57. 函館海洋気象台

近藤 純正

北海道函館にある函館海洋気象台は創立以来何度かの移転と庁舎建て替え をしてきた。これらに伴って年平均気温が不連続的に変化している。 今回、2006年6月8日は、特に、1992年の庁舎建て替えによって、なぜ年平均 気温が0.25℃も下降したか、その原因を探るために訪問した。 (2006年7月30日完成)

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  	  もくじ
		(1)はしがき
		(2)1980年頃の周辺環境
		(3)2006年6月現在の状況
(1)はしがき
今回の大きな目的は、函館海洋気象台が1992年に新庁舎建て替えによって、 年平均気温が周辺観測所に比べて0.25℃も低下した原因を探ることにあった。

前もって予報観測課長・隈部良司さんに連絡し、旧敷地内と新敷地内の庁舎・ 露場の位置関係など調べてもらってあったが、その図面だけからは0.25℃の 気温下降の原因は明らかではなかった。

筆者は、昔の図面に記載されていない敷地内の植栽が新庁舎建設の際に伐採 され、その結果として露場面付近の風通りがよくなり気温が下降したのでは ないかと想像して出かけた。とにかく現地を見ること、そして過去の写真 を見せてもらうこと、過去を知っている方に話を聞き、 0.25℃下降した原因を掴みたい。

「地球温暖化問題」について2時間の談話会で活発な質疑応答・議論を行い、 また古い写真を見せてもらったりした結果、庁舎建て替え直前まで露場の 東側30mほどの距離に生えていた桜が伐採されたこと、新露場面が敷地面 レベルより若干高くなったこと、庁舎と露場との最短距離が20mから35mに 大きくなったことに原因があると考えるようになった。

その大きなヒントは1990年頃撮影された桜の写真1枚であった。 それは本ホームページ「研究の指針」の 「K22. 函館海洋気象台改築に伴う気温の不連続」の写真3である。

函館海洋気象台は1940年に海岸町から現在地へ移転してきて以来、周辺 アメダス等と比べて年平均気温が約1℃上昇している。この原因は気象台 周辺に人家が密集してきたことによると考えたので、周辺環境の視察を することも今回の訪問の目的であった。

(2)1980年頃の周辺環境
用意してくれてあった過去の写真を拝見し、コピーをここに掲載する。 現在地に1991年まであった旧庁舎は平屋建てで、測風塔は庁舎の北東端 にあった。敷地は100m余平方であり、その中には一戸建て宿舎も10余戸 もあったようだが、だんだん解体されてきたようである。

以下の写真は1980年頃に撮影されたものである。この時には、すでに東側 を南北に走る赤川通りが拡幅され舗装されていたことがわかる。 周辺の住宅は2階建て、遠くには平屋建てに見える住宅もある。 ビルの数は少ない。

函館露場と庁舎(1)
写真1 函館海洋気象台の露場と庁舎(1)、1980年ころ 函館海洋気象台提供
(左)露場の南側から北向きに撮影、(右)露場の東側から北西方向に撮影。


函館露場と庁舎(2)
写真2 函館海洋気象台の露場と庁舎(2)、1980年ころ 函館海洋気象台提供
(左)庁舎と露場の中間点から南向けに撮影、(右)測風塔から南向けに撮影


函館周辺(1)
写真3 函館海洋気象台の周辺(1)、1980年ころ 函館海洋気象台提供
(左)測風塔から北向きに撮影、(右)東向きに撮影。


函館周辺(2)
写真4 函館海洋気象台の周辺(2)、1980年ころ 函館海洋気象台提供
(左)測風塔から南東方向に撮影、(右)北西方向に撮影。


(3)2006年6月現在の状況
1980年の写真と比べると、ビルも多くなり、ごく最近完成したと 思うビルもある。気象台が1941年に現在地に移転したころは人家も少ない 田舎であったが、しだいに都市化が進んでいるようである。

函館の北と東
写真5 函館海洋気象台屋上からの眺め(1)
(左)北方向、(右)東方向。


函館の南と西
写真6 函館海洋気象台屋上からの眺め(2)
(左)南方向、(右)西方向。


露場の北
写真5 函館海洋気象台屋上から見下ろした写真(1)
(左)露場の北側、(右)露場。


露場の南
写真5 函館海洋気象台屋上から見下ろした写真(2)
(左)露場の南側、(右)さらに南側。


地元で育ったというタクシーの運転手によると、20~30年ほど前は 写真5(左)の中央のやや遠方に見えるスーパーがこの付近で唯一の 大型建築物だったという。

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