草木染のための

生糸の灰汁練について

(灰汁練の仕方)

 絹に植物染をしようと思えば、どうしても避けて通れないのが灰汁練りです。                                 よい染めをしようと願うほどに重要になってきます。それは染めの為の下拵えというものの、灰汁練りをするか、しないか、又そのよし悪しが、植物で染める上で重大な結果をもたらします。よい灰汁練りが出来れば染めの半分以上は出来たと言っても過言ではないと思います。 

ネリについて

 天然の各種の繊維は繊維成分の外に、自然についたものや付加されたとみられる各種の不純物を多く含んでいるのが普通である。生糸はセリシンとフイブロインと少量の不純物で出来ている。生糸を「練る」と言うことは織物や他の製品にした時の風合い等の為に、成分であるが不要なものとしてこのセリシン質と不純物を除去することをいいます。                                                                     セリシン質、不純物を除去して減った重さのことを「練り減り」といい ℅ で表します。

 丸練り糸 セリシン質をほとんど除去したもの。練り減り                                 約20℅~25℅ 多くの織物がこれです。
  半練り糸 セリシン質の半分を除去したもの。

生糸の灰汁練の仕方の一例 (袋練り)

・生糸 21/10合 約210デニ-ル (揚げ回数2000回 枠周約1.27m)                            重さ 1000g を丸練りする。          

・用意するもの

浴比 (1:25) 25ℓ  25ℓ以上の容器が必要。                                                藁灰汁 PH10.1以上 51ℓが必要 (25ℓ+予備灰汁26ℓ)

・練る時間 100°C×7時間位

注意点

・藁灰汁は稲藁の黒灰を使用する。

・練る容器には底板をいれる。   
・前日に生糸を水又はPH9位の灰汁に一晩浸けておく。

・当日練袋に入れ100°Cに熱した灰汁の中に浸ける。

・予備灰汁も別の容器で100°Cに熱しておく。7時間の間の足し灰汁に用いる。

・一晩放置、翌日上げる。水洗して終わる。

長時間練るため生糸を適当な綛数で束ねておく。ビニ-ル紐を通す。

練袋に入れる。ビニ-ル紐は外に出しておく。

練袋に入れたところ。ビニ-ル紐を袋口と一緒に縛る。

容器に入れて練っているところ。                                 (容器 75ℓ 生糸2.5㎏) 

練り上げ後、真珠の様な光沢になり、「絹鳴り」がします。

  灰汁練りは、生糸の数量、太さ、撚数、容器の大きさ、PH濃度、火力等、いろいろ条件により練る時間はかわってきます。又長時間の作業の為、練りムラ、毛羽だちをおこし、染めムラの原因になります。最後の染め上がり迄何十回となく水をくぐります。糸の乱れのないよう丁寧な扱いが求められます。

 前田雨城 著 (日本古代の色彩と染) の中に

「延喜式」の昔にも、藁灰の灰汁による練りをしていた。この灰汁は、染色の媒染剤としても使用されるもので、多少の残存があっても、以後の加工の害にはならない。その時代ですら、旬日(10間)の川流しを第一の条件にしている。 と記されています。 灰汁練り はこの「第一の条件」以前の作業として、どうしても、必要なものです。  灰汁練り後の絹糸は、何年経っても黄渇変をおこすことはありません。

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藤原益夫

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