〓〓〓〓 睦 月 の 章 〓〓〓〓


01)   1日  「ゴジラVSキングギドラ」  (日劇東宝)        1991年 日本
        ☆☆☆
 ゴジラの影響というのは、幼年時代に毎回(夏と冬の、"東宝チャンピオン祭り"と呼ばれていた)、駅前のデパートの最上階にあった映画館(悲しいかな、学生時代に閉館になってしまいました)に欠かさず観に行っていた頃に根付かされたもので、然るに、大人になった今でも、つい足を運んでしまうものなのです。それも、伊福部氏の聞き慣れた音楽で、大森一樹監督再びというのならば、なおさらです。
 キングギドラは緻密に再現されていて、(弱いながらも)それなりによかったのですが、設定やストーリーに、もう少し説得力が欲しかったところです(それでも、メカキングギドラでの復活は意外性がありました)。女優では、中川安奈がとてもいい演技をやっておりました。


02)   2日  「さよなら、こんにちわ」  (TV)           1990年 日本
        ☆☆
 深夜の放映です。この類の日本映画の小品は、エンターティメント性は欠けますが、なかなか質の高いものがあります。南果歩と佐野史朗が主演でして、なかなか初々しい感じの演技をしているのも滑稽でおもしろい。ちょっと変わった形の恋愛(?)映画です。


03)   4日  「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」  (VTR)     1985年 スウェーデン
        ☆☆☆☆☆
 子供を主人公にした映画は古今東西多々ありますが、本映画のようにひとりの少年の視点のみから語られる作品というのはそう多くはありません。気づきましたでしょうか、本映画では、主人公イングマルが関与しないシーンは存在しません。この種の映画にとってみれば(映画に限らずでしょうが)、これはひとつの賭なのです。すなわち、"どれだけ鑑賞者を自らの作品(世界)に引きつけられるか?(感情移入させられるか?)"  一言でいってしまえば、それは"共感"という言葉になるのでしょう。この種の映画の観客は、自らがイングマル少年なのです。ですから、イングマルになれない観客は、その行動・考え・想いも理解はできません。そして、その流れは淡々と(ときには難解に)語られるものなのです。
 ですから、SFXを駆使した・ストーリー性のある・テンポの早い、興業性を加味したエンターテイメント作品とは、対角線上に位置します。故に、本映画のような作品を公開までもっていくというのは難しいものですね。下手をすると、プロデューサーや監督のひとりよがりになってしまいますから・・・
 この作品、「MITT LIV SOM HUND」のテーマを敢えて書いてしまいますと、"母親への愛情、多感な少年時代、生と死(死と生)" でしょう。
 作中には、イングマル少年を巡って様々な人たちが登場しますが、おもしろいことにひとつ気がつきました。登場人物の作品・シーンを占める登場時間・登場回数は、イングマル少年の記憶の深さ、愛情・想いに比例するのです。例を挙げますと、母親は回想場面を含めてそれこそ何回もでますが、父親や兄のシーンは必要分量だけです。また、実家近くのガールフレンドよりも、叔父家滞在中にボクシング・フットボールを共にした彼女のシーンほうが、ずっと多くを語っています。
 それにしても、登場人物はこういう作品にしては愉快ですね。叔父さん・叔母さんをはじめ、女性用下着広告を読ませる一階の老人(ギリシャ人家族に入れ替わってしまったのは残念です)、いつも屋根を修理しているおじさん、緑髪の少年とその発明好きの父、気だてのいいガラス工場のお姉さんとそれをヌードモデルにする芸術家、ボクシング・フットボールが得意な女の子・・・
 夏に叔父の家へ。そして、冬に再び叔父の家へ。スウェーデンの風景と季節が作品に深みを与えます。
 星空をバックにしたイングマル少年のモノローグ、スプトニーク1号に乗ったライカ犬に対する疑問と悲哀感(作中に何回か現れるこの場面がいいですね、実に意味深い)。
 イングマル少年の母親への記憶・愛情。ベッドに横たわり本を読もうとする母。海岸の砂浜で一緒に過ごした母・・・愛犬シックンと母親の死が関連するかのように(また重複するかのように)、そしてあくまでその描画は、間接的に、暗示的に。
 フットボールチーム仲間の無二の親友の彼女。男勝りの彼女。胸の膨らみを気にする彼女。冬の土曜日のパーティで嫉妬する彼女。ボクシングで対決する彼女。
 その彼女が、雪が溶ける頃、スカート姿の少女に変身していたのには新鮮でした。
 そして、季節はやはり春だったのです。


04)  14日  「リコシェ」  (試写会・ヤクルトホール)        1991年 アメリカ
        ☆☆
 設定はよくあるような復讐劇ですが、エンターテイメントのジョエル・シルバー(ダイハードなどでおなじみ)が製作をやっているだけあって、結構とアクションが主体です。それだけでも、はらはらどきどきとするのですが、作品に深さがないのは残念です。どうしても、よくありがちのストーリー展開になってしまっているのです。
 共演者のジョン・リスゴーは、「ガープの世界」にも、出演しているみたいですね。


05)  18日  「告発の行方」  (TV)                1988年 アメリカ
        ☆☆☆
 そういえば、ロードショー時にちょっと話題になりましたでしょうか。レイプとその裁判を扱った内容です。こういう設定で、ストーリーがしっかり成されているのですから、アメリカという国は理解(?)がある国です。
 被害者の主人公の女性は、最近売れている、ジョディ・フォスターなのですね。


06)  19日  「ロケッティア」  (丸の内ルーブル)          1991年 アメリカ
        ☆☆☆
 可能性としてのもうひとつの方向。それがロケッティアなのでしょう。でも、第二次対戦前の当時、各国で背負う形のロケットの研究をしていたというのは事実ですし、あながち、安っぽいB級SF映画だけとは言えません。時代設定がいいですね。大空への夢というのは、あの頃が最も逆に現実味をもっていたような気がします。
 恋人役のジェニファー・コネリーも最近、これといったヒット作はありませんが、やっぱりいい演技をしていると思います(少しうぶな役作りがまたよいのです)。


07)  25日  「12人の優しい日本人」  (シネマアルゴ新宿)     1991年 日本
        ☆☆☆☆☆
 アルゴプロジェクトの作品です。一言でいって、これはおもしろい。
 アルゴプロジェクトは、映画の評判・興行成績よりも、映画の持つ可能性を追求する姿勢を大切にしているので、真に映画を愛する人にとってみればうれしいかぎりでしょう。
 そういう意味からすると、態勢として、以前のATGと共通するところがあります。ここ数年、邦画の低迷が叫ばれていますので、こういう種の映画こそ、大事に見守っていきたいものです。
 「櫻の園」でメガホンをとった中原俊監督ですが、同じ人の作品とは思えない程の変わりようです。こういったシチュエイションは、よくあるといえばあるのでしょうが、ここまで掘り下げてあるとは立派です。
 設定としての、日本での陪審員制度。12人の陪審員の個性(ちょっとオーバーかもしれませんが)と議論の転々は笑わせ(?)られますし、それは心理ゲームでもあります。ひとつの部屋が舞台で、各人が演劇さながらに意見を言い合う演出は飽きさせられません。
 原作となりました、東京サンシャインボーイズの脚本や演劇にも興味がそそられます。


08)  29日  「ケープ・フィアー」  (日本劇場)           1991年 アメリカ
        ☆☆☆
 こういう種の恐怖映画というのは、どの程度日本人に馴染みがあるのでしょうか。いわゆるスプラッタ・ムービーとは異なった、徐々に浸透する恐ろしさ。いやー、ロバート・デ・ニーロっておっかないですね。役柄がよく似合う。
 聖書や哲学書の文句を口ずさみ、体を鍛える、頭のいい復讐鬼って・・・うーむ。リメイクの作品みたいですが、よくできた作品は、リメイクでもいいものです。



〓〓〓〓 如 月 の 章 〓〓〓〓


09)   9日  「スロータハウス・ファイブ」  (TV・VTR)     1972年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 分類からするとSF映画になりますね。小生の好きな時間テーマのSFものです。主人公の男はタイムトラベラーなのですが、肉体ではなく精神のみがタイムスリップする(という表現は正しくないなあ、敢えて述べると、精神が時間を超越して共有するとでもいいましょうか)のです。
 大富豪の娘と結婚して社会的にも地位のある職に就いている現代の自分、ヨーロッパ戦線で捕虜収容所に入れられてドレスデン爆撃を経験する第二次世界対戦中の過去の自分、宇宙人に拉致(保護?)され地球外惑星で有名女優と二人で暮らす未来の自分・・・それらが同時平行の形で、物語が進んでいきます。
 主人公は、ふとした弾みで時間を行き来するのですが、そのへんが多くを語らずただ淡々と断片を拾っていく演出は立派です。当然(?)のことながら、主人公は自分の死の瞬間をも知っていて、それを当然のこととして受け入れてます。
 原作は、アメリカでは結構有名な、独特の作風を持つ、カート・ヴォネガット・ジュニアです。ちなみに、題名の"スロータハウス・ファイブ"というのは、主人公が過ごした捕虜収容所の棟番号です。


10)   9日  「アルプスの若大将」  (TV)             1966年 日本
        ☆☆
 あまり多くを語る作品でもないのですが、一言でいうと、昔の日本は良かったなあと・・・
 ’60年代の日本という背景があるからこそ、今では恥ずかしくなるような台詞も演技も許せてしまえるのでしょう。
 話しの中で、雪山(苗場ですこれが)の避難所で星由里子がとある男に襲われる場面がありまして、間一髪のところで加山雄三に助けられます。そのとき、男をぶん殴って加山さんが言う台詞、「山で、悪いことをする奴は許さないぞ!」は、あまりにも有名な台詞ですね。
 いやー、でも出演者の皆さん、加山雄三も田中邦衛も星由里子もイーデス・ハンソンも、若いです。
 冒頭に、スイスヴァリスアルプスのロケシーンがあるのですが、マッターホルンをバックに、加山雄三がスキーで滑ったのと同じコース(テオディル氷河というのですが)を、滑った自分としては、その場面は個人的に感慨深かったです。


11)   9日  「ペギー・スーの結婚」  (TV)            1986年 アメリカ
        ☆☆☆
 これも、タイムスリップの物語です。監督はあの、フランシス・コッポラなのですが、らしかなる、ほんわりとした作品です。主人公のペギーをキャスリン・ターナーが演じています(なかなかよい)。
 夫(コッポラの甥のニコラス・ケイジが演じてます)と別居中の中年主婦ペギーは、同窓会の席上でパーティの女王に選ばれます。興奮して卒倒した彼女は、精神だけハイスクール時代にタイムスリップします。夫との結婚に疑問を抱いていた彼女は、悔いのない人生を歩もうとして、積極的に変身、第二の青春を模索し始めます。
 結局のところ、同じ夫(ハイスクールの同窓)と結ばれて、現代へ戻るのですが、旦那さんの方も良き夫になっており、ハッピーエンドです。ただ、現代へ戻った後も、過去へ行った影響を物語るような場面もあり、そこの表現は上手です。
 もし、過去のあの時点で、ああなっていればとか、ああしていればというのは、(ある意味では消極的ではありますが)誰でも感じるところでしょう。


12)  11日  「不思議惑星キン・ザ・ザ」  (キネカ錦糸町)      1986年 ソビエト
        ☆☆
 こういう映画は、非常に評価が難しいです。SFコメディーなのですが、独特の演出をしているものですから・・・そういう意味では、ソビエト映画というものに共通性を感じますね。多分このへんの判断というのは、冗長すぎるのを、退屈とみるか、必要な過程とみるかで、異なるもののような気がします。
 地球人二人が、モスクワの街角で宇宙人の浮浪者の手によって、惑星キン・ザ・ザに空間転移させられて、そこでの話しがメインです(最終的には、いろいろと巡って地球に戻れますが)。キン・ザ・ザでのばからしいまでの、日常の非日常さ。たまたま持っていたマッチが、とんでもない価値を持つものであったり、奇妙な差別階級があったり・・・そうそう、キン・ザ・ザでの下のものが目上の人にする挨拶は、両の掌で自分の両頬をたたき、がにまたに足を開き姿勢を低くして、両腕を左右に広げて、「クウー」というのです。お暇でしたら、やってみてください。
 でも、美術も凝ってたし、ソビエトにしては(といっては失礼かもしれませんが)特殊効果撮影も上手でした。で、終わった後には、なんとも言えないユーモラスな音楽が耳に残り続けます。


13)  15日  「デリカテッセン」  (シネスイッチ銀座)        1991年 フランス
        ☆☆☆
 観る前は一種のホラー映画かなと思っていたのですが、予想は見事はずれました。これは、見方によったらコメディ映画です(というか、ブラックユーモア映画というのが正しい)。
 舞台は、核戦争後のパリなのですが、街中の描写はほとんどなく、デリカテッセンというアパートとそこの住民を扱った話しです。大家は1Fの精肉屋の親父なのですが、週末新聞に求人広告を出しては、訪れる人をアパートに住まわせて、頃合を見計らって食用肉にしてしまいます。主人公の元ピエロもそうして、デリカテッセンにやってきたのですが、様々な個性に富む住民を巻き込んで、すったもんだの騒動を起こすこととなるのです。
 映画のコピーで、"奇妙で不思議、面白くて怖い、美しくて醜い、さまざまな表情を持つ映画"とありましたが、適切な表現だと思います。


14)  15日  「羊たちの沈黙」  (VTR)              1991年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 これは、文句無しにおもしろいですね。さすが、キネマ旬報外国映画ベスト・テンの第2位になるだけあります。こういう形式ではらはらドキドキするのは、映画ならではの醍醐味です。
 それにしても、「ケープ・フィア」もそうですが、頭のいい犯罪者というのは困りものですね。特にこの映画の元精神科医のおじさんは、いい味をだしていましたね。その中でも、まさかの方法で脱出を成功させるなんて(でも、中途であれはよめましたよ)。台詞回しもうまいし、いい演技でした。ジョディ・フォスターの見習いFBI捜査官もなかなかでしたけど。
 好きだった彼女と同様な、小太りの女性を拉致して皮を剥ぐという、連続女性殺人事件の犯人の方も、心理学的におもしろいですね。そもそも、題名の"羊たちの沈黙"というのが、ジョディ・フォスターの少女期の精神分析の結果を表現しているものなのでしょうから・・・
 それにしても、元精神科医のおじさんが健在なので、続編の映画が製作されそうですね。期待できそうです。


15)  22日  「パパは、出張中!」  (TV・VTR)         1985年 ユーゴスラビア
        ☆☆
 ’50年代が背景ということで、社会主義から民主主義に変貌しつつあるユーゴスラビアの情勢が良くわかります。逮捕されてしまって、「パパは、出張中!」ですか、なるほど。それにしても、当局というものは・・・
 こういった社会でも、男というものは女性の後を追いかけるものなのですね。まあ、それは人によりけりでしょうけど・・・父の浮気をマリック少年はどうみていたのでしょうか。そのあたりが、マリック少年の表面上を撮影しているだけなので、類推させられます。でも、マリック君も精一杯行動していますよね。母親を想う心は、(台詞には当然ありませんが)十分に感じさせられます。そうそう、個人的には、眼鏡をかけたマリックのおにいちゃんも好きですね。いい味を出しています。
 そういえば、冬季オリンピックが催されたサラエボってユーゴスラビアだったのですね。忘れてた(というか、知らなかったというか)。


16)  22日  「未来世紀ブラジル」  (TV)             1985年 イギリス・アメリカ
        ☆☆☆☆
 2回目に観たときの方が感動する映画ってあるものでして、これなんかは小生にとって、まさにそれに当たります。以前に観て意味不明な箇所が、今回解凍しましたもので・・・(特にラストシーンに関するあたりですが)
 ストーリーのプロットと展開は申し分ありませんが、作品に出てくる小道具の美術がいいですね。未来のコンピュータ管理世界ですが、コンピュータ端末などは、アンティックで生活感が漂いますものね。主人公の小役人のジョナサン・プライス(この作品以外でどういうものに出演しているのですか、小生は知りませんが)や、反政府テロリストの配管工のロバート・デ・ニーロなど、(演出もうまいのでしょうが)いい演技をしてますね。
 この作品の完成後、配給のユニバーサルとテリー・ギリアム監督との間で、最終編集権を巡る熾烈な論争があったらしいですが、監督の作品づくりに対する"こだわり"が感じられてよいですね。映像作家は、やっぱりそこまでの姿勢が欲しいものです。


17)  25日  「愛と死の間で」  (日本劇場)             1991年 アメリカ
        ☆☆☆
 こういう種の映画は、団体で観賞して終了後居酒屋で、各人の作品の解釈を巡って、数人で論じ合うのがよいのです。映画のテーマは、リーインカーネーション(転生輪廻)です。監督はケネス・プラナーという人で、作品中では主人公も演じています。小生はよく知らないのですが、この方、イギリスの演劇界では結構な有名人みたいですね。
 現在と過去の恋人をたちを、ケネス・プラナーとエマ・テンプソンが、それぞれ一人二役で演じています。過去のシーンをモノクローム、現在のシーンをカラーと色調を分けて撮られていますので、それぞれの時代とそのムードがしっかりと捉えられています。
 一種の推理サスペンスものなので、種明かしになってしまう故、あんまり書きませんが、過去の二人の間で発生してしまう殺人事件を解明していくうちに、前世と関連する現在の二人の間でも同様な状況に落とし込まれてしまうという、まさに転生輪廻の話しです。過去を遡る手助けをする催眠術師がいるのですが、これが重要なキーマンだったりして・・・最後は、どんでん返しがあります。
 ドラマの構成は緻密で緊張感があります。ですので、気を抜かずよく観ていないとついていけないところもあります。


18)  26日  「226」  (TV)                  1988年 日本
        ☆
 2月26日に226事件の映画を観るというのもなんだかできすぎていますが・・・
 史実に忠実に描いているというだけあり、ドキュメンタリっぽくて、客観的なストーリー展開ではあります(一部、事件を起こした青年将校らの恋人や奥さんを巡るエピソードもありますが)。ただ、いかんせん、そもそも226事件そのものが、未だ謎の部分が多いので、映画を観終わったときも釈然としません。どうも、この時代の思想というのは、この時代に住んでいる人でないと、結局は理解できないものなのかもしれませんね。事件を起こした者も殺害された者も、いずれにせよ、"天皇陛下万歳"には変わりないのですが・・・
 それにしても、出演者は本当に豪華キャストという感じで、日本の男優・女優の有名どこはほとんど顔を出していたみたいです(それで、制作費がかかったのかな)。雪の降る町並みやら、情緒深く、カメラ撮影も成されていました。


19)  28日  「世にも不思議な アメージング・ストーリー 5つの夢」  (TV)  1985年 アメリカ
        ☆☆
 スティーブン・スピルバーグ製作・総指揮によるシリーズものです。オムニバス形式でそれぞれ別の監督が演出を手がけています。以下の5つの作品から成ります。
 ・「地獄のかつら」・・・・無実の罪で処刑されてしまった女性の髪からできたかつらが弁護士に復讐するお話し。
 ・「ひみつの蘭ちゃん」・・売れないTVシナリオライターが鉢植えの蘭に仕事を手伝ってもらうお話し。
 ・「リモコン親父の逆襲」・家族より虐待を受けている親父が謎のTVリモコン(家族を切替可)を手にいれて逆襲するお話し。
 ・「宇宙のTVおたく」・・地球のTVドラマファンの宇宙人が地球を訪問して生のコメディを見物するお話し。
 ・「二人だけの霊界」・・・40年の昏睡状態より目覚めた老人が身代わりとなって同じ昏睡状態の少女を助けるお話し。
 短編作品(20分くらいか)のわりには、それぞれまあまあまとまっています。特に最後の作品は、涙ホロリもので何だか感動してしまいました(この作品だけは、評価値が高いです)。


20)  28日  「スタートレック5/新たなる未知へ」  (VTR)    1988年 アメリカ
        ☆☆
 トレッキー(ご存知かもしれませんが、スタートレックの熱烈なファンのことをこう呼びます)ではないので、本当のスタートレックのよさというものは、やっぱりよくわかりません。ですが、この映画のシリーズは1〜4まで一通り観ていますので、(半分惰性もありますが)6の劇場公開に先駆けて観ました。
 腹違いのスポックの兄というのが登場するのですが、これがとんでもない思想家で、エンタープライズ号の面々がやっかいな事件に巻き込まれていってしまいます。後半で、銀河系中心に存在するという誰も訪れたことのない、"グレート・バリア"の彼方に向かうのですが、そこに存在する神(実は、絶対なるものに閉じ込められていた"悪")に出会うところなどは、どうも作品中の位置づけというか、必然性というかが、理解できませんでした。こういう映画に限って言えば、エンターテイメントに徹してくれればいいと思うのですが・・・困ったものです。


21)  29日  「スタートレック6/未知の世界」  (江東劇場)     1991年 アメリカ
        ☆☆☆
 たまたま手に入った、観賞券がありましたので観に行きました。シリーズ完結編ということで、結構力は入っていたと思います。少なくとも、今までの近作と違って、本来のスタートレックの魅力に近い(と、小生は思っている)作品に仕上がっている気がします。
 長い間惑星連合と抗争状態にあったクリンゴン帝国が講話の申し入れをしてくるのですが、その護衛にエンタープライズ号が指名されます。講話条約を結ぶ惑星まで、クリンゴン帝国の宰相が搭乗した戦艦をエンタープライズ号が曳航している矢先に、謎の発砲が起こり、クリンゴン戦艦は撃破、宰相は暗殺されてしまいます。暗殺の疑惑をかけられたカーク船長・他クルーは、すったもんだの後、事件を解決し、ハッピーエンドに終わります。
 政治的背景や惑星を巡るエピソード、そして天駆けるスペースシップ・・・スペースオペラの醍醐味って、こういうところにあるのです。
 特殊撮影は、ILM(Industrial Light $amp; Magic)が手掛けていますので、文句ありません。



〓〓〓〓 弥 生 の 章 〓〓〓〓


22)   1日  「ビッグ・ウェンズデー」  (TV)           1978年 アメリカ
        ☆☆
 開局1周年記念のWOWOWがスクランブル放送解除ということで、昼間にぼーっと観ていました。この映画ってこんなに古かったのでしたっけ?(まあ、思い出してみれば、ロードショーは小生が中学生の時分でしたものね)
 有名なサーフィンの映画ですね。この映画が影響されてか、この当時よりサーフィンは巷に流行り始めましたね。でも、今やこの手の映画に今ひとつのめり込めないのは、歳のせいでしょうか?


23)   3日  「バロン」  (VTR)                 1989年 アメリカ・イギリス
        ☆☆☆☆
 先に久しぶりにテレビで「未来世紀ブラジル」を観てより、テリー・ギリアムをじっくり観賞してみようとレンタルしてきました。やっぱりいいですね。SFXを駆使しながらもそれを感じさせない映像美やプロット・ストーリーの奇抜さ。それでいて、背景として哲学的なこともちゃんと押さえているという、気の細やかさ。映像は軽やかに動いていますし・・・映画を作るというのは、こういうことをいうのでしょうね。
 この作品も最後は難解な展開ですね。


24)  11日  「ニュー・シネマ・パラダイス」  (テアトル新宿)    1991年 イタリア・フランス
        ☆☆☆☆☆
 <3時間完全オリジナル版>です。
 この作品に関しては、述べたいことがたくさんたくさんありますが、・・・とても、書ききれたものではありません。観た方とは、一日中かけて話しをしたい気分です。感想を一言で記すと、「あっ、やられたな」といったところです。
 当日、プログラムを3年前のロードショー時(2時間版)のものとこのノーカット版のものと2種類購入して(ここ数年は本当にいいなと感じた映画しかプログラムは買っていないのです)、帰宅してから読み耽っていたのですが、2時間版と3時間版では、結構と作品の意図が異なったように編集されているようです。監督自身は、3時間版で上映したかったみたいですけど、一般受けを考えると2時間になってしまったのでしょう。まあ、往々にあるケースですが。でも、3時間のオリジナル版でも、本当の伝えたかった気持ちを共感できた人は全員ではないでしょうね。
 "そしてトトは、何故、映画監督になったのか(させられたのか)"が、真のテーマでしょう。
 監督は、イタリアのジュゼッペ・トルナトーレ氏です。30代前半ですので、まだ若いですよね。また、音楽の担当が「アンタッチャブル」などを手がけた、エンニオ・モリコーネという人なのですが、これが映画のシーンとあいまって、本当に胸に滲みるのです。サントラ版のCDを借りて録音しましたが、時折、取り出して耳を傾けています。


25)  13日  「タッカー」  (TV)                 1988年 アメリカ
        ☆☆
 製作総指揮ジョージ・ルーカス、監督フランシス・コッポラというだけあって、ロードショー当時は結構話題になりましたが、観たのはこの日が初めてです。
 理想の車作りを夢見る男が、そのデザイン・金の工面から、製造、そしてデトロイトの3大自動車メーカーに潰されるまでを描いた映画です。挑戦という言葉が、やはり、"アメリカン・ドリーム"にはふさわしいです。


26)  21日  「喜多朗の十五少女漂流記」  (渋谷松竹セントラル)   1992年 日本
        ☆
 ある程度は期待して観に行ったのですが、思っていたよりというか、思った通りというか・・・つまらなかったです。設定もさることながら、テレビドラマにも出演した、新人の奥山佳恵の演技もなんだか空回りみたいで・・・でもまあ、15人の高校生の少女達のけなげな姿というのもいいものです。


27)  27日  「フィッシャー・キング」  (試写会・よみうりホール)  1991年 アメリカ
        ☆☆☆
 テリー・ギリアム監督の新作です。前作品とは一風変わった作風です(まあ、つまりは、テリー・ギリアムらしからぬというか)。「俺は、ちゃんとこういう作品も撮れるのだぞ」という、監督の心意気がみれます。まあ、そういう意味では、ビジネスベースの仕上がりになっているきらいもありますが・・・
 観賞後の感は、小粋ないい作品ですねえ(特にラストシーンの演出なんかは)、といったところです。元売れっ子DJと元中世史の教授の友情、とふたり巡るそれぞれのラブ・ストーリー・・・舞台がニューヨークという街であることも、映画の絵作りに大きな影響を与えています。毎日を生活するということ、それは、自らの心を大切にすることなのでしょう。
 春の香のする夜に、ちょっと観る映画としてはよいですね。



〓〓〓〓 卯 月 の 章 〓〓〓〓


28)   4日  「ブルース・ブラザーズ」  (TV)           1980年 アメリカ
        ☆☆☆
 以前に観たのは、確かロードショー前の試写会でありました。ですので、高校生のときになるのですね。
 ブルースミュージックを基本としたこの手のコメディはアメリカ映画(というよりは、ブルース・ブラザーズそのもの)の特有の"のり"であります。ブルース・ブラザーズもかたわれが他界してしまって、もうああいう形のコメディが見られないというのは残念なものです。
 他の出演者も、有名な黒人ミュージシャンや「スター・ウォーズ」出演直後のキャリー・フィッシャーなど、ブルース・ブラザーズのわきを固めています。


29)   4日  「トータル・リコール」  (TV)            1990年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 これも、以前ロードショー公開時に観に行った作品です。
 主演は、アーノルド・シュワルツェネッガーですが、「ターミネーター」や「バトル・ランナー」などと同様、この種のSFアクションものには、シュワちゃんは似合いますね。
 原作(原題は「追憶売ります」)は、アメリカのSF作家フィリップ・K・ディック(この人も他界した)なのですが、アイデア・プロットがいいのです。どんでん返しがありますし、ストーリー展開も(常道ではありますが)飽きさせません。火星の地下都市の作りが安っぽいのは気になりますが、美術もまあまあです。
 自分の過去と現在の生活、性格を含めた自我、そういったものの正当性を問いた作品だったのですね、実は。



〓〓〓〓 皐 月 の 章 〓〓〓〓


30)   4日  「バートン・フィンク」  (銀座テアトル西友)      1991年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 これは、まあ何というか、小生は結構好きです、この手の映画は。でも、何故、こんな映画が、昨年のカンヌ映画祭で三冠を受賞してしまったのだろうと、思うところもありますが。
 基本的には、ヒッチコック調のサスペンスではありますが、笑わせるところは笑わせて、映像マジックも随所にあり、不気味というよりは、奇妙なという作品です。
 時代背景は第二次世界対戦直前で、舞台は古びたホテル。主人公(ジョン・タトゥーロ)は、駆け出しの映画劇作家で、シナリオ執筆中のそのホテルで、出来事に遭遇するのです。
 こういう作品のできは出演者に左右されますが、そういう意味ではこの役者は、とても個性的ではあります。
 話しは違いますが、ここの映画館はミニシアター形式で、(入場制限もしますが)環境はとてもよいです。


31)  25日  「ゆりかごを揺らす手」  (丸の内ピカデリー2)     1992年 アメリカ
        ☆☆☆
 女性心理というものは、それも(旦那も死に至り)子供を流産した母親の心理というものは、本当かどうかは分かりませんが、いやはや怖いですね。
 逆恨み(でしょうね、やっぱり)からくる復讐劇なのですが、このベビーシッターとしてもぐり込む女性(レベッカ・デモーネイ)、とてもその手口が巧妙なのです。でも興味深いことに、赤ちゃんや小さい子にはとても優しい。その辺りは、母性本能が働いているのですね。
 でも、何よりも偉いのは、旦那さんがこの女性の誘惑を頑としてはねのけるところです(普通だったら、絶対に浮気をしているようなシチュエーションで)。それほどに、奥さんと家庭を愛しているのですね。
 何はともあれ、スプラッターのオカルト映画よりも、小生は人間心理の奥底を突くこの手のサスペンス映画は、怖いと思います。


32)  30日  「ひまわり」  (TV・VTR)             1970年 イタリア
        ☆☆☆☆
 観てて思い出しましたが、やっぱり、ずっと以前に観たことがあります。主題曲の物悲しい音楽も、覚えがありました。一種の恋愛映画になるのでしょうね。
 こういう状況って、誰が悪いわけでもないので、難しいですよね。こうした、ちょっとした運命のいたずらが、結果的に複数の人を傷つけるようになるのですから、皮肉なものです。でも、ソフィア・ローレンに負けず劣らず、マルチェロ・マストロヤンニ(という名前なのですね、以前、TVのCFにも出てましたよね)も、辛いのです。男である以上、女性ほど感情をあらわにすることはできませんから。でも、ふたりは最終的にわかりあえていたのだと思いますので、救われます。
 ところで、タイトルの"ひまわり"ですが、そうですね、結果的にふたりが離ればなれになった、"戦争"の悲しさを象徴していたのですね。



〓〓〓〓 水 無 月 の 章 〓〓〓〓


33)   5日  「天河伝説殺人事件」  (TV)             1991年 日本
        ☆☆
 原作は内田康夫の推理小説なのですが、横溝正史を意識させる作りになっています。角川映画15周年記念で、監督が市川崑ということもそうですね。ルポライターの主人公(榎木孝明)が素人探偵をやるのですが、その言動が金田一耕助風であります。その主人公の兄貴が(最後に出演するのですが)警察庁のエリート幹部で、石坂浩二が演じているという楽屋落ちもあります。で、重要なキーウーマンが岸恵子というのですから、想像がつくでしょう。
 主たる舞台が吉野の山奥の村で、設定が旧家の継承争いなのですが、時代は現代ですので、結構今風の演出もあります。財前直美の、スポーツカーを乗り回す姿と、着物をまとい能を舞う姿の対照がおもしろいです。


34)   6日  「バカヤロー!3 へんな奴ら」  (VTR)       1990年 日本
        ☆☆
 シリーズ3作目ですが、はじめの1作目を劇場で観たときには、インパクトがありました。これはそれほどでもなく、パワーダウンを感じます。しかしながら、それも普段演出をやらないような人や新人さんなどに、短編とはいえ、監督を任しているので、興味深いところではあります。
 ・「こんなに混んでどうするの」・・・高速道路の渋滞の話しです。旦那の平田満の挙動が笑えます。
 ・「過ぎた甘えは許さない」・・・子連れ出戻りの姉(松本伊代)と妹役の清水美砂のやりとりがおもしろい。
 ・「会社をナメるな」・・・管理職の営業課長の中村雅俊が渋い。
 ・「クリスマスなんか大嫌い」・・・クリスマスは恋人と、という若者らと、その実際。地元商店街のクリスマス演出が心憎い。


35)  21日  「私の心はパパのもの」  (中野武蔵野ホール)      1988年 日本
        ☆☆
 2本立てを観に行きました。どちらも、大林監督のTVフィーチャー(日本テレビ)なのですが、小生は観たことがありませんでした。TV放映ではありますが、撮影メディアでフィルムを使用していますので、やはりこれは映画です(ただ、この作品の場合は、特撮のシーンでVTRも使われていました。玄人の目からすると、フィルムかVTRかすぐにわかるものです)。
 ミスキャストとも思える(というか、大林作品には珍しい)父親役が愛川欽也で、娘役が斉藤由貴です。離婚していた母親が死に、ひょんなことから十何年ぶりに再会する父と暮らし始める娘(大学生)なのですが、いろいろなエピソードがありにけりで、退屈はしませんでした。でも、終わりがちょっとあっけらかんです。
 題名の「私の心はパパのもの」は、マリリン・モンロー(だったっけかな?)の歌の題名で、作品中でも演出として使われています。


36)  21日  「彼女が結婚しない理由」  (中野武蔵野ホール)     1990年 日本
        ☆☆☆☆
 これはなんだか、観終わって暫く経って、いくつかのシーンが思い起こされるようになりました。後になって、気になるというのでしょうか。そういう意味で、いい映画でした。
 この作品の撮影は、「ふたり」と前後してだったためでしょうか、共通して出演している役者さんが目立ちました(きっと、ついでにと出演を依頼したのでしょうか)。これは、母と娘の映画です。母親役を岸恵子が演じ(これがまた上手なのですね、場面により顔を使い分けるのが)、娘を石田ゆり子が演じています。「ふたり」では、妹の石田ひかりが主演なので見比べてみると、各々の特徴が出ていておもしろいです。でも、石田ゆり子には参りました。今までの役を振り返ると(わき役が多かったこともありますが)、しっかりものの女性というイメージだったのですが、この作品では、いじらしいほどにとても純な役を演じているのです。
 岸恵子を主体とする、ふたつのエピソードのストーリー展開も上手ですし(ちょっと強引なところもありますが)、あっ、これはという返しもありますし、ピアノで奏でるテーマ曲(大林作曲)も物悲しいですし、よいところが多いです。そして、この作品では、"風"が重要なテーマとなっているのです。
 当日、(別にねらっていたわけではなく、たまたまですが)夕刻、監督の大林さんが舞台挨拶に来ていまして(そういえば、当日はファンらしき風貌の人間が多かった)、いろいろと話しをしていたのですが、これらの作品は、プログラム・ピクチャーであるという表現をとっていました。つまり、作る方も気軽に、観る方も気軽に(ちょっと、週末に映画でも観るかといった風な)、楽しめる作品を目指したと。まさに、そういう印象を持ちました。当日、来ていましたが、こういう作品をプロディースした日本テレビの方も理解ありますね。


37)  23日  「橋のない川」  (江東劇場)              1992年 日本
        ☆☆
 ふと入手した招待券で観に行きました。監督は、ひと昔前、結構話題作を撮った、東陽一氏ではないですか。
 自分の生い立ちを眺めるに、多分に自分は雑種に近い部類ですし、根本的には人間の善し悪し・好き嫌いは、その人の個人的なところ(つまり個性)、その人自身を重視するところからはじまるものだと確信していますので、この手の差別が生じる背景というのは理解できません。いや、もちろん、その経験がないからなのかもしれませんが。でも、差別を受ける方も差別をする方も嫌ですが、そういうのを目の前にするのも(また、それを見て自分が何もできないのも)嫌なものでしょうね。長い作品ですが、中身は濃厚です。大谷直子が熱演しています。



〓〓〓〓 文 月 の 章 〓〓〓〓


38)   4日  「存在の耐えられない軽さ」  (VTR)         1988年 アメリカ
        ☆☆☆
 監督は、「アマデウス」を撮った人だし、製作は秀作を出している"ORION"なのですね。
 うーむ、何と表現したらよいか。やっぱり、悲しい映画なのでしょう。
 少なくとも自分は、主人公のトマシュのような男ではないし、性格上なりたくともなれないでしょうから、男側の心理状態がはっきりわかりはしません。逆に、タイトルにもあるように、"存在の耐えられない軽さ"と知りつつも、愛してしまう女性テレーザの心理の方が理解できるような気がします。でもきっと、トマシュの方も懸命なのでしょうね(職業が医者だという必然性はわかりませんが)。
 場面としては、テレーザと元トマシュの恋人サビーナが、ふたりでヌード写真を撮り合うところなんかが、以外性があっていいですね。このシーンもそうですが、全体的にカメラワークはうまいと思います(というか、作品の雰囲気にあっている)。出演者(?)は、飼い犬のカルニンが好きですね(臨終場面は悲しかった)。作品の欠点としては、冗長すぎるところですか。もっと短くまとめてもいい。
 どうやってラストシーンに持っていくのかと思ったら、まさかああいう展開にしてしまうなんて(まあ、仕方がないか)・・・異国の地、アメリカで芸術家をしながら、電報を受け取るサビーナの遠くを見つめる目は印象的でした。


39)   5日  「プリティ・ウーマン」  (VTR)           1990年 アメリカ
        ☆☆☆
 いやー、実はまだこの映画を観ていなかったのですね。話題になっただけあって、上手な作品に仕上がっています。現代版シンデレラのお話しとしては、ジュリア・ロバーツにリチャード・ギアというのは、最適なキャスティングといえましょう。ハリウッド映画ですね。全編を通じて、粋な雰囲気が漂います。
 これを見ていると、リチャード・ギアに憧れる日本人女性の気持ちもわからなくありません。でも、ジュリア・ロバーツの方は、これがヒットした初めての作品ではないでしょうか。なかなかいい演技をしていますよね。
 その後のふたりを描いた、続編も作れそうですね(おもしろくなるかどうかはわからないけど)。


40)   6日  「裸のランチ」  (丸の内ピカデリー2)         1991年 アメリカ
        ☆☆☆
 困りますねえ、こういう映画を作られると。映画の評価の仕様がなくなってしまうではないですか。せめて、原作を読んでから観るべきだったかな。でも、(変な意味で)有名な原作も、作者のウィリアム・バロウズが麻薬中毒でヘロヘロになっていたときに、著したっていうし・・・。まあ、どちらかといえば、難解な原作を(あくまで個人的な解釈ではあろうが)映像化してしまった、デヴィット・クローネンバーグが偉いと言うべきでしょう。
 という映画なのですが、主人公のピーター・ウェラーや謎の役のロイ・シャイダーは熱演ですし、幻想世界のライティング効果などは絶妙です。
 何かの寸評に書いてありましたが、(方向として)似たような作品に、邦画の「ドグラ・マグラ」がありました。これも、映像化が不可能とされていたものなのですが、自分としては、「ドグラ・マグラ」のほうがまだわかり得ました(原作も読んだのですが)。


41)   8日  「氷の微笑」  (丸の内ピカデリー1)          1992年 アメリカ
        ☆☆☆
 この手の推理・サスペンスものというのは、何人かで観に行って、観終わった後に皆でああでもないこうでもないと、謎解きごっこができるのでよいですね。この辺まで種明かしをするからと、映画の作者が出すポイントを基に、観客が推理を働かせるのです。愛情という不確定要素が絡んでしまう心理変化の描写が(主人公の女性本人が心理学のベテランでもあるのですが)上手に描かれています。
 この映画、R指定なのですが、スプラッター場面もありますが、やっぱりベッドシーンが過激だからでしょうか?
 主演のマイケル・ダグラスも、渋い演技を決めています(そういえば、リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」でも、熱血刑事を演じていたのが印象的です)。


42)  11日  「グラン・ブルー」  (シネセゾン渋谷)         1988年 フランス
        ☆☆☆☆☆
 早起きして観に行きました。いやはや、人気が高いですねえ。でも、この手の映画は、苦労しても映画館でどっぷりと浸かって観るのが正解です。3時間の長編ですが、のめり込んでしまえば、時間を感じさせませんね。各場所を巡るエピソードも、うまい具合に結び付けてありますね。ただ、フランスでのシーンなんかは中だるみがあるような気もしますが。
 潜水記録を競う男のロマンと友情の映画、ジャックとジョアンナの恋愛映画、と見方によっていろいろとれる作品だと思いますが、(ストーリーは単純だけれども、)メッセージとしては単純ではないと、小生は感じます。うまく表現できないのですけど、登山者に例えると、(よく言われるように)どうして山に登るのかの問いに、「何故なら、そこに山があるからだ」といったところでしょうか。
 大切なのは、ジョアンナがジャックを愛するのと同じように、ジャックも最後までずっとジョアンナを愛していたわけで、ただそれが少し不器用だっただけで・・・それにしても、海。グランブルーの海。ここで、深淵の海の世界とジョアンナと、ジャックはどちらが好きでどちらを選ぶのか、などという愚かな疑問を抱いてはいけない。そもそも、それらは別個のもので、選択などできっこないのだから。
 最後に死にかかって助かって、それでもベッドの上で深海の夢を見る(ジャックが鼻血を出すのは意味深い)。それほどまでに、海に魅せられて、というか海と一体になってしまって・・・性というものなのでしょうか。でも、あんなに反対していたジョアンナが、自らの手で潜水機器の綱を引っ張り、ジャックを送ったというのは・・・うーむ、感動であります。
 ちなみに、出演者の中では、小生もやっぱりエンゾが一番好きです(いい味を出していますよね)。


43)  11日  「大誘拐」  (TV)                  1991年 日本
        ☆☆☆
 いろいろと話題になって賞を取っただけあります。シナリオも吟味されているのでしょう。邦画では珍しいエンターティーメントの作品に仕上がっていることと思います。
 風間トオルをリーダーにした誘拐犯が、誘拐した大地主のおばあさんに逆に翻弄されながら、それぞれの生きる道を見つけていくというお話しです。誘拐犯が提案した5千万円という身代金を100億円に値上げをするばあさんですが、これもちゃんと計算してのこと。実は計算高く、自分の財産の税金対策をして、ついでに世間を欺いてしまおうとするばあさんなのです。
 警察とマスコミを巻き込んでの史上最高額の大誘拐なのですが、これは実は、お互いに面識深い、刑事(緒形拳)と地主のばあさん(北林谷栄)との知恵比べであったのです。それらが、山奥の紀州を舞台に繰り広げられます。
 緒形拳の部下の刑事役で、「帝都大戦」の加藤("みんな壊してやる!"というあれですね)を演じた嶋田久作が出演していますが、それがぼけた役で加藤のイメージとのギャップがおもしろおかしいです。


44)  15日  「バットマン」  (TV)                1966年 アメリカ
        ☆
 アメリカのTVシリーズの映画化なのですが、随分と古い作品です(というのはその作品の設定・ストーリー性と作り方が)。まあ、でもそういう作品と割り切って観ているとこれもそれなりに楽しめまして、いいんじゃないでしょうか。
 ジョーカーやペンギン、キャットウーマンもちゃんと出演していますし、子分のロビン君も大活躍です。


45)  22日  「バットマン・リターンズ」  (池袋東急)        1992年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 代休の日に観に行きました。真昼間の映画館はすいていてよいですね。
 アメリカ・コミックの映画化はここ最近いくつかありますが、自分は「スーパーマン」なんかよりも、このバットマンのシリーズの方がずっと出来がよいと思います。前作の「バットマン」も同じですが、この監督ティム・バートンは、注目しておいてもよいかもしれない。
 世間一般には、娯楽映画に思われがちですが、基本的にバットマンの映画は、感ずるに、暗く悲しいのです。とりわけ、そのキャラクターの背景が。前作のジャック・ニコルソン演じるジョーカー(そのぶっとびぶりもよかったです)もしかり、今回のダニー・デヴィート演じるペンギン、ミシェル・ファイアー演じるキャットウーマンしかり。ゴッサムシティ(ニューヨークですね当然)という大都会に見放された彼らが、怒りと悲しみを持って暗躍するのですが、それを阻止するバットマンその人も実はすごく悲しい人なのです。 それに、ハイテク機器を駆使しているとはいえ、スーパーマンと違ってバットマンは基本的に人間ですから、そんなに強くはないのですよ。そこが人間性を感じるというか。
 バットマンもキャットウーマンも、時代がそうさせた二重人格者だから、表と裏の顔を持ちます。それで、お互いに愛し合っているのに愛せない(敵対してしまう)、ジレンマが現れています。バットマンというぐらいですから当たり前かもしれませんが、夜の顔のときは夜の町中のシーンで、その映像美は独特です。
 各キャラクターの(コスチュームもそうですが)ヒューマニズムを感じさせる作品です。


46)  23日  「ドレミファ娘の血は騒ぐ」  (TV)          1985年 日本
        ☆
 自主映画に近い作品で、当時は結構、一部で話題になった映画です。しかしながら、今ひとつ共感できませんでした。話しの題材としてはおもしろいとは思うのですが。
 それでも、デビュー間もない洞口依子や、特別出演の大学教授役の伊丹十三の演技は、なかなかなものでした。


47)  29日  「おろしや国酔夢譚」  (江東劇場)           1992年 日本
        ☆☆
 手にいれた招待券で観に行きました。夏の邦画では、松竹の「遠き落日」と並んで力を入れている東宝の作品です。
 日本人商人の船が難破してロシアに漂流して、苦労の末、ペテルブルクの女帝エカテリーナ2世にまで会いに行って、日本への返還を懇願するの話しなのですが、それまでの長い道のり(シベリア横断など)と長い時間(確か8年だったかな)が作品中では散漫になってしまっているような気がします。それでも、当時のロシアから見た(日本を含めた)世界観なんかは伝わっています。
 日本人団体の長、大黒屋光太夫を緒形拳が演じていますが、この人も最近の日本映画を代表する人になってしまいましたね。やっぱり緒形拳は、また彼独特の渋さを持ち合わせていると思います。
 そうそう、おろしや国ってロシアのことだったのですね。



〓〓〓〓 葉 月 の 章 〓〓〓〓


48)   6日  「グレート・ブルー」  (VTR)            1988年 フランス
        ☆☆☆☆
 「グラン・ブルー」と比べると、どうでしょうか?
 このぐらい短く編集してしまった方が、ひとつの映画として鑑賞するにはよいような気はします。でも、これはダイビングの映画に徹していますね。個人的には、ジョアンナの(そしてその実は、ジャックの)葛藤の場面が好きですので、その辺の説明があっさりしているのは、残念です。
 最後の場面でひとつ気が付いたことがありました。ジョアンナが、自らの手で潜水機器の綱を引っ張り、ジャックを深海へ送ったときに、実はジャックがその綱をジョアンナに持たせようとしていたのですね。でも、そのときにジョアンナが発する台詞で、「行きなさい、私の愛を見に!」というのがあります。それって、その瞬間にジョアンナができる精一杯の反抗と妥協と共感と嫉妬と思いやりと自己正当化だったのですね。・・・奥が深い。
 エンゾもやっぱりエンゾらしい描写で、よいですね。エンゾの最後の言葉、「やっぱり、おまえの言うとおり、海がいい・・・」というのも、意味深でよいです。
 先日、友人とプールへ行ったときに、ふたりして息を吐いてプールの底であぐらをかくとか横たわるとか試してみましたが、案外できるものですね。苦しかったけど。でも、さすがに底でワインは飲めませんでした。


49)  13日  「フック」  (新宿プラザ劇場)             1991年 アメリカ
        ☆☆☆☆☆
 多分こういう映画は、いろいろと気になる点で文句を並べるよりも、単純に受け取って楽しんで感動するという見方が、正しいのでしょう。なんだかんだ言っても、やっぱりスティーブン・スピルバーグは、偉いと思います。原作は別の人みたいですけど、ああいう形で映像化できるというのは、小生からみればうらやましい限りです。何と言いますか、(自分の)世界観がしっかりしているのですよね。こういうのが好きだから、こうありたいという姿勢が。それで、それを映像表現できているのですから、立派なのです。
 一番感動的なのは、ピーター・バニング、もといピータパンがネバーランドで初めて(いや、何十年かぶりに)空を飛ぶシーンです。空を飛ぶスタイルそのものではなくて、その前後の過去の回想、精神の高揚、そしてすべてを思い出すという、一連の描写がよいのです。
 配役もまずまず申し分ないですね。ピーターパンのロビン・ウィリアムズ、フック船長のダスティン・ホフマン、ティンカーベルのジュリア・ロバーツ、それ以外の役もしかり。
 ピータパンのお話を知っている人には、その後のお話として、とても気になる内容でして、そして、何よりもこの映画は、父親とは・・・ということを描写した作品なのです。


50)  14日  「紅の豚」  (新宿文化シネマ1)            1992年 日本
        ☆☆☆
 結構と宮崎作品は観ているのです。
 監督の宮崎駿が自ら言っていたように、本当に自分の趣味で作ってしまった映画という気がします。映画館も相当に混んでいましたが、はっきり言って、内容は一般的ではないような気がしますが。
 それでも、(宮崎ファンならうーむとうなずく)宮崎さん独特の空の飛行シーンの書き込みや、ちょっとしたユーモアな場面、快活な少女の描き方など、絶妙なところがあります。あれで、ストーリーにもう一工夫あればよかったのに。でも豚というのは、ヒットでした。主人公の豚のポルコの劇中の台詞、「飛べない豚は、単なる豚だ!」。


51)  15日  「八月の狂詩曲(ラプソディー)」  (TV)       1991年 日本
        ☆☆
 黒澤明監督の作品ですが、正直言ってあんまりおもしろくないでした。長崎の原爆のその後を題材に、その田舎に遊びに来る孫たち、そして甥のハワイ在住の二世の来日、という設定は悪くはないのですが・・・
 リチャード・ギアを出演させても、彼のいい所なんかは、何も描写できていない(単なるおじさんの)ような気がするのです。テーマもなんだか曖昧でした。


52)  19日  「愛人/ラマン」  (有楽シネマ)            1992年 フランス・イギリス
        ☆☆☆☆
 代休の昼間に観に行きました。
 これは映画公開前に、マルグリット・デュラスの原作を読みまして、これがどういう形で映像化できるのか、気になるところでありました。というのは、原作はほとんど観念的な表現の文章であり、内容だったのです(そういう意味からすると、文学作品なのかもしれません)。
 でも、映画を観て出来映えに納得できましたし、のめりこめました(あっ、変な意味ではないですよ、念のため)。仏領時代のベトナムを舞台にして、映像が(カット割りを含めて)綺麗なのですよね。町中の背景描写も、主人公の少女(ジェーン・マーチ)の動作描写も。そして、ショロンの男(少女の愛人の中国青年です)に関しても。このショロンの男、はじめは自分のイメージと異なる役者だったのでがっかりしていたのですが、ストーリーを追うにつれて感情移入できまして、大した者です。
 単なる遊びのつもりで(実はそうではないのですが)声をかけた15歳の少女に、だんだんと本気になってしまう30歳の青年。年の離れた少女を抱きながら、もうどうしようもないと告白する青年。それに対して少女は、青年と肉体関係を持ちながらも、冷淡で(時には残酷で)、無表情に未感情を保ったまま。その少女の態度は、青年が結婚してしまってから、また、堕落してしまってからも変わりありません。ところが、その実、少女たち一家がフランスへ戻る船の中で、港を離れたその日の夜、ひとり夜風に吹かれながら、遠く船内を流れるショパンのピアノ曲を耳にして、初めて悟るのです。そのときに、少女は大泣きをして初めて感情をあらわにするのですが(映画を観る観客に対しても)、その以外性には感激できます。
 それらが、過去を振り返る、作家になろうと決意したその少女時代の回想として、現在のデュラスの姿と重なるのです。
 それにしても、(何かの評にも書いてありましたが)ベッドシーンなんかよりも、青年と少女が初めて手をつなぐところのシーンの方が、ずーっと官能的に感じられました。


53)  20日  「白鳥」  (TV)                   1955年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 何気なく見始めたのですが、集中してしまいました。
 単純に言ってしまえば、グレース・ケリー演じる王女と、アレック・ギネス演じる大国の皇太子と、ルイ・ジュールダン演じる家庭教師の3人3色の立場から描いた3角関係の恋愛ものなのですが、これが奥が深い。最後にはどんでん返しがあるし。
 アレック・ギネス(この人というとどうもすぐ「スター・ウォーズ」シリーズの最後のジェダイの騎士、オビワン・ケノービ役を思い出して、比較してしまうのですが)がまた、癖のある役どころなのですが、この皇太子が凄い。すべてを知っていて、実は高いレベルから結果の物事の成り行きを確信しつつ、行動をしているのだから。そして、それは最後の最後にタイトルの「白鳥」の意味を明らかにするときに、明らかになるのです。
 グレース・ケリーも、とても綺麗ですね。つまりは美人です。ちょっと優柔なプリンセスという役をとても優雅に演じています。そしてこの人は、この映画の公開翌年に、当時のモナコ国王と結婚して引退して、本物の女王様になってしまったのですから、現実とはおもしろいものです。


54)  21日  「ホテル・ニューハンプシャー」  (TV)        1984年 アメリカ
        ☆☆
 有名な現代文学の映画化だそうですが、これも評価には困ってしまう種の作品ですね。ホテル経営をする家族の悲喜劇ですが、ストーリーは、良い悪いと言うよりは何だか不思議な感じで、やっぱりこの手の映画は、感性で観るものなのでしょうか?
 この場合、熊のぬいぐるみを常時着込む、ナスターシャ・キンスキーの存在などが、(そのぬいぐるみ姿で劇中に登場する必然性?が)結局は、作品の意図の一部を解く鍵になるのでしょう。それにしても、確かに彼女は美人ですね。
 主役のジョディ・フォスター(最近は監督業にも手を出していますね)も、太めの高校生役なんかを演じてしまって、いやー若いですね。


55)  30日  「未来の想い出 ラストクリスマス」  (錦糸町キンゲキ) 1992年 日本
        ☆☆☆☆
 原作は、藤子・F・不二雄のSF漫画なのです。基本設定は同じですが、原作とはまるで違った内容に仕上がっています。原作も読んだのですが、映画の方が(映画であるが故ということもありますが)よいですね。これは、監督自身、脚本も書いたという、森田芳光の手に依るところが大きいですね(藤子氏も、様々にアドバイスしたみたいですが)。
 基本的に、(自分が時間テーマものを好んでいるというのもありますが)作品全般的に演出がいいのです(ちょっと首を傾げる箇所もありますが)。演技は二重丸というわけではありませんが、主演の清水美砂と工藤静香が、各人良い表情をしているのです(それも場面に応じて)。10年間の20代の人生のプレイバックという設定なのですが、ふたりそれぞれがそれぞれの人生で、最後にはちゃんと納得のできる前向きの姿勢で、感動的に締めくくっています。3度目の正直というのは、こういうことを言うのでしょう。時代に応じたヒット曲を、さりげなく背景に流しているというのも上手です。そして、思うにこれは女性どうしの友情が重要なテーマのひとつになっているのです。
 森田芳光監督作品は結構と観ているつもりですが、これなんかは小生が感じるに、森田さんの代表作のひとつとなりえると言っても過言ではないと思います。


56)  30日  「エイリアン」  (TV)                1979年 アメリカ
        ☆☆☆☆☆
 「エイリアン3」を観る前に、復習をするのもいいかもしれません。でも、この映画ももう何回観たことか。初めて観たときは劇場公開でしたから、中学生の時分でした。その前年に「スター・ウォーズ」が公開されて、SF映画のブームの先駆けになっていた頃ですね。何回観ても、この作品のできばえには感服します。
 設定、ストーリー、テーマ、美術、演出、諸々の映像技術等。どれをとっても、非の打ちどころはないか少ないです。いろいろ成功の要因はありますが、その内のひとつに、エイリアンをデザイン・具象化した、画家ギーガー(知る人ぞ知る・・・詳しく知りたかったら、白金台にあるギーガーズ・バーへ行ってみてください)の存在は忘れられないでしょう。
 監督のリドリー・スコット(この人の作品は、好きなのですね)も、思い起こせば、この作品で一躍有名になったのですよね。でも、この監督の独特の演出は、実にこの「エイリアン」で完成されていたのです。
 主演のシガニー・ウィーバーも、まだ30歳で悩ましい演技をしています。



〓〓〓〓 長 月 の 章 〓〓〓〓


57)   1日  「エイリアン3」  (北野劇場)             1992年 アメリカ
       ☆☆☆
 大阪へ出張へ行ったときに、営業の人たちと観に行きました。本当のタイトルは、3という文字を右上隅に小さく書くのが正しいのです。3乗の・・・という意味合いも含めているみたいです。
 エイリアン・シリーズは、若手(というか新人)に近い人が監督を手がけているように思います(1はリドリー・スコット、2はジェームス・キャメロン、2はつい最近、監督自身の手による編集の「完璧版」がビデオ化されましたね。これも興味深い)が、この3作目の出来は、あまりいただけません。でもこれは、監督のデイビット・フィンチャーのせいではないでしょう。エイリアンの視角から捕らえたカメラワークや、火の演出なぞは、感心いたします。では何が悪いのかというと、作品の背景となる整合性・裏付けが曖昧な点です。シナリオ自身も何人が手がけようとして、結局はこういう話しになって、確かにストーリーはこんなものでしょうが、エイリアンの変態・生体系を知っている者にとっては、釈然としないところが多いのです(どうやって、寄生したのかという点に集約されま すが)。
 この手の作品は、(難しいでしょうが)前作とのつながりの矛盾があっては、その時点で、作品として失敗作になるのです。また多分、それ故に(それに関して)、作品としての広がりもなくなってしまったような気がしますが。
 エイリアン4も製作される予定だそうですが、どうなることでしょうか(少なくとも、主演に関して・・・)。


58)   4日  「いつかギラギラする日」  (新宿松竹)         1992年 日本
        ☆☆☆
 貰った招待券で、先行レイトショーを観てきました。久しぶりの深作欣二監督のアクションものです。
 萩原健一演じる中年ギャングが、裏切って現金を独り占めした若者(木村一八)を追いつめるのですが、それが妙に怖い。その若者の仲間に、荻野目慶子演じるイケイケギャルが加わって、ドンチャカとやるのです。この荻野目慶子ですが、エクスタシー状態で銃を乱射したり、なんだか私生活でプッツンきたそのままの演技みたいでしたねえ。いやはや。
 わきを多岐川裕美や千葉真一や原田芳雄やらが固めていて、結構楽しめる娯楽作品でした。こういうのを(文字どおりの)日本版ギャング映画というのでしょう。


59)   6日  「クラス・オブ・1999」  (TV)          1990年 アメリカ
        ☆☆☆
 校内暴力で荒れる高校を舞台に、学校側が組織した3人の戦闘ロボット教師軍団と生徒らの戦い、という設定だけだと、一見、何だかとてもつまらない映画のように感じられますが、それがちょっと凝っているのです。学校も欺かれている裏の企業組織の流れとか、生徒同士の団体の抗争が協力に変わっていく姿とか、なかなか観るべきものがありました。
 そのロボット教師というのが、だんだんと制御が効かなくなっていって、ターミネーターを思わせるような挙動で(また体内に隠し持った武器も興味深い)殺人マシーンと化するのです。でも、結局は人間である生徒らに負けて・・・やっぱり、人間は偉いなあと、感心できるエンディング。
 有名俳優が出演しているわけではないし、映像も安っぽいところがありますが、こういうB級映画は、大切にしたいものです。


60)   7日  「パトリオット・ゲーム」  (丸の内ピカデリー1)    1992年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 このジャック・ライアンのシリーズは、これからはハリソン・フォードが主演で映画化されるそうで。原作トム・クランシーの前作品「レッド・オクトーバーを追え!」は、どちらかと言えばソ連原潜の船長を演じたショーン・コネリーが主演みたいであったから・・・ジャック・ライアン役は、ハリソン・フォードがはまり役ですね(人間くささが現れるのがよい)。
 ハイテクを利用した情報収拾活動など、どこまでが現実で、どこからがノンフィクションであるのかわからないほどリアル感があります。でも最後は肉体を駆使して、テロリストと渡り合うなんていうのがいいのでしょう。そしてこの映画は、家庭というものを描いた作品でもあるのです。


61)  23日  「ザ・フラッシュ」  (TV・VTR)          1990年 アメリカ
        ☆☆☆
 スーパーマン・シリーズやバットマン・シリーズと同様な、アメリカン・コミックものの映画化作品です。検察官の主人公が、嵐の夜実験室で落雷と共に科学薬品を浴びてしまい、身体が超音速で動き回れるようになってしまうという設定です。それが、殺人課の刑事である兄が殺されたのを契機に、正義のヒーローとして活躍し始めるのです。
 女性の科学者(生理学者)の協力を得て(まあ、これが後に恋仲になるのですが)、悪の組織に立ち向かうというスタイルですが、何故かタイムスリップなどが絡んできて、見飽きさせない内容となっています。


62)  26日  「ハウスシッター/結婚願望」  (錦糸町スカラ座)    1992年 アメリカ
        ☆☆☆
 招待券があったので何気なく観に行ったのですが、なかなか感心する出来ばえの作品でした。
 主人公のスティーブ・マーチンは、日本ではほとんど売れていない(というか知られていない)男優ですが、アメリカではなかなか評価が高いみたいですね。相手役の女優ゴールディ・ホーンも、またしかり。ストーリーそのものは、これといって目新しいものではないのでしょうが、話しの運び方・展開・かけひきなどは、上手ですねえ(もちろん、演技もそうなのです)。そして、主人公を巡るもう一人の女性(ダナ・デラニー)も含めて、誰にでも感情移入できてしまうのですね。
 "嘘から出た誠"などとよく言われますが、この映画は、嘘も(この場合、言葉に出す嘘という他に、自分自身に対する態度としての嘘も含めて)積み重なれば真実になってしまうというお話しなのです。


63)  30日  「リーサル・ウェポン」  (TV)            1987年 アメリカ
        ☆☆
 現在、パート3を公開中です。よくある手の刑事もののアクション映画(この種の映画って、アメリカ人は余程好きなのでしょうか?)で、この映画もまるっきりそのプロット通りです。主人公の刑事が少々奇抜(すぐ拳銃をぶっぱなす)で、老練の黒人刑事とコン ビを組んでいるのが、新しい点ですか。その他は全般的に可もなく不可もなしです。
 日本人(無名)が、この刑事を拘禁先で拷問するのですが、あっけなく、首を折られて死んでしまうのですね。日本人の存在って一体・・・



〓〓〓〓 神 無 月 の 章 〓〓〓〓


64)   1日  「復讐するは我にあり」  (TV)            1979年 日本
        ☆☆☆
 この映画を以前にみたのは、中学生の自分、友人らとよく行った隣の駅の名画座ででした(この作品がメインだったわけではなくて、併映の作品を観たかったのですが)。そのときは、何だか凄い映画だなあと思っていたのですが、今回見直してストーリーは結構と覚えているものですね。ただ、主人公の心理状態や周囲の人物の内面模様がこんなに深く描かれているものだとは気づきませんでした。
 実際にあった一連の犯罪事件(殺人・詐欺行為)をテーマに、その犯人を緒方拳が演じ、父親役に三國連太郎、関係する女性として倍賞美津子・小川真由美が演じ、今村昌平が監督で演出に当たっています。


65)   4日  「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」  (TV)  1989年 アメリカ
        ☆☆☆☆☆
 いや本当に、このバック・トゥ・ザ・フューチャー・シリーズというのは、完成度が高いもので、何回観てもあきることはありませんね。思うに、この作品が世間に与えた影響というのは大きいと思います。一般大衆向けに、時間テーマのSFをあそこまで娯楽に徹して作り込み、かつよくありがちな、つじつま合わせの矛盾といったものがないのですから。
 マーティ・マクフライ役のマイケル・フォックスも、ドク役のクリストファー・ロイド(そもそもこの人は、舞台俳優なのですね)も、母親役のリー・トンプソンも、父親役のマーク・マックルーアも、恋人ジェニファー役のエリザベス・シューも、ビフ役のトーマス・ウィルソンも、登場するキャラクタは各人個性的です。そして、忘れがちな役どころとして、タイムマシンのデロリアンの存在があります。
 随所に散りばまれたジョークも、注意深く観て(聴いて)いると、今でもとても笑えます。そしてこのシリーズは、製作総指揮のスティーブン・スピルバーグよりも、監督・脚本のロバート・ゼメキス(「ロジャー・ラビット」もよい作品でした)の手腕によるところが大きいのでしょう。


66)  18日  「ゴールデン・チャイルド」  (TV)          1986年 アメリカ
        ☆☆
 エディ・マーフィ主演の映画なのですが、彼の出演作にしては珍しいアドベンチャー・コメディものの作品です。設定が少し凝っていたり、特殊撮影も綺麗ではあるのですが、ストーリー運びと主張が甘い気がします。つまりは、必然性というものが感じられないのですね。あと、中途半端にコメディなのも困りものです。


67)  21日  「鉄男」  (テアトル池袋)               1989年 日本
        ☆☆☆
 レイトショーで観ました。以前より(海外でも)話題になっていた映画です。うーむ、これは何と言ったらよいか・・・もう、凄いの一言ですね。まさしくこういうのをカルト・ムービーと呼ぶのでしょう。製作・脚本・撮影・監督と自主映画ののりで(というかそもそも自主映画なのですが)塚本晋也の作品です。これを理解できる人って何人いるのでしょうか。でも、一般の映画館で上映されるくらいなのですから、日本でも評価はされているのですね。
 ストーリーは難解ですが、主演の田口トモロヲがメタリックに変身していく姿を、エネルギッシュにスピーディー映像化されています。モノクロームのフィルムですが、視線はずーっとスクリーンに釘付けでした。
 監督はまた、主人公の仇役の"奴"という人物を演じています。


68)  25日  「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」  (TV)       1980年 アメリカ
        ☆☆☆☆☆
 スター・ウォーズ3部作といえば、中学生・高校生・大学生と多感な頃にそれぞれに映画館に観に行ったものでした。ちょうどその時分にこの手のSF映画を観たということは、その後の人生の趣向に多大な影響を与えたと言っても過言ではないと思います。ですので、(今、観るとちゃちい映画になるのかもしれないけれども)どうしても評価点は甘くなってしまいます。
 でも、出演者のマーク・ハミルもハリソン・フォードもキャリー・フィッシャーも、今は年をとりましたね(ということは映画を観ている自分にも当てはまってしまうわけですが)。出演者の中では、ヨーダが一番好きです。


69)  29日  「鉄男2/BODDY HAMMER」  (シネマライズ渋谷)  1991年 日本
        ☆☆☆☆
 これも、レイトショーで観ました。遅い時間なのに満員御礼でした(渋谷という場所柄もあるのでしょうが)。2となっていますが、前作とは全く別の物語です(でも作品のプロットは同じなのですね)。今度は、肉体が鋼鉄化するばかりではなく、完全無欠の人間銃器となります。
 映像は(製作費に余裕が出たためでしょうか)前作をさらに上回るスケールで、パワフルであります(色も付いているし)。プロットに関する監督の思い入れ(あるいはある種のトラウマ?)が如実に感じられる点は以前と同じなのですが、ストーリーは前作よりもずっと分かりやすく、噛み砕かれているような気がします。この程度の方が親切というものでしょう。より一般的ですし、作品に広がりがでます。
 主演は同じく田口トモロヲですが、加えて複数の出演者がいます(前作は3人だけだった)。そして、"奴"は、監督の塚本晋也が演じているのも同様です。
 いずれにせよ、こういう作品を世に出せる監督が日本にもいるというのは、ある意味で安心できますね。



〓〓〓〓 霜 月 の 章 〓〓〓〓


70)   3日  「青春デンデケデケデケ」  (シャンゼリゼ)       1992年 日本
        ☆☆☆☆
 いいですねえ。こういう映画は、本当に大切にしたいものです。大林監督の作品です。
 時は、1965年。ベンチャーズの音楽に啓示を受けた主人公が、仲間とバンドを結成して、その高校生活をロックでデンデケデケデケと躍動するお話しです。時代背景もそうですし、四国の香川県の片田舎を舞台にしたというのもそうですが、設定がうまい(この辺は、もちろん原作者手腕によるところでしょうが)の。そんななかで、カメラワークも編集もハイテンポで小刻みよく、それでいて、流れの波の振幅は様々に、ちょっとしたエピソードを交えているという、観客を飽きさせずにひとつのしっかりとしたストーリー作りをしているのです。気がついたのですが、今までの大林作品とは少し異なり、情緒に訴えるというよりも有る程度、エンターティーメント性を出している風があります。それでも、観終わると、ああやっぱり、大林映画だなあと。ですので、この手の作品は、好きな人と嫌いな人と本当に分けられてしまうと思います。
 出演者は、馴染みの大林ファミリーも出演していますが、主人公の林泰文(彼も一般からすればそうか)以外の高校生は、殆ど新人に近い人です。個人的には、和尚の息子役が好きですね。


71)  10日  「ボクが病気になった理由(わけ)」  (TV)      1990年 日本
        ☆☆☆☆
      第1話「マイ・スウィート・リトル・キャンサー」
      第2話「ランゲルハンス・コレクション」
      第3話「ハイパー・テンション・ロード」
 観るのは2回目です。たしか大森一樹が製作で、彼を含めて鴻上尚史らがそれぞれのエピソードでメガホンをとっています。3話から成るオムニバス形式のコメディですが、それぞれ、癌・糖尿病・高血圧という代表的な成人病をテーマにしています。
 第1話では、鷲尾いさ子。第2話では、名取裕子・ラサール石井。第3話では、中川安奈・大竹まことの出演です。特に第3話のふたりのやりとりは絶妙で、本当におもしろい。そして、おもしろいだけでなく、観た後にはとても心が温まりまして・・・お薦めです。そしてやっぱり、中川安奈が最後にチェロで奏でる音楽は、エルガーの "愛のあいさつ" だったのです。


72)  12日  「ディレクターズ・カット ブレードランナー 最終版」  (松竹セントラル1)  1992年 アメリカ
        ☆☆☆☆☆
 SF映画の中で好きな作品は、と問われれば、「ブレードランナー」を5本の指には必ず入れるほど、10年前に劇場公開されたときに観たショックは大きかったものです。それ以降はビデオで一度観た(これは残念ながら、ノーカットの完璧版ではなかった)きりだったのですが、今回、リドリー・スコット監督自身の編集ということで、期待に胸を膨らまして、スクリーンに向かいました。
 そして・・・ああ、何ということか、作品が古びるどころかますますのめり込まされるこのフィルムは。アーティストのシド・ミードがビジュアル・フューチャリストで参画し、ダグラス・トランブルが具現化するスピナー(飛行車)や建造物の未来都市イメージ(それが現在、オリエント化するロスアンゼルスで現実の風景となりつつあるのも怖いですね。さすがに酸性雨は降っていないけど)もそうですが、一貫して流れるテーマが映画という媒体を通して(独特の映像作りで)表現されているのですから。以前の編集で冗長すぎた箇所をカットして、より象徴的な場面を付け加えたということですが、今回改めて観ると、前は気がつかなかったいろいろな伏線がまた感動できるのですね。こういう映画は、観れば観るほど味が出るものでしょう。
 原作は、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」ですが、エンディングも含めて映画は結構と異なるところが多いのです。もちろん、テーマとシチュエーションは同じですが。原作は小説としてとてもいい仕上がりですが、映画としては、 映画の脚本はとてもよく練られています。で、また結局、映画の姿がディックの抱いているイメージと合致している気がするのです。
 主役のディカード役のハリソン・フォードも、役柄としては一番いい頃ですね。それにしても、女性レプリカント、レーチェル(ショーン・ヤング)の風情(表情、髪型、着こなし、態度等々)には魅惑されます。


73)  16日  「翔ちゃん空をとぶ」  (銀座シネパトス3)       1992年 日本
        ☆☆
 自主上映に近いアニメーション映画です。SFの分類になるのでしょう。実は異星人、という子供が、宇宙悪の侵略者から地球を守るために戦うというお話しです。なんだか安直な内容ではありますが、地球での育ての若い母親との愛もありまして、まあよしとしましょう。


74)  16日  「200X年・翔」  (銀座シネパトス3)        1992年 日本
        ☆
 上記映画の実写版ですが、内容は異なります。
 ブラックホールから放出された素粒子が人間の胎児のDNAに影響を及ぼし、生まれた子供は、その結果異常な速度で成長をする(4歳児で中学生相当)のです。その子供達に、次々と変貌する街の人々が襲いかかるというストーリーなのですが、逃走シーンも含めて、 だから何がいいたいのかがよくわからない(ある意味では破綻している)仕上がりになってしまっていて、説得力と面白味に欠けます。設定をうまく活かせば、それなりに興味深い映画になるような気がするのですが・・・残念です。


75)  18日  「再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ」  (TV)  1988年 アメリカ
        ☆☆☆
 マイケル・J・フォックス主演の映画ですが、「バック・トウ・ザ・フューチャー」とは、全然異なりとてもシックな役作りをしています。
 作家希望で、ニューヨークに出てきて出版社に勤める主人公。同じ田舎で彼に憧れ半分でついてきて結婚した妻(フィービー・ケイツが演じているのですね)。ところが、思ったよりもうだつが上がらず、自分の作品も書けない主人公。その反面ふとはじめたモデルで人気が出た妻は、旦那と別れてパリに行ってしまっているのです。出版社までもとうとう首になってしまったそんな折りに、モデルの元妻がニューヨークに戻ってくるのですが、酒とドラッグに溺れる主人公が彼女を追いかけて、未練がましく情けないのです。でも、こういうシチュエーションって、さもありなん、ですね。
 でも、その主人公にも新しい恋がはじまるのを予感して終わるのが、せめてもの救いというものでしょう。


76)  21日  「キスへのプレリュード」  (津田沼レッツシネパーク)  1992年 アメリカ
        ☆☆☆
 結婚式の当日、ふとしたことがきっかけで、花嫁と死期の近い老人が、精神と肉体が入れ替わってしまうという設定です。よくあるパターン(「転校生」では、高校生の男子と女子でした)の話しですが、陳腐なストーリーとしていないのは立派です。
 パーティーでのふたりの出逢いから始まって、つきあいだして結婚まで臨む過程が丁寧に描かれてあって、盛り上がったところに前述の事件が起こるのです(この辺の運び方は上手)。そうして、ハネムーン時から疑問に思っていた花婿が、帰国後に本当の精神の彼女を探り当ててからの彼の行動は、愛の強さというのでしょうね。
 それにしても、最後はハッピーエンドで本当によかった。


77)  21日  「ディス・イズ・マイライフ」  (津田沼レッツシネパーク)  1992年 アメリカ
        ☆☆
 離婚してしまい、娘ふたりと共に生活をする母親。その母親がデパートの化粧品売りから、コメディアンに職業替えしてしまうのです。それに伴っての生活の展開ぶりが、娘であり姉である16歳の少女の視点から、描かれ説明されています。
 当人も母親も幼い妹も、それぞれに主張がありまして、その辺の駆け引きはおもしろいですね。最後には、精神的な共存性をお互いに見いだし抱き合って終わります(この辺は少し安直か)。
 これが私の人生、というように、"マイ" を強く発音する映画です。


78)  22日  「キャット・ピープル」  (TV)            1981年 アメリカ
        ☆☆☆
 この映画は、古い映画のリメイクだったのですね。普段は人間の姿なのですが、人間を愛してしまうと、ピューマ(だと思う)に変身してしまい、場合によってはその相手に咬みついてしまう猫族の悲しさかな。
 主役の猫族の美女をナスターシャ・キンスキーが演じているのですが、確かにこの人の顔立ちは、分類からすると猫族かもしれませんね。それにしても、彼女の悩ましいシーンは結構ありました。


79)  23日  「シャレード」  (TV)                1963年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 本当にこの時代のハリウッド映画は、粋でお洒落な作品が多いものです。この「シャレード」も多分に漏れません。
 サスペンスなのでしょうが怖くなく、でもそれでいて追跡シーンや謎解きの場面もちゃんと登場して、その舞台がパリの街なのですから観ていて飽きません。そうして、最後にはどんでん返しと、また最後の最後には別種のどんでん返しがあって、映画のよさとはこういうところにあるのでしょう。
 そして、この映像のよさは、主役のオードリー・ヘップバーンと相手役のケーリー・グラントがスクリーンで動き回るからこそなのです。
 映画もそうですが、主題曲もとってもよく耳にする音楽ですね。


80)  28日  「アイガー・サンクション」  (TV・VTR)      1975年 アメリカ
        ☆☆☆
 クリント・イーストウッド主演・監督の作品です。この人の一連の映画は、アクションものが多いのですが、ここまで商業ベースでよい作品を生んでいるのは、やっぱり立派だと思います。この作品もアクションが主体なのでしょうが、他の(彼以外のでも)作品と大きく違うところは、これが希にみる山岳映画だということ。
 アイガーと言われて、すぐにあの山かと思い浮かべられる人は通です。スイスアルプスだと、マッターホルンなどは日本でも有名なのでしょうが・・・しかしながら、アイガーは、ベルナー・オーバーラント山群、グリンデルバルトの名峰なのです。映画のシーンと同じ角度で、実際に間近に見た身からすると、もうそれだけで感動ものです。
 さて、映画は諜報部員の主役が密名を受けて、犯人を追ってアイガー山岳行パーティーに同行するのですが、見せ場は後半のアイガー北壁を攻めるところでしょうか。これが文字どおりのサンクション(自然の制裁)でして。最後に生き残った主人公が、山岳鉄道の窓から脱出するのは奇抜です。実は、犯人は・・・という謎解きもあります。


81)  29日  「エンジェル・僕の歌は君の歌」  (錦糸町スカラ座)   1992年 日本
        ☆☆☆
 織田裕二と和久井映見主演の作品です。敢えてスクリーンで観る内容でもないなあと思っていたのですが、以外とよかったですね。最初のオープニング(テロップがでるところですね)場面で、ふたりの出逢いから、5年間の様々なエピソードがフラッシュ・バックの形で、過不足なく映像化されています。この辺りは(よく使う手ですが)いいですね。
 で、本編はふたりの別れのシーンから始まりまして・・・ところが、織田裕二演ずる竜彦が、ふとしたことから和久井映見演じる香織(別れた彼女)の寿命が残り1週間だと知ってしまいます。そこで、改めて思い直した竜彦が香織のためにできることを探し奔走するのです。
 少々無理な設定も、大地真央演じる天使(これがかわいく魅せているのですね)の存在によって、さりげなく説明されているし。途中に中だるみもありますが、後半の盛り上がりは、まあ、よしとしましょう。そうして、ラストシーンの締め方は、とてもお上手で、これだけでもこの映画を観る価値があります。三木のり平が、重要な役柄を果たしています。


82)  30日  「きらきらひかる」  (シネスイッチ銀座)        1992年 日本
        ☆☆
 笑子(薬師丸ひろ子)と睦月(豊川悦司)と紺(筒井道隆)の3者が繰り広げる物語なのですが、これが難解なのですね。いろいろな意味で。
 睦月と紺は元々同姓愛者どうし。睦月と笑子が結婚(といっても夫婦の関係はなし)。その新居へ紺が現れて、奇妙な3角関係が始まって、それでも3人とも仲がよいという・・・ちょっと困ってしまいますね。ここまで観客に不親切な話しだと。海からの帰り道で、しまうまに遭遇するシーンや、笑子が童謡の"大きな古時計"を歌うシーンなどは、何か意味があるのでしょうが、頭を抱えました。原作もこのようだったらどうしよう。
 でも、撮影の仕方はどの場面も綺麗でしたね。



〓〓〓〓 師 走 の 章 〓〓〓〓


83)   5日  「私をスキーに連れてって」  (VTR)         1987年 日本
        ☆☆☆☆
 それは、社会人一年目の年でした。"スキーが好き"と胸を張る若者(自身も含めて)の影響下、世の中のスキー場造成ブームのさなか、この映画が作られたというのは、まさにタイムリーといえるでしょう。そういう意味では、このホイチョイ・プロダクションの第一作目は、企画的にも成功したのです。脚本が、一色伸幸ということもありますが。
 冷静に観ると、ストーリー的には凝ったところがあるわけではないのでしょうが、史上希にみるスキー映画ということに加えて、当時の原田知世と三上博史をはじめとするキャストとユーミンの音楽を主体とした粋な演出が功を奏したのでしょう。
 確かにこの映画を観ると、スキーに行きたい気持ちがふつふつと湧いてくるものです。


84)   7日  「最後の戦い」  (シネセゾン渋谷)           1983年 フランス
        ☆☆☆
 リュック・ベッソン監督の長編処女作品です。レイトショーで観ました。「グラン・ブルー」などからは想像できませんが、SF映画なのですね、これが。
 モノクロームの映像で、基本的に台詞はなし。しかしながら、スクリーンから伝わるこの気迫はなんなのでしょうか。自己の映画作りを確立している人ですよね、絶対。そして、そういうのって羨ましくもあります。
 核戦争後の荒廃した都市を舞台にした、男たちの沈黙のサバイバル。そして、廃虚の中で何故か卓球を行うシーンも印象的でした。
 主人公の仇役を、エンゾーさんが演じています(これがまた、強いんだ)。


85)  15日  「永遠に美しく・・・」  (日比谷スカラ座)       1992年 アメリカ
        ☆☆☆
 観ていて単純におもしろい映画というのも疲れなくていいものです。それも、スパイスの効いたブラック・ユーモア溢れる作品であれば、奥も深い。ロバート・ゼメキス監督は、娯楽映画が得意ですね。
 メリル・ストリープ、ゴールディ・ホーンのふたりの女性を巡っての、ブルース・ウィールズの演技も意外性があってよいですね。そして、最後に人生の貴さを訴えているのにも、納得させられます。
 特殊効果撮影は、ILMですので、文句なくお上手です。こういうさりげないSFX技術は大切なのです。


86)  23日  「ローマの休日」  (TV)               1953年 アメリカ
        ☆☆☆☆
 名匠ウィリアム・ワイラーの監督作品でも、名男優グレゴリー・ペックの作品でもなく、どうしたってこれはオードリ・ヘップバーンの作品なのです。この映画で実質上のデビューを飾った彼女は、この年、文句なしのアカデミー主演女優賞を受賞したのでした。
 何をどうしたって、(特に女優ですが)演技者には、その役を果たすのにそれ相応の年齢があるのです。それは演技が上手下手というのを通り越して、一番きらきらと輝いている瞬間なのです。この作品のアン王女とオードリ・ヘップバーンの存在というのはまさにそれに当たるのでしょう。
 そんな瞬美が、フィルムに焼き付けられて永遠に残るのですから、映画とは素晴らしいものです。


87)  27日  「遊びの時間は終らない」  (VTR)          1991年 日本
        ☆☆☆☆
 アルゴプロジェクトの作品です。
 本木雅弘演じる主人公の警官が、訓練の一貫として銀行強盗を演じるのですが、それだけの設定で飽きさせず、2時間を優にもたしてしまうのですからすごいものです。銀行に立てこもった後の、原田大二郎演じる県警の次長との知恵比べのおもしろさに加えて、審査役にマスコミ(大衆)を選定させてしまって自ら進行を見張る、萩原流行演じるTV局のキャスターの茶々入れなど、つい手を叩きたくなります。
 自分が何かになりきって、まじめに演技をするというのは、とても気が張ることでありますが、その実、とても楽しいことでもあるのかもしれません。自身に対して、認可されたという意識のまま、全く違う自分になれるのですからね。


88)  30日  「ゴジラVSモスラ」  (池袋東宝)           1992年 日本
        ☆☆☆
 そして、今年はモスラが現れたわけです。前作で監督した大森一樹氏は脚本に専念ということで、監督は大河原孝夫氏(「超少女REIKO」に続いて2作目か)でありました。
 "極彩色の大決戦!"という売り文句だけあって、ゴジラ・モスラ・バトラの三つ巴の戦闘シーンは、映像美でありました(川北氏の特撮もとりあえず満足)。ただし、設定とストーリーは安直すぎます。以前のシリーズの「モズラ」と「モスラ対ゴジラ」を変に合わせた話しの運びとプラス・アルファが逆に疑問点を多くしている気がします。特に、結局バトラの存在って一体・・・
 それでも、幼虫の姿も成虫の姿もモスラはかわいかったので、よしとしましょう。
 来年は、とうとうメカゴジラが登場みたいですね。


・・・戻る  |  次の年へ

あきやひろゆきのホームページ