==== 1997年11月のお話し ====


 現在、TBS系で22時より放映されている金曜ドラマ「青い鳥」であります。
 トヨエツこと豊川悦司さんの感情のないしゃべり方に感情が込められているあの独特の演技と、決して上手ではないけど大人の愛らしさが溢れる夏川結衣さんの笑顔と、ここでもまた特有の性格俳優が型にはまっている佐野史郎さんの異常さと、脇を固めるその他諸々さんの味わいで、とっても面白い差作品に仕上がっていると思います。勿論、野沢尚さんのテンポのいい脚本に因るところも大きいですが。
 さて、中央本線(だと思います)の清澄駅(とその町)がドラマ前半の主舞台でありますが、ドラマ第5章からご存じの逃避行となりました。豊川悦司さん演じる柴田理森が、夏川結衣さん演じるかほりとその娘の少女役鈴木杏ちゃん演じる誌織と共にJR線を乗り継ぎながら、北へ北への旅になるのです。そして、佐野史郎さん演じる広務が後を追うという筋書きですね。
 で、その第5章(放映日11月7日)を見ながら、はたと感じることがあり、そのルートと時間を検証してみることにしました。

 清澄駅ですが、当然のこととしてそんな駅は実存しません。以前にかほりが甲府のデパートに買い物に行くのに上り電車を利用していますし、駆け落ち(といいきるには単純すぎますが)した電車は下り列車で、誌織が諏訪湖を目にしていますので、その間に清澄駅が位置することになります。また、後日の章で隣の富士見駅云々という会話が出てきますので、すずらんの里駅か信濃境駅が怪しいのでありますが、ドラマのように、特急が停車するようにと観光の町興しをしているかどうかは、疑問であります。清澄が長野県であることは間違いなのですが、確定できないところです。ここでは、出発駅は、小淵沢駅としてみました(時刻の仮定としては問題ないでしょう)。
 そして、ドラマを見ると季節は夏で、その日は多分8月でしょう。その前に、誌織が夏のキャンプに行っていますので夏休みも中盤の頃だと思います。対象年の仮定として、ロケが行われたであろう今年の夏として、JRの時刻表を紐解いてみましょう。

 まず、秋田までのルートですが、直江津経由であることは間違いありません。これは、その前の章での理森とかほりの仮想での会話でも出てきますし、広務が推測するために開いたノートPCの地図表示ソフトでもそれが現れています。
 で、朝、清澄駅を発つと、夜には秋田に着けてしまうのですね。

小淵沢 発 9:14 (429M) 9:42 (431M)
松本  着10:2010:56
松本  発11:11 (しなの7号)11:38 (2533M)
長野  着12:0012:41
長野  発12:18 (339M)13:11 (341M)
直江津 着13:4914:53
直江津 発14:58 (白鳥)
秋田  着20:06

 かほりは、「駅長さんがいれば、迷わないし、安心」などとノー天気なことを言って、ルートは理森に任せっきりです。それでも、流石にJR職員の理森だけあって、ポケット時刻表の助けも借りて、ナビゲートはしっかりしています。
 信越本線と羽越本線を使って、日本海沿いに北上していますが、これはドラマを見ても特急列車であります。該当するのは、白鳥しかないので、これでしょう。直江津までは、時間的に余裕もありますし、普通列車を乗り継いでいっても問題なしです。
 夜に秋田の駅舎を背景にした場面がありましたから、まあ、こんなところでしょう。

 問題は、その次の日の行動です。
 ドラマを思い返してみると、この日の理森は大変に忙しいのです。
 熱を出してしまった誌織を朝一番で病院に連れていって、いつ思い出したか意識していたのかはわかりませんが、その後、小岩井で牧場を営んでいる実の母に会いに行って、話すとはなしに話を付けて秋田に戻って、かほりと誌織を連れて再び母のところへ身を寄せているのです。
 まず、秋田から小岩井までのルートですが、

パターン1-1
秋田雫石小岩井(列車名)
10:2711:45こまち10号
13:0113:06834M

パターン1-2
秋田盛岡小岩井(列車名)
10:2712:01こまち10号
12:1412:20831M

パターン1-3
秋田盛岡小岩井(列車名)
11:5613:23こまち46号
13:4413:59835M

 といったところでしょうか。
 誌織を病院に連れていって、前夜宿泊した旅館に戻って、「ちょっと用を足してくる」と出かけたのですが、田沢湖線に乗り込む前に郵便局によって当座のお金もおろしていると考えられるのです。
 ここで、時刻表を眺めながら、あららと感じました。秋田新幹線である「こまち」が開通してしまっているのです。その影響でしょうが、普通列車の本数の少ないこと。それ故に、どうしたって、小岩井駅に行くにも、この「こまち」を利用しないことには、融通が利かなくなるのです。
 秋田発10:27発の列車に乗れ込めたとは思えないのですが、どうでしょうか。何れにせよ、盛岡まで行ってしまって戻った方が早いのです。
 この後、小岩井駅からバスに乗って、母の居る牧場へ行っています。バスから降りるシーンがありましたから、確実です。そこで、照れくささを隠しながらも、20年ぶりにリリィ演じる母に再会しまして、話しを交わして身を寄せる算段になるまで、どのくらいの時間でしょうか。母の運転する車で送ってもらっても、再び小岩井駅に戻るのに、2時間はかかったのではないでしょうか。

パターン2-1
小岩井盛岡秋田(列車名)
14:5215:03838M
15:2016:45こまち3号

パターン2-2(NG)
小岩井盛岡秋田(列車名)
16:2416:39842M
16:2818:09こまち29号

パターン2-3
小岩井雫石秋田(列車名)
16:2416:30841M
17:0318:30こまち49号

パターン2-4
小岩井盛岡秋田(列車名)
16:5917:15846M
17:4219:19こまち51号

 ここでは、時刻によって、盛岡経由で秋田へ戻るか、雫石で乗り換えるか、悩むところです。
 秋田駅からかほりと誌織の待つ旅館までどの程度の距離があるかはわかりませんが、理森としては、途中で電話を入れて駅まで来てもらっておく方が、時間のロスがありません。それにしても、病み上がりの誌織と荷物を全部持つかほりも、大変というところです。

パターン3-1
秋田盛岡小岩井(列車名)
17:2118:56こまち58号
19:1119:22849M

パターン3-2
秋田盛岡小岩井(列車名)
18:1019:43こまち60号
20:1720:28851M

パターン3-3
秋田盛岡小岩井(列車名)
19:4521:35こまち64号
21:4021:51853M

 夜の帳もおりた小岩井駅のホームに降り立つ3人ですが、途上で母に連絡を入れたのでしょう。車で迎えに来てもらっていましたね。
 さて、それぞれについて考えられるパターンを列挙しましたが、ズバリ推測するに、パターン1-3→パターン2-4→パターン3-3というところでしょう。ポケット時刻表を片手にしている理森とはいえ、ひとつ間違えればアウトといったスケジュールです。他にバス路線の利用や、お金にある程度の余裕があるので、もしかしたらタクシーなぞを利用したルートも考えられるのですが、JR職員であった理森の立場を考えて、除外視しました。
 それにしても、小岩井駅にたどり着くために、最新鋭列車の「こまち」に乗って、目的地の小岩井駅を何度も通過しなければならないというもの間抜けなものです。
 えっ、そもそも今年の夏という仮定がおかしいって。それをいったらはじまりませんですよ、奥さん。

 この後、彼ら3人は、青森県八戸、そして北海道へとさらなる愛の逃避行を続けるのでありました。そして、あの道南での惨劇が・・・。

 L'oiseau Blue ....



あきやひろゆきのホームページ / akiya@my.email.ne.jp