M55.放射冷却(極低温、結氷、夜露)

著者:近藤純正
微風晴天夜の放射冷却の大きさは4つの要素によって決まり、さらに盆地では2つの要素が加わり 冷却を大きくする。冬季の結氷は放射冷却によって厚さが決まり、氷点下の風が吹けば風速に 比例して結氷の厚さが増加する。夏の高湿度の夜の結露量は適度な風があるとき最大になる。 降霜は地物がもっとも冷える場所ではなくて、適度な風があり適当に冷却する場所 のほうが最大の降霜量となる。 (完成:2011年1月20日)

●本章は、2010年2月28日に行った講義内容の要約であり、日本気象学会誌「天気」 第58巻(2011年)、p.556-p.558に掲載された内容である(印刷仕上げで2段組4 ページ)。

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。


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更新記録
2010年1月4日:目次の作成
2011年1月15日:ほぼ完成
2011年1月20日:55.4節に「注」を挿入して完成
2011年1月25日:55.6節に「注」を挿入



     目次
            55.1 自然の観察
            55.2 放射冷却量を決める4要素
            55.3 盆地冷却を決める2要素
            55.4 最低気温のタイ記録
            55.5 積雪都市の最低気温の急上昇

            55.6 放射冷却で氷をつくる
            55.7 夜露は風が適度の夜に多い
            55.8 あとがき 
            参考文献


55.1 自然の観察

自然と共に暮らしている人々の観察力は鋭く,彼ら農家や漁師の体験から学ぶことは多い.

1980年代のはじめ,私は本州一の最低気温(-35℃,1945年)が記録された岩手県藪川(現在は 盛岡市)を訪ね,アメダスの前身の観測所時代の委託観測に従事されていた深沢氏に,「朝の最低 気温が異常に低くなる条件」を聞くと,次の4条件を上げてくれた.

(1)月夜に起こりやすい
(2)夕方,煙突の煙が真っ直ぐに昇るとき
(3)冬の季節風で新雪が積もった晴天日
(4)テレビで,上空5000mに強い寒気がきたと放映される夜
こんな夜は、上空の寒さが地面を冷やすのだろうか?

この条件は,「(1)晴天の(2)微風夜で,(3)地表層の熱容量と熱伝導率が小さく,(4)大気全層が 低温・乾燥していて大気放射量が小さいとき」を表している.

今度は,豪雪地帯の岩手県沢内村に行ったときのこと,融雪が遅れて農作業を始めるのに困るだろ うと心配して,農婦に「春先の雪はどのように融けるか」を尋ねると,「雪は風で一気に融ける!」 という.

これは熱収支の原理に基づいており,融雪量は,ごく狭い範囲の条件では近似的に気温と比例関係に あるが,低温日は積雪面アルベドへの依存度が大きいのに対し,高温の融雪期は風速に対する敏感度 が大きくなる.農婦は,融雪期になると,強風日に雪が一気に融けることを知っていた.

55.2 放射冷却量を決める4要素

後述の4節に続ける前に,原理をまとめておこう.日没が近づくころ,日射量よりも地表面から失う 放射量(長波放射量,赤外放射量)が大きいので,地表面温度は下がる.冷気が流れてきても, 地表面で蒸発があっても,地表面温度は下がる.これら要因のうち,微風の晴天夜には長波放射の 役割が他に比べて大きく,“放射冷却で温度が下がった“という.

放射冷却は気温や地温の上昇・下降のうちで,もっとも単純な原理に基づく現象であり,諸現象を 理解する際の基礎となる.なお,夜間の地上気温は地表面よりも,通常,1~3℃高温となる.

放射冷却による地表面温度の下降量は,正味放射量に比例し,また地表面(積雪があるときは 積雪面) の熱容量熱伝導率の積に大きく依存する.さらに,ひと晩の冷却量は放射最大 可能冷却量を超えない.

正味放射量は地表面が大気に失う長波放射量と,大気から地表面に入る大気放射量の差のことである. 晴天夜間には,地表面が正味失う場合を正で表せば,60~100Wm-2程度である.正味放 射量は大気が乾燥していれば大きく,湿っていれば小さくなる.薄曇りでは50 Wm-2 前後,下層雲では20 Wm-2前後である.

熱容量は正確には体積熱容量(=比熱×密度)のことで,1mの物質を1℃加熱するに必要な, あるいは冷却するとき放出する熱量である.したがって,熱容量が小さい土壌ほど冷却速度は大きい.

熱伝導率は1mの厚さの板の両面に1℃の温度差があるとき,その板の面積1mを 通して1秒間に流れる熱量で表す.それゆえ,熱伝導率が小さい乾燥した土壌や積雪,特に新雪日は 下層からの伝導熱が少なく,地表面(積雪面)の冷却速度は大きくなる.

次に,熱容量と熱伝導率の両効果について考える.冷却が始まると同時に地表面直下には温度勾配が できて地中から地表面へ伝導によって熱が伝わるようになり,地表面の冷却を弱めるように働く. 日没の少し前を冷却開始の時刻とすれば,その時刻からある時間が経過するまでに地表面が放射に よって正味失った熱量は, 薄い地表層に含まれていた熱量(土壌が失った熱量)に等しい.この熱量は地表面の冷却量と 冷却が及んだ深さの積に比例する.

冷却が進むほど冷却の及ぶ深さも厚くなるので,冷却速度は夕方からの時間とともに小さくなって いく.

熱容量と熱伝導率の積が小さい乾燥土壌や新雪日は冷却量が大きいことになる.

放射最大可能冷却量は冷却量の限界値である.普通,夜間の長さは10時間前後だが,仮に夜間が 十分に長く続いたとして,地中からの熱伝導が無視できる放射平衡(正味放射量がゼロ)の状態 になるまでの温度下降量を放射最大可能冷却量と呼ぶ.

快晴日の放射最大可能冷却量は,水蒸気量が少ない極寒の条件で30℃程度,水蒸気の多い熱帯の 条件で10℃程度,日本の秋~春では概略20℃前後である.

微風夜の実際の冷却量は,夜間の長さが10時間程度では,積雪量が概略0.5m以上の新雪時は放射最大 可能冷却量の90~100%,古い積雪や乾燥した土壌で50~70%,湿った土壌で20~40%が目安である.

55.3 盆地の冷却を決める2要素

盆地では斜面で発生した冷気が盆地内に堆積し,いわゆる「冷気湖」が形成される.その結果, 下向きの大気放射量が小さくなることにより,冷却量は平地よりも2~4℃ほど大きくなる. この余剰の冷却量を決める要素として,盆地の深さ盆地の形状がある.

多くの盆地で観測してみると,冷気湖の厚さは盆地の深さにほぼ比例している.深さ100mの盆地 では100mの厚さ,1000mの盆地では1000mの厚さの冷気湖が形成される.冷気湖が厚いほど, 盆地の底では下向きの大気放射量が少なく(正味放射量が大きく)なるので,深い盆地ほど 放射冷却量は大きくなる.

一方,冷気湖全体の気温低下量は,冷気を生む斜面の総面積が広いほど大きく,また盆地大気の 総容積が小さいほど大きくなる.つまり,V字形盆地はU字形盆地(皿状盆地)に比べて冷えるべき 大気の容積が小さく,盆地大気全体の気温低下量は大きくなる.このように,盆地の形状も重要と なる.ただし,前章の放射冷却量を決める4要素に比べれば,盆地の深さと形状は2次的な2要素 である.

55.4 最低気温(-35℃)のタイ記録?

岩手県藪川を最初に訪問したときの話に戻そう.アメダス(標高680m)の隣の郵便局へ寄り, 委託観測時代に毎日9時に気象観測をしていた方(深沢氏)を教えてもらい,私が歩いて行こうと すると局員の日野杉勉氏は車で深沢氏宅まで案内してくれた.

役場引退後の深沢氏は酪農をされており,前記の「最低気温が異常に低くなる5条件」を話して くれた.また,1945年の-35℃の最低気温は現アメダス地点から直線距離で約12kmの北東, つまり岩洞湖から東向きに流れる丹藤川と,西向きに流れてきた向井沢川の合流点の町村にある 藪川小学校に設置されていた観測所時代の値であることもわかった.そこは現アメダスより標高 が43m低い盆地の底に相当する.

それから時は過ぎ,私が地球温暖化観測に適する田舎の観測所を探す目的で,藪川を3回目に 訪問した2006年7月11日,昔の藪川郵便局は新築され,日野杉氏は郵便局長になられており, 四半世紀前に私が最初に訪問したときのことをよく覚えておられた.

その2006年,藪川アメダスは雑草に覆われ気温観測用の通風筒は見えたが,雨量計は見えない状態 であった.この頃から,私は日本の観測所の実態を憂い,そのまま放置できないという思いになり はじめた.

藪川アメダス雑草写真
図55.1 岩手県の藪川アメダス(2006年7月11日)。

再び話を戻そう.私は1980年代の半ばまでには各地での野外観測や理論的考察も終えて,放射冷却 について整理できていた.さらに,最低気温の極値を起こすような条件,すなわち夕方の気温として 900hPa面の低温と快晴が起こる確率,大気全層の可降水量が極端に少ない日の確率などを調べて, 100年間に1回の確率で生じるような気象と積雪の条件(積雪深0.5m以上)を想定したとき, 地域ごとに予想される最低気温を次のようにまとめた(天気,1983).

標高700m以下として,100年間に1回程度の頻度で発生する地域ごとの最低気温の極値:
内陸多雪域
北海道北部 -43℃
北海道南部 -40℃
東北北部  -36℃
東北南部  -34℃
中部地方  -30℃
九州四国  -20℃


:5~10年の期間に1回程度の頻度で発生する地域ごとの最低気温の極値:
(内陸多雪域)
北海道北部 -37℃
北海道南部 -34℃
東北北部  -29℃
東北南部  -25℃
中部地方  -15℃
九州四国   -7℃

(沿岸少雪域)
北海道北部 -23℃
北海道南部 -20℃
東北北部  -17℃
東北南部  -15℃
中部地方  -10℃
九州四国   -7℃


アメダスの観測値は,現在ではインターネットで得られるが,アメダスが始まったころは各地方 気象台の発行する気象月報から得られていた.その時代に藪川で-35℃のタイ記録が掲載されていた. その日の広範の気象条件から,この記録は間違いと推論し盛岡地方気象台に問い合わせたところ, -25℃のミスプリントであることがわかった.

55.5 積雪都市の最低気温の急上昇

1988年に,旭川地方気象台長の三本木亮氏が日本気象協会発行の「気象」(32巻7号)に 「旭川の気象100周年を迎えて」と題して過去100年間の年最低気温の顕著な上昇を発表している. すなわち,1902年に-41℃の全国気象官署での最低値を記録したが1955年以降は-30℃以下は観測 されていない.

しかし田舎のアメダス江丹別(現在は旭川市)では最近でも-36~-38℃の低温が記録されており, 旭川の最低気温の急上昇は都市化によるものである.

旭川の年最低気温
図55.2 旭川における年最低気温の経年変化。

第55.2図は1889年から2010年まで120年余の旭川における年最低気温の経年変化である.私は現役の とき,講義でこの図を学生に見せて,都市化要因の何がこの急上昇に寄与しているかを考えさせて いた.

私は,自分で現地を調べるべく,定年後は観測所巡りの最初の訪問先を旭川とし,2004年10月に 数日間滞在して周辺の観測所における古い記録の書き写し作業と周辺各地の現地調査を行った.

旭川の観測所は数回の移転があることもわかった.旭川地方気象台の前身は1888(明治21)年 7月1日,上川二等測候所として北海道庁により創設.当時の建物は北海道の内陸開発のため, 囚人を使って岩見沢から忠別太まで道路を開くに際して作られたもので,その樺戸監獄署出張所 の一室で観測が開始された.現在の旭川大橋の西,旭川市神居町1条1丁目に上川地方に現存する 最古の建物として復元されている.ここでは,出没するオオカミを銃で追い払いながら観測が行 なわれ,1889年1月には-34.5℃の最低気温を記録したが,これは当時の日本の観測史上最低であり, 札幌に電話で報告しても信じられなかったという.

この測候所は1890年,現在の旭川市神居町1条4丁目に移転, 1898年に現在の6条10丁目 (中央警察署の位置,旭川東高等学校の西側,旧・旭川地方気象台のすぐ南西側)に再移転後の 1902年,-41℃が観測され,前述の-34.5℃の記録は更新された.

さて,旭川の年最低気温の急上昇が都市化要因のうち,何が寄与しているかを探るために他の都市 について調べると,東京のほかは,いずれも雪国の青森,札幌,秋田,福島,盛岡,山形などで 急上昇している.

都市では時代とともに道路除雪が広範囲に及び,積雪(断熱材)の下の地中からの伝導熱の放出 を促すことになった.この伝導熱は都市全域からではなくても,10~20%程度の道路面積から出 てくれば地表面の放射冷却は緩和され,地上気温も低くならない.

除雪の効果について放射冷却量を見積もると,年最低気温の上昇傾向はほぼ説明できる.最近, 雪国の冬の最低気温は上昇し暮らしやすくなった半面,従来は死滅していた病害虫が越冬する例 も知られている.

雪国の除雪から連想することは,広範に海氷域が分布しているとき,海洋・大気間の熱交換は 小さいが,その一部が割れて水面が現れると,多量の熱が海から大気へ輸送される現象に似ている.

55.6 放射冷却で氷をつくる

水を入れた容器を屋外に設置し,放射冷却を利用して天然氷を作ることができる.氷の熱伝導率は 比較的に大きいことから, 気温が氷点下になっても氷面温度は-1℃~0℃を保ち(ただし,氷の厚さが数cm以下の範囲), かつ水温も0℃を保つ.それゆえ,氷面が失う正味放射量は大きいまま, ほぼ一定値を保ち, 氷の成長速度も一定値で進む.氷面温度がひと晩にわたりほぼ一定であることは一般の土壌面温度 と大きく異なる点である.

私が気象予報士たちの講習会で放射冷却の熱収支を話した後日,関隆則氏がひと冬にわたり毎晩の 結氷観測の結果を送ってきた.面白いので取り上げたい.

屋外の広いところに設置した容器(直径=240mm,深さ=40mm,側壁と底面は断熱)に 水深=30mmの水を入れて放置し、毎朝氷の厚さを測った.野外の気温も観測している.

夜間の正味放射量が例えば92.8Wm-2とすれば,微風条件では,この熱量が近似的に氷の凍結熱に 等しくなるので氷の成長速度は10時間につき10mmとなる.ここで気温が氷点下の風が吹けば, 氷面から顕熱も失われ氷の成長速度は風速に比例して大きくなる.


:氷点下の風が吹く場合、もし容器の大きさが大きくなると熱交換がされにくくなる (熱交換係数は容器サイズが大きくなるほど小さくなる)ので、氷結量の風速依存性は弱くなる。

:結氷観測の資料解析は「研究の指針」の 「K47. 結氷量の熱収支解析」に掲載してある。


ひと晩の結氷観測の応用として,数日間連続して氷の厚さが増え数cm以上になれば,氷面と気温 の差は小さくなり正味放射と顕熱で失う熱量がともに小さく氷の成長速度はしだいに小さくなって いく.この原理に基づくならば,南に山があり日中の太陽直射光が射し難い場所,しかも夜間の 正味放射量が大きい場所を選べば,天然氷が大量に作れることになる.

かつて私は長野県の野尻湖で数年間にわたり湖面蒸発を観測したことがある.湖面が結氷する年と しない年があった.平均気温が同じ年でも,日中の天気と夜間の天気など偶然性がうまく重なった ときは,湖面の広範囲が結氷する.すなわち,日中は曇天(降雪も含む)で夜間は晴天で薄い氷が でき,朝方の降雪で覆われ氷面が白くなったとき,日中に多少の日差しがあっても溶けず, 次の夜間に晴天であれば氷の厚さは増加していく.結氷面積が広がれば,強風が吹いても波で 破壊されずに,氷はひと冬にわたり残ることになる.

55.7 夜露は風が適度の夜に多い

土壌面の放射冷却では,地表面温度が下がると下層からの伝導熱があるため,冷却は弱められる. しかし,草や植物の葉面の冷却は幹や茎を伝わってくる下からの伝導熱が微小で冷却は大きくなる.

仮に大気と葉面間の顕熱と潜熱(蒸発または凝結)の交換がゼロの場合,葉面は近似的に放射平衡の 温度となる.現実には無風でも葉面の周囲には小さな循環流(高温物体の周りに発生する対流と 逆向きの流れ)ができて顕熱と潜熱の交換が起こる.したがって,気温と葉面温度の差は,放射と 顕熱と潜熱の3つの熱収支が釣り合うように決まる.

晴天夜間には,気温と葉面温度の差(温度差)は風速,葉面の大きさ,大気の相対湿度に依存し, 最大5~10℃ほどになる.

空気が乾燥した夜は葉面に結露せず,温度差は大きくなるが,湿度の高い夜は水蒸気が葉面に 結露し,その際の潜熱が温度差を小さくする.

夜間の結露量はいくらになるか? 風速がゼロでかつ葉面の周囲で循環流も発生しない完全無風の 状態では結露はゼロであるが,風速が強い時は大気と葉面の顕熱の交換が大きく,葉面温度は 下がらず結露も生じない.しかし,適当な風速が吹く夜は,葉面も冷えて温度差が適当な値となり 最大の結露量が生じる(近藤,2000:地表面に近い大気の科学,図5.7下).

この適当な風速は相対湿度が高い夜ほど強く,相対湿度が低くなるにしたがって弱くなる. 水蒸気の多い夏の朝,草むらを歩くと夜露で足元がびっしょりと濡れた経験者は,読者の中にも いるだろう.

温度が氷点下では降霜になる.霜は地物や葉面がよく冷えた場所に降りるが,降霜量がもっとも 多いのは,その付近で最大に冷却した場所・地物ではない.

55.8 あとがき

放射冷却による凍霜害の研究の歴史は古い.東北大学で気象学の研究をして欲しいと,1918年に 測候所風の気象観測室を寄贈したのは蚕糸業を営んでいた佐野理八である.この建物の設計は, 兼任教授・岡田武松(のちの第4代中央気象台長)によるとされる.明治・大正時代に大きく発展 した日本の産業の一つに生糸があり輸出品(金額)の約1/3 を占めていた.

古い論文を探すと,恩師・山本義一と斉藤隆幸が1954年に防霜策としての煙による長波放射の 透過率の実験的研究の論文を出している.これは後にエアロゾルによる日射と大気放射への影響へ とつながっていく.私自身は1950年代後半,学部4年生から大学院修士課程にかけて,地面から 高度100mまでの大気各層について大気放射の吸収・透過・射出による気温の時間変化の数値計算 を手回し計算機によって続けていた.それから4半世紀後の1980年代前半,放射冷却の本格的な 研究へとつながった.

参考文献

放射冷却や結氷、降霜などについての詳細は、以下に示す章と参考書から学ぶ ことができる。

参考となる本ホームページの他の章:
「M50. 放射冷却の演習問題」:2010年2月28日に日本気象予報士会 北関東支部主催で開催した講演会の内容。放射冷却の基本を理解するために熱収支式を解く演習を 行った。

「M52. 放射冷却の演習問題(解答)」:同上の演習問題の解答、 および応用問題について参加者が発表した解答。

「2.放射冷却と盆地冷却」:盆地冷却の解説。凍霜害防止の原理、 雲があるときや風が吹くときの放射冷却、盆地の冷却や冷気湖の深さ、山腹の温暖帯、盆地冷却の 解消過程についての説明。

「写真の記録」の「33.旭川の都市化と気温上昇」:上川盆地 周辺のアメダス訪問記と、旭川地方気象台の前身・創設時代の観測所跡、旧気象台、現気象台。

「研究の指針」の「K47. 結氷量の熱収支解析」:実際に観測 した日々の結氷量を熱収支的に解析した研究の指針となる内容。

参考書:
○近藤純正、1987:身近な気象の科学.東京大学出版会、pp. 198.
5章「本州一寒い村」ー放射冷却の実例と原理、盆地が冷えやすい模式図、極低温、作物の凍霜害の防止原理

○近藤純正、2000:地表面に近い大気の科学.東京大学出版会、pp. 324.
2章「放射」ー日射、大気放射の推定法、放射温度計による観測法
4章「気温と地温」ー積雪深と冷却量の実例、気温や地温の鉛直分布の時間変化
5章「熱収支と気象」ー結露量・冷却量と風速の関係
6章「斜面風と局地循環」ー冷気湖

○近藤純正(編著)、1994:水環境の気象学.朝倉書店、pp.350.
4章「日射と大気放射」ー観測器、放射の推定式
6章「地表面の熱収支の基礎」ー平坦地・盆地・傾斜地・人工熱があるときの放射冷却の理論式



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