2

 「まだらひれ」は息が苦しくなって
空気を吸いに水面に上がってきます
朝です
でも今日はいつもの朝と違います
なんだかさみしくなるお天気です
「まだらひれ」たち、恐竜の仲間は
目をトッポリと覚ましてからお昼までは
お日さまを浴びていっぱい熱をためて
充分からだを暖めないと
よく動くことができないのです
「まだらひれ」が欠伸をして水の外に出たときも
もうみんなは日向ぼっこをしようと
いっぱいいっぱいタポタポ浮かんでいました
でも今日は変です
お日さまが、出ていません。

 「まだらひれ」の仲間は、曇り空でも
お日さまがどこにあるか耳で分かります
雷のほかはお日さまがいちばんビキビキしています
今日もお日さまがどこなのかは聞こえます
でも、光も、ヌクポッカもやってきません
みんなはさみしい声で啼いています
「まだらひれ」も恐くて恐くて啼きました
お父さんとお母さんが来てくれました
二人もゴバゴバ震えています
 どうしてお日さまが暖かくないの?
 どうして、恐いの?
お父さんは空を見つめました
お母さんは「まだらひれ」をデラデラ舐めました
誰にもなにも分かりません。

 次の日もお日さまは出ません
その次も、その次も冷たい黒い雲ばかり
「まだらひれ」たちはだんだん動けなくなってきました
お日さまが何日も出ないので
からだを暖めることができないのです
小さな魚がチュピッと動いても
ちっとも追いかけられません
全然泳げません
「まだらひれ」のお腹はボグルポゴル鳴りました
お父さんもお母さんもどこに行ったか分かりません
涙がデリョデリョ出てきます

夜です
厚い真っ黒な雲をとおして
小さな星たちの声が聞こえます
「まだらひれ」は「オリオン座」の声を聴きます。

 次のページ
HOME >  「月がもっと近かった頃」TOP >  目次 > このページ