A55.深浦特別地域気象観測所
ー地球温暖化監視の重要な観測所ー


著者:近藤純正
青森県日本海沿岸に設置されている深浦気象観測所は、地球温暖化 など気候変化を監視する重要な気候観測所である。 (完成:2011年6月15日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

これは、深浦気象観測所の見学会(2011年6月25日)において参加者に配布する資料である。


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1.沿革
深浦気象観測所(旧深浦測候所、現在の正式名称は深浦特別地域気象観測所)は、北緯40度38.7分、 東経139度55.9分、標高は66.1m、深浦港を見下ろす史跡公園「御仮屋」にあり、1940年1月1日に 現在地で観測を開始してから70年余になる。

1926(大正15)年9月1日 県水産試験場深浦分場にて気象観測開始
1940(昭和15)年1月1日 深浦町字岡町210に移設(御仮屋:藩政期の奉行所)、中央気象台深浦 観測所(観測は6、10、14、22時)
1950(昭和25)年6月1日 深浦測候所と改称
1953(昭和28)年1月1日 観測時間変更(3、9、15、21時)
1969(昭和44)年4月1日 VHF深浦固定局開局
1972(昭和47)年3月22日 庁舎改築、深浦検潮所新設落成
1972(昭和47)年4月1日 深浦検潮所観測開始
1974(昭和49)年7月1日 地上気象観測装置(毎時自動)観測開始
1981(昭和56)年5月1日 遠隔自記検潮装置運用開始
2004(平成16)年10月1日 無人化、特別地域気象観測所と改称

無人化後、庁舎は解体され、露場はほぼ同じ場所となる(半円形状から矩形状の露場)。 2007年12月より風の観測は高さ約21mの鉄塔に移設となった。露場の配置図などについては、 「身近な気象」の「M47.気象観測所の周辺環境を守るー深浦1」 の図47.2と47.3に示してある。

2.重要な観測所
日本におよそ100カ所あった測候所は、人員・予算削減により、北海道の帯広と奄美大島の名瀬の 2か所を除き、すべて無人化された。また、都市内にある多くの気象台は、周辺に舗装道路やビルが 増えるなど都市化されて都市独特の気候が現れ、地球温暖化などの地球規模の気候変化を正しく 観測できなくなっている。

観測所周辺の環境変化が少なく、長期の気候変化を正しく観測できる気候観測所は、北海道日本海 沿岸の寿都、岩手県三陸沿岸の宮古、高知県東部の室戸岬の3か所である。ほかに鹿児島県屋久島と 沖縄県最西端の与那国島も環境に恵まれているが、観測期間が短い。

3.環境整備
深浦観測所では、周辺の樹木が成長し、年平均風速は34%減少し(1970~2005年)、日最大風速 10m/s以上の 年間強風日数は 100日(1960年代)から13日(1997~2006)に減少していた。 今回の環境整備では2009年11月上旬に、(1)南側の笹薮を部分的に刈取り、(2)天狗巣病の桜や 混みあった桜の伐採(雑木2本と桜10本)、(3)露場フェンス北東側について斜面まで雑草の 刈り取りが行われた。

続いて、第2回目の環境整備として2011年2月下旬には、さらに風通しをよくし日陰を無くするために (4)松15本の枝打ちと、(5)サクラ・雑木・イチョウの21本の伐採、(6)南側斜面の範囲にあった 竹やぶの一部の刈り取りが行われた。

この第2回目の環境整備の図面は、「気候観測応援会」の 「A01.気候観測応援会情報(1)」の図1.1に示されている。

岡山県内陸の津山観測所でも同様に、桜など21本が伐採され環境整備が行われた。深浦と津山の 両地点とも住民の理解と協力により、環境整備が行われた。図1に示す重要な観測所は、将来に わたり観測環境を大事に守っていかなければならない。

重要な気候観測所
図1 日本の重要な気候観測所、赤印に丸記号で囲んだ観測所は環境に恵まれた特に重要な気候観測 所(寿都、宮古、室戸岬、および屋久島と与那国島)。

4.日本の地球温暖化量
図2は寿都、宮古、室戸岬の基準となる観測所の資料をもとに作成した「日本の気温の長期変化」で ある。これは都市化などの影響を含まない地球温暖化の実態を表し(様々な誤差の補正済み資料)、 過去127年間(1881~2007年まで)の気温上昇率は100年間当たり0.67℃である(破線)。

気温の長期変化
図2 日本の気温の長期変化、赤矢印は気温が急激に上昇する気温ジャンプを示す。

この図は日本全体の平均気温を示しており、地域によって変化の様子は異なる。気温ジャンプは 緯度が高いほど大きく、たとえば1988年の気温ジャンプは、北海道や東北地方で0.8~1.2℃の大きさ、 沖縄など南西諸島では0.2~0.4℃である。

地球温暖化など長期の気候変化は100年間当たりわずか0.67℃で、誤差に匹敵する大きさであり、 今後の気候がどのように変化していくか、高い精度で観測しなければならない。

5.観測環境の維持
気象観測所は、(1)日常の気象・防災の目的と、(2)長期的な気候変化を知るという2つの 目的がある。後者の目的では特に高精度の観測が必要であり、観測所の周辺環境は可能な限り一定 に保たれなければならない。

気候の観測所で重要なことは、(1)風通しがよいこと、(2)日当たりがよい こと、(3)周囲の環境が時代によって変わらないことである。観測所は担当の地方気象台 が見回りしているが、日本の各地で観測環境の悪化の例があるので、「気候観測を応援する会」 メンバーも地域住民も互いに連絡しあいながら、私たちの大事な観測所を守っていこう。



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