要注意の食べ物など

 食べるとつらいもの、食べても意味のないもの、食べない方が良いもの、と、いろいろ制約が出て来ます。「つらい」というのは、「もたれる」「気持ちが悪くなる」「腹痛を生じるもの」「ダンピングや低血糖症状を起こすもの」などです。
 しかし、ほとんどは、術後数年で元に戻ります。辛抱辛抱。僕は10年経った今では、ほぼ元通りの食事をしています。羨ましいだろ。早く治ってみい。

繊維質

 繊維質は第一に気をつけなければいけないものです。野菜のうちでも蓮根や牛蒡、そしてこんにゃく、貝類、イカ・タコなどです。一般にダイエット食品と呼ばれるものは我々には無用です。僕はどうしても食べたくて「石焼き芋」を買ってもらって食べ、激痛で救急車という事態が一度ありました。じゃがいもは大丈夫です。
 とはいえ、繊維質は健康には欠かせません。適度に見極めながら摂りましょう。

油・脂肪

 油・脂肪も大敵です。ものすごくもたれます。普通の人でももたれるのだから我々ならなおさらです。以上から、「蓮のてんぷら」や「さつまいものてんぷら」は苦しみたい人には最適、ということが分かります。チョコレート、マーガリンはほぼ「油」です、残念ながら。
 てんぷら、フライはしばらく食べられないのか? 何ヶ月かは無理でしょうが、実はいい方法があります。どっかに書きます。探してね。

炭水化物

 炭水化物、これも以外とダメなのです。摂り過ぎると、ダンピングを起こします。特に固いご飯はたちが悪いようです。食べている最中にすぐにもたれてそれ以後食欲が失せます。あとは固めの麺も同じ理由でダメです。お米は軟らかめに炊き、麺は少々湯で過ぎくらいの感触で食べましょう。
 「殻のまま挽いた穀物」はかなりの激痛だと思います。僕は、なんだか蕎麦アレルギーになった模様です。もう食べられません。手術とは関係ないと思うけど。

糖分の多いもの・糖度の高いもの

 多量の糖分も危険です。後述する低血糖を起こします。高血糖だろうって?これが違うんです。ま、後で。

刺激物

 当然のように刺激物。特に辛いものは厳禁です。食べても良いですが、激痛です。僕の経験でいうと「唐辛子」「ワサビ」はまあまあいけますが「(インド風の)カレーの中の何か」「ニンニク」は結構来ます。辛くなさそうでも濃いめの欧風カレーとかは要注意です。

炭酸

 炭酸飲料。通常、コーラやビールの炭酸は、胃に溜まり、「ゲップ」として吐き出されます。が、我々には、溜める場所がありません。きついっすよ〜。

多量の水分

 水分の多いもの。適度の水分で湿らせてから食事を摂ることは重要ですが、多量に取ると良くありません。ダンピングなどを起こしやすくなりますし、大体カロリーの無いものを摂取するよりは高いものを取るべきです。味噌汁、鍋物やつゆ・スープで食べる麺類がいけない、ということではなく、「あまり液体を飲まないように」という意味です。

なまもの

 なまものは普通、大概の細菌類が胃で「消毒」されますから、胃のない我々には大敵です。ちょっとした腹下しで済むものが生命の危険に関わるかも。夏場は特に注意しましょう。

独断に満ちた具体的食品例

できれば避けたい食品等注意して食べたい食品等適度な量を見極めたい食品等
蓮根
牛蒡
こんにゃく
さつまいも
山菜類
一部の貝類(牡蠣は良い)

その他繊維質の多い野菜
ベーコン
脂身、鶏の皮
ナッツ類
無意味に辛いもの
ご飯(硬さ)
麺(硬さ)
洋菓子(脂肪分と糖分のwパンチ)
辛いもの
てんぷら
フライ
チャーハン(油分)
寿司
刺身
チョコレート
水気
野菜一般
果物
アルコール
カフェイン飲料(特に濃い紅茶)
お茶(理由不明。僕は低血糖を起こす)
素麺(食べやすいので逆に
   食べ過ぎて苦しむ)

 さて、胃がない(小さい)と、吸収される栄養に影響が出て来ます。消化吸収がほぼ不可能になるものもあります。

ビタミンB12

 ビタミンB12は、胃の底部から分泌される物質と結合し、回腸の粘膜から吸収されます。従って、胃の摘出手術を受けると、ビタミンB12の摂取はまったく不可能となります。もっとも困るのがこれです。
 全摘の人は、術後数年掛けて体内のビタミンB12のストックを使っていきますが、いつか枯渇します。約5年。個人差がかなりあります。
このとき「貧血」となります。下の鉄の不足によるものと違い、「悪性貧血」と呼ばれるのです。僕はきっちり10年目に来ました。
ビタミンB12の錠剤などを服用してももちろん無駄ですから、経皮投与となります。つまり、生涯、注射しなければなりません。
自分で経皮投与できるような器具と法律等の整備を期待しましょうか。

鉄分

 鉄分は胃で多く吸収されます。従ってビタミンB12と同様、いつか不足を来します。これが「鉄欠乏性貧血」です。つまり、胃の摘出手術を受けると、遅かれ早かれ貧血になる、ということは覚えていて下さい。それもちょうど健康になったかな、と感じる頃、なのです。
ただし、鉄分はまったく吸収不可ではありませんから、意識して摂るようにしましょう。レバー、卵黄、ゴマ、牡蛎、黄な粉等。

カルシウム

 胃を取った後には虫歯がひどくなります。メカニズムは分かりません。しつこすぎるほどの歯磨きはもちろん、カルシウムもどんどん取りましょう。カルシウムの吸収を補助するビタミンDも忘れずに。キシリトールと同様の作用で虫歯ができにくい状態にしてくれるチーズは、カルシウムも豊富です。スキムミルクも最高です。マーガリンは単なる油の固まりですから要注意。

高蛋白食品

 卵は半熟くらいで。生は吐くほど消化悪し(僕は今でも吐く)。乳製品は全般的に優等生です。胃の粘膜を保護する働きもあります。冷たい牛乳はダメ。豆そのままでは繊維質が多くちょい苦しいですが、豆腐、納豆、湯葉は繊維が壊れているみたいなので優等生です。でも水分がほとんどの豆腐よりは納豆が良いでしょうね。
 その他の魚・肉では、術後すぐの場合、白身魚、マグロの赤身(トロは不可)、鮭(塩辛いのはダメ。もう分かりますね)、鶏のささみ、豚(脂身の少ない部位)等が良いようです。牛肉よりはビタミンB群を多く含む豚肉ですね。ここにあげた魚類と牡蛎以外の魚介は、ちょっと経ってからにしましょう。

どんどん食べよう、まとめ編

鶏のレバー  
すり胡麻
チーズ等の乳製品     
スキムミルク
半熟卵
豆腐
納豆
湯葉
白身魚    
マグロの赤身      

牡蠣
鶏のささみ
豚肉
キャベツ
プロっコリー
にんじん
カボチャ
ジャガ芋
飴・キャンディー(緩慢な糖分補給)

How to Eat

 どうやって食べるかも重要です。
 ・間隔 可能ならば、「腹減った」と感じた時に食べましょう。1日3食は妄想です。4食でも8食でも良いのです。
 ・スピード ゆっくり。立ち食いはもう過去の遺物です。良く噛んで、味わって食べましょう。
 ・環境 リラックスの一言。天上天下唯我独尊です。
 ・水分 前にも述べましたが、取り過ぎると具合悪いですよ〜。最初に湿らす程度に。
 ・食後 何があっても体を休めましょう。可能ならば横になって。あまり頭下げると吐きますが。