が変化し、気候に影響を及ぼす。
(41/42) 温室効果と対流活動のバランス によって地上の平均気温は決まる。地球の気候は微妙なバランスによって 成り立っている。

要約

(42/42)
地球温暖化問題―気象観測体制の強化に向けて―

地上気温の世界平均値は、この100年間に0.6~1.0℃程度の割合で 増加しているという。しかし、こうしたデータの大部分は、周辺が都市化 された観測所で得られたものである。都市化の影響を含まないデータを用 いて、より正しい気温変動の実態を知ることが緊急の課題である。

①田舎観測所のデータでは、100年間に0.2℃程度の上昇傾向である。 ②小都市であっても、風通しがわるい露場をもつ観測所では「陽だまり効果」 によって平均気温が高く観測される。 ③横浜では関東大震災によって測候所 周辺一帯が焼失し約0.8℃の低下があった。 ④積雪地域の都市では、 微風晴天夜に生じる年最低気温の上昇傾向が顕著である。特に除雪の効果が 大きい。⑤観測所周辺の環境変化にともない風速と気温が同時に変化する。 多度津測候所では北側の海が埋め立てられ住宅の建設とともに風速が弱まり、 同時に平均気温が上昇した。⑥気温上昇量は、大都市ほど大きいが、年平均 風速とともに小さくなる。

⑦気象観測所は目的別に、(A)気候変動観測用、(B)天気図・予報用、 (C)都市・地域用にわけて整備し、気候変動を正しく監視していくことが 重要となる。(A) では露場の広さは2500平方m(暫定値)より広く、 周辺環境は一定に保つこと。

最後に、温室効果の基本原理を復習し、地球の気候形成にとって大気中の 二酸化炭素濃度とは別に、地球のアルベドと水蒸気量が重要な役割りを担って おり、人為的な地表改変が気候変化をもたらすことを確認した。

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