まだらひれ と オリオン

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  今から3つまえの文明の そのまえの
オリオン座がやっと今の形になった頃…


 「まだらひれ」は水の中で泳ぐ 恐竜です
左の前脚に斑があるので「まだらひれ」です
「まだらひれ」には耳たぶがありません
耳の穴もないみたいです
でも、少しだけ、ヘコッ、と、へこんでいます
「まだらひれ」はこのへっこみで
水の中の超音波を聴き分けます
お母さんの声もお父さんの声も
人間の耳には聞こえない高い高い音です
「まだらひれ」は湖をザシザシ泳ぎながら
みんなの声を聞いています。 原始の湖を泳ぐまだらひれ

 それだけではありません
どこか遠くで恐い雷が落ちても
電気のビキビキが聞こえます
夜は小さな星たちのパチポチが
空いっぱいに聞こえてきます
それから、近くで動く小さなものが
どっちに向かって泳いでいるのかも分かるのです
おいしそうな魚がいると
「まだらひれ」はグリュウーンと潜って
ワンブフと飲み込んでしまいます。

3. そんなにそんなに大きな恐竜なのに
背中は湖の底と同じ黒っぽい緑
お腹は空のような明るい色なので
小さな魚たちにはよく見えません
それでうっかり食べられてしまいます
ちょっと残酷かも知れませんね
でも「まだらひれ」は、食べた小さな魚のぶん
湖をシュリシュリ泳ぎました
夜になってもシュリシュリ泳ぎたくて
お父さんに叱られます
シュリシュリ泳ぎながら、眠ってしまいます。

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