◆◆◆ 電脳PiCARO ◆◆◆第3弾記事

YSGA一押しシミュレーションゲーム
(RHINO)Decision in France徹底紹介

*** ゲーム紹介 ***


ゲームの概要

Rhino社の「Decision in France」(以後DiF)は、ノルマンディーの戦いから始まる1944年のフランス解放をテーマとした作戦級のゲームです。
DiFは、6月25日から9月4日までの期間を、1ターン=3日、全24ターンでプレイします。
マップは、22×34インチが一枚のみ、1ヘクス=8.5マイルに相当し、中央にParisが7ヘクスを占め、西は、St.Malo、Rennes、Angers、東は、Antwerp、Namur、Verdun、南は、Tours、Orleans、Troyes、が含まれています。
駒数は400個。4ステップの師団が主(最大は6ステップのドイツ軍第1SS装甲師団)ですが、分割用のより小規模な部隊や軍/軍団HQ(司令部)、シルエット・ユニットと呼ばれる重装備部隊、港湾守備隊等を表わす臨時編成部隊など、1944年の戦いを語る上で必要と思われるユニットは、ほとんど含まれています。
ルールの項目数は、選択ルールまで含めれば44項目に上りますが、英文で16ページに過ぎず、細かいルールも師団規模の西部戦線ゲームにありがちな“大味な”展開を避けるという点で成功しています。


プレイの手順は次のようになっています。

連合軍プレイヤー・ターン
1. 初期フェイズ(増援、燃料、天候などを扱う)
2. 移動フェイズ(戦術、通常、作戦の三種)
3. 戦闘フェイズ(戦力比、コラム・シフト、任意)
4. 補給フェイズ(消耗、補充)

ドイツ軍プレイヤー・ターン
1. 移動フェイズ
2. 戦闘フェイズ
3. 補給フェイズ

このように、プレイの手順は単純であり、ユニットの色分け、各種マーカー類、図表類のまとめ方も煩雑さを取り除く助けとなっており、プレイ・アビリティーも良好です。

ルールの詳細

スタッキング限度は、1ヘクスに2個と半個師団で(全ての非師団ユニットと師団の最後の1ステップは半個師団扱い)、さらに、3個シルエット・ユニットと軍/軍団HQを1個ずつ加えることができます。
“戦場の霧”を表現するために、相手側のスタックは最上部のユニットしか見ることができない上、移動マーカーによるユニットの隠蔽や、軍団HQとスタックしているユニットは軍団ディスプレイに配置できるルールがあります。

移動は、次の三種に分けられています。
1.戦術移動
2ヘクスまで(河川や湿地越えならば1ヘクス)ならば、移動ポイント・コストも敵支配地域も無視できる。

2.通常移動
ユニットに表示されている許容移動力で移動を行なう。

3.作戦移動
戦闘に従事しなければ、非自動車化ユニットで“許容移動力+2”、自動車化ユニットで“許容移動力×2”に移動力を増加でき、混乱マーカーを置くならば、敵ユニットに隣接して移動を終える事もできる(プレイヤー・ターン終了時に取り去られるため、攻撃ができないことを表わしている以外に意味はない)。

また、移動していない友軍ユニットが存在すれば、自動車化ユニットで“+2”、非自動車化ユニットで“+1”の追加移動力を消費することで敵支配地域でも移動を継続できるため、支配地域による拘束力は弱いものとして設定されています。

敵ユニットに隣接しないヘクスに1ヘクスだけ移動したユニット以外は、移動マーカーが置かれます。この移動マーカーは、ユニットを隠蔽するだけでなく、戦闘の際に大きな効果をもたらします。
戦闘の際に、移動マーカー(混乱、予備も)を持たないユニットは、準備防御ボーナスとして防御戦力が2倍になります。
この移動マーカーと準備防御のルールこそが、DiFを傑作と言わしめるルールと言って良いでしょう。
ゲーム序盤の膠着状態の期間は、ほとんど損害を受けていない強力なユニットが準備防御を行なっているため、連合軍の攻撃は尽く撃退されます。敵ユニットから1ヘクスだけ離れる移動であれば準備防御の効果は失われないため、遅滞戦術も効果的です。
しかし、中盤に差し掛かると、蓄積した損害によって、あるいは、絨毯爆撃によって、戦線にも綻びが見え始めます。
そして、一度戦線が突破されたならば準備防御の行なえない機動戦が始まり、ドイツ軍は、包囲を免れた敗残部隊と戦略予備である第15軍を用いてSeine川以東の防衛を試みることになります。

前述した、ただ一項目のルールによって、これほど鮮やかに膠着状態から機動戦まで表現しているゲームを私は知りません。それゆえ、DiFを傑作と呼んでしまうのです。

DiFは、師団規模のゲームでありながら、個々のユニットのキャラクター性も失っていません。戦闘ルールを紹介します。

DiFの戦闘はメイ・アタックで、戦力比をコラム・シフトさせて解決します。“物量の戦いに戦力比は適さない”という意見がありますが、DiFでは、単一の戦闘に両軍が7ステップ以上をそれぞれ投入している場合には、2個のダイスが振られます(マグニチュード・システム、以後、M)。これによって、大規模な戦闘では両軍の損害が大きくなることが再現されます。退却/前進のためのダイスも損害とは別に振られるため、様々な戦闘結果が生じます。
地形効果や前述の準備防御の他にも、様々な修正があります。

1.準備強襲
移動していない軍団HQが攻撃に参加していれば、右に1コラム・シフト。ただし、ドイツ軍はネーベルヴェルファー旅団を参加させ、攻撃終了後に損害とは無関係に除去しなければ得られない。

2.エリート・ボーナス
攻撃側が、エリートに分類されているユニットを、M1で4ステップ、M2で8ステップ、参加させていれば、右に1コラム・シフト。ただし、ドイツ軍の場合には、適切な軍団HQと共に参加していることが条件。

3.連合軍の航空/砲兵支援
晴天時、連合軍の攻撃は右に1シフト。ドイツ軍の攻撃は左に1シフト。
荒天時、全ての攻撃が左に1シフト。

4.艦砲射撃支援
連合軍登場ヘクスへのドイツ軍の攻撃は、左に2シフト。沿岸ヘクスに対するドイツ軍の攻撃は、左に1シフト。

5.装甲優越(平地/森林ヘクスのみ有効)
M1で、全て/4ステップ以上が装甲、M2で、8ステップ以上が装甲の場合、有利な方向へ1シフト。 両軍が条件を満たす場合には、無効。
また、防御側が、M1で2装甲ステップ、M2で4装甲ステップを持つと、攻撃側の装甲優越は無効。
重/駆逐戦車大隊は3ステップに相当。高射砲連隊は、装甲優越を無効にするときのみ3ステップに相当。

6.重戦車ボーナス(河川/湿地越えは不可)
重/駆逐戦車大隊が戦闘に参加していると、有利な方向へ1シフト。重戦車ボーナスのために使用されたユニットは、装甲優越の計算に使用できない。
高射砲連隊は、防御時のみ重戦車ボーナスを得られる。

7.AVREユニット
要塞/都市攻撃の際に、1個イギリス軍歩兵師団の攻撃力を2倍。

8. 解放
フランス軍機甲師団が、Paris攻撃に参加していると右に1シフト。

損害は、特殊なコラム・シフトを受けるために使用されたユニットや、最強のユニットから出さなければならないため(優先順位が決められている)温存はできず、攻撃側プレイヤーに決断を迫ります。これだけ多くの修正があると煩雑なように感じるかもしれませんが、戦闘結果表の下に一覧表がまとめられているため、プレイ・アビリティーは損なわれていません。

戦闘結果に前進許可が含まれていれば、防御側の退却、攻撃側の戦闘後前進が行われますが、前進の結果を増減させるために“断固とした強襲/防御”の宣言が行なえます。“断固とした強襲”は、前進の可能性を増すために追加の1損害を受けるもので、戦闘解決の前に宣言を行ないます。“前進+1”になるだけでなく、低比率の攻撃での前進許可が増える、という利点があるのですが、戦闘結果によっては効果が無い場合があります。また、防御側が前進結果を半減する地形で守っている場合には、半減する前に“+1”が行われるため、効果が無駄になる場合もあります。
“断固とした防御”は、戦闘結果を確認した後に宣言が行なえます。“前進−1”の効果が得られるかと両軍の損害が増加するかの二点についてダイスを振ってチェックします。
戦闘後前進によって河川を越える場合にもダイスを振ってのチェックが必要であり、河川越しの防御の利点が表現されています。
戦闘後前進を行なうユニットは、1ヘクス分の前進をコストとして支払えば、機動強襲として更に攻撃を行なえます(スタック毎)。
オーヴァーランは、複数ヘクスから共同で行なえますが、10対1以上の戦闘比(コラム・シフトの利用も可)が必要です。オーヴァーランを達成したユニットは、それ以上の移動を行なえませんが(戦闘フェイズに7:1で解決、ただし、防御側は必ず除去)、残りの移動フェイズ中、目標ヘクスの敵ユニットは存在しないものとして、他のユニットは移動を行なえます。

このように、DiFの戦闘には様々な要素が含まれています。明確な指揮統制ルールとは言えなくても、有利に戦うためには史実に沿った編成が望まれたり、移動や戦闘の各場面において、二者択一の選択を迫られることが多くなっています。ゲーム開始時には、わずか11ヘクスでしかない戦線で、しかも、中盤までは戦線に特筆すべき動きが現れないにもかかわらず、プレイ後に充実感を感じられるのは、その決断の多さのためでしょう。

予備には、二つのタイプがあります。

1.後続予備
防御側ヘクスから3ヘクス以内に位置すれば、戦闘後前進に参加でき、防御側の占めていたヘクスに進んだ後は、機動強襲を行なえます(コストが支払えれば)。

2. 防御予備
防御ヘクスの2ヘクス以内に位置すれば、行動できます。非自動車化は1ヘクス、自動車化は2ヘクスの移動が行なえ、スタッキング限度の範囲であれば、防御ヘクスに移動して、戦闘に参加できます。

補給線は、補給源につながる道路まで5ヘクス。敵ユニットや友軍ユニットの存在しない敵支配地域により妨害されます。
補給切れのユニットは、以下のペナルティーを被ります。

1.戦術移動のみ可。
2.攻撃戦力は、ステップ数と同値。
3.準備強襲は不可。
4.戦闘後前進は1ヘクスのみ。
5.消耗チェック

消耗チェックは、補給切れユニットのステップと同数のダイスを振り、ユニットの種類によって設定されている消耗値以下のダイスの目の数だけステップ・ロスします。

補充ポイントは、装甲、歩兵、空挺、の三種に分けられ、ターン・トラックに記載されている予定に沿って到着します。ドイツ軍は天候によって更に増加し、曇天で追加1補充ポイント(偶数ターンは装甲ポイント)、荒天で1個シルエット・ユニットが補充されます。

連合軍は、増強ポイントを使用して、毎ターンイギリス国内から増援ユニットやトラック・ポイントを運びます。トラック・ポイントは、燃料の供給、補給堡の移動、トラックの購入(歩兵を自動車化できる)に使用します。これらのルールが連合軍にとっては、進撃の足枷となります。

航空ユニットは、配置されたヘクスとその周囲、計7ヘクスの道路移動率を1ポイントに変更します。連合軍のみ、航空ユニットの存在するヘクスに進入してきたドイツ軍ユニットに対して機銃掃射を行なえます。機銃掃射は、ステップ・ロスを要求する厳しいものであり、ドイツ軍の自動車化ユニットが大幅な機動を行なった場合には、航空ユニットが存在しなくても行われます。

絨毯爆撃の実施には数多くの制限が設けられているのですが、最強の防御ユニット損害を与えた上で“3コラム・シフト”の修正が得られます。適切に行なわれたならば、破壊的な効果を生み出します。

連合軍ユニットが、都市や要塞港湾に隣接したならば、ドイツ軍の臨時編成部隊が登場します。これらは、カップから無作為に引かれるのですが、連合軍側のパルチザンが引かれる場合もあります。

師団規模のユニットは、プレイ中のいかなる時にでも分割ユニットを創設できます。分割ユニット自体は補充を受けられませんが、補充と同様の方法で師団ユニットと再統合が行なえます。

選択ルールは、8項目設定されています。 “空挺強襲”のルールは、ドイツ軍に防御不可能なまでの致命傷を与える事も可能なため、使用を控えた方が良いと思いますが、ドイツ軍の死守命令を表わす“総統の意志”ルールは、史実派のプレイヤーには是非とも使用して欲しいルールです。

まとめ

選択ルールも含めてプレイをしてみると、他のノルマンディー戦のゲームが物足りなく思えるほど充実したプレイを堪能できます。膠着状態から機動戦まで(包囲戦も含めて)自然に再現できる基本システムの優秀さは、師団規模の作戦級ゲームの模範となるべき可能性も感じさせます。二日間で全ターンのプレイが余裕を持って行なえる点も、高く評価できる点です。
上陸から行なえない点や西部戦線全域を扱っていない点が欠点と感じられるかもしれませんが、他のライバルと呼べるゲームと比較しても、DiFの完成度の高さは特筆すべきものがあります。
簡単な手順でありながら史実の再現性が高く、プレイ・アビリティーを損なうことなく各部隊の特徴が表わされている点で、DiFは、私にとってノルマンディー戦のゲームの決定版と言える存在です。

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