歌志内市のまちづくり


歌志内市は空知の赤平、芦別などと同じく炭鉱で栄えた町です。 炭鉱の閉山で人口減少が続き、皮肉にも今は日本一人口の少ない町として話題になったりしています。 また1999年の統一地方選挙では市議会の定員に立候補者が満たないなんて珍事も起こったりしていました。

遠くからそんなことだけを耳にして私の心の中は歌志内というとついつい負のイメージで捉えてしまいがちでした。 たぶん、中空知の市町村の中でもかなりまちの状態は悪いのではないかと考えていたのです。 市の財政などは当然のことながら厳しいのかもしれません。 しかしそれとは関係なく歩いて見た印象はとても明るく活気があり私はびっくりしてしまいました。

歌志内の町を歩いて気が付いたことがいくつかあります。 ひとつは本当に今、住んでいる人のためのまちづくりがしっかりされているということです。 旧炭鉱住宅の立て替えはかなり進んでいてスイス風の新しい町営住宅が立ち並んでいます。 また町の手によって新しい商業施設、コミュニティースペースが複合的につくられそこはとても活気がありました。 加えて歌志内チロルの湯がレクレーションスペースとして低料金で楽しめる環境になっているのです。 チロルの湯の横には老人福祉施設も併設されていました。 なんともうまい具合に幾つかのものを統合した形で新しい生活空間を生み出しているもんだと本当に感心してしまいました。

ふたつ目は炭鉱の遺産を最小限度必要な程度大切に保存しているということです。 博物館も小さいながらあり、そこには収蔵庫がありかなりの資料が保存されていました。 建物だけ大きくて内容が中途半端な上砂川町の博物館よりかなり好感が持てました。 また旧北炭の迎賓館、北炭空知倶楽部、映画館などの建物も整備され公開されています。 市町村によっては炭鉱抜きの新しいまちづくりだけを考えている所もありますが、 町の琴線として残すものは残すという考え方は見習うべきものがあるでしょう。

みっつ目は限られた予算の中でかなり効率的に町の運営をしているということです。 観光面ではチロルの湯はテーマパークを造って苦しんでいる市町村に比べはるかに投資は少なく効率的です。 また温泉とうことで地元の人の利用もでき一挙両得です。 また博物館にしても建物自体は本当に質素なものでした。 たぶん、歌志内市は周辺市町村よりまちづくりが遅れたため、 その教訓を生かしてまちづくりをしてきたのかもしれません。

私が歩いてきた旧産炭地の市町村の中で最もいいまちづくりをしているのは歌志内市ではないかと思います。


北海道旅情報巻頭  3-1.炭鉱を旅する
歌志内市のまちづくり