1996年5月30日に、長岡京市役所にでかけ、下記の請願書を届けました。

5月31日には、朝日新聞(京都版)が早速、この請願書について報道しました。


   長岡京市長・長岡京市児童対策審議会会長あて

   長岡京市児童対策審議会の公開についての請願書

 長岡京市では、昨年(一九九五年)九月一九日から、児童対策審議会を一〇年ぶりに再開することになりました。新聞報道その他によれば、この審議会は、「市長の諮問に応じて児童全般に関する必要な調査、審議を行なう」というもので、委員は一四名だとされています。同審議会の諮問内容は、「1長岡京市の現行保育料について、2長岡京市立公立保育所の効率的な運営について、3保育ニーズの多様化への対応について」の三つの項目で、これら三点について一九九七年三月までに話し合いを進め、答申を出す予定とのことです。

 市民から隠れたところでの密室論議

 二月、私たちは、市民として、この審議会の公開を求めましたところ、市の担当者より、「1審議会の委員は、市長の判断により、氏名・肩書きを公開しない、2審議会については、当日の審議会で審議会委員の多数(九対一)により否決したので、傍聴など認めない、3審議会の議事録はとっていないので公開しない」との回答がありました。

 このように、驚くほど徹底した非公開=秘密主義の審議会のあり方は、他の自治体にも例を見ないものです。審議会という制度に当然にともなう、広く市民に開かれて、行政から独立して自由に審議するという、「公開主義の原則」に反しています。少なくとも、長岡京市の審議会条例の趣旨そのものに反する審議の進め方だといわなければなりません。

 「審議が公開されれば自由な審議ができない」というのが理由であるとすれば、本末転倒です。行政追随の審議の危険性を感じるだけでなく、市民に対して責任を負って審議するという点で、委員の誠実さを疑わせるものです。さらに、公開審議を避けることは、専門的知識や経験による自信に裏付けられているはずの、各委員の審議能力について疑問を生みます。誰が委員であるかさえ公開しないという、国や他の自治体の審議会運営に見られない長岡京市の態度は、ますます、この疑問を強くするのです。

 行政から独立した自由な審議のためにも審議会の公開を

 少なくとも、このような非公開の審議は、行政公開や手続的正義の原則に反する、違法で不当なものです。直ちに、これを改め、児童対策審議会について、傍聴を認め、議事録をはじめ、審議の内容を市民に公開して、行政から独立した自由な審議を進めるよう要望いたします。

 長岡京市の保育行政に求められている保護者・市民の声の反映

 保育所は、児童福祉法に基づく、営利を目的としない児童福祉施設です。市立保育所は公の施設であり、民間保育所も、設置や運営について公的費用を支給される、住民のための公共的性格をもつ施設であって、子どもを育てながら働く、勤労者家族にとっては、きわめて大切な施設です。

 ところが、長岡京市の保育行政をめぐっては、これまで、日本全国から注目された、保育所の本来のあり方とは異なる、多くの事件が生じています。

 まず、朝、夕の長時間保育について、保育料以外に「時間外受託料」を徴収することを、長岡京市が一方的に決定したところ、多くの保護者が強く反対し、裁判提訴とその後の裁判による和解(一九八一年一二月九日)を経て、市は、時間外受託料の徴収を撤回しました。

 一九八七年、長岡京市立保育所で、お散歩のときに「カラー帽子」を着用することを、市や所長が、保母や保護者に十分な説明なく決定し、関連して、指示に従わなかったことを理由に、クラス担任保母職員(七一名)を「処分」しました。この「処分」は、その後、法律専門家(弁護士、法律学者ら四名)が、明確な法的な根拠のない、違法なものであるとの意見書を市に提出しました。このカラー帽子事件は、長岡京市の「管理主義的」保育行政・保育所運営ぶりに、マスコミが注目し、全国的に知られることになりました。

 その後も、市立保育所で、一三年間も正規保母職員を採用しないというギリギリの保育体制の下で、管理職員が生理休暇取得を妨害した事件が発生し、京都弁護士会人権擁護委員会は、一九九二年二月二五日、今井市長に、人権侵害を改善するように要望書を送りました。

 さらに、一九九五年三月一七日には、同じ京都弁護士会人権擁護委員会は、パート保母を含め一日に保母が何人もコロコロと入れ替わる「細切れ保育」体制が子どもの権利を侵害するとの保護者の申立てに対して、昼休みの保育体制が最低基準違反であること、保護者会の文書活動の妨害を改めることを要望し、保護者と話合いを進めるべきだと指摘しました。

 このように、長岡京市の保育行政は、子どもの権利、保護者の自由や人権、保母職員の人格権や労働法上の権利の侵害をはじめ、法律専門家を含む第三者から、多くの問題点が具体的に指摘されてきました。

 審議を公開して市民の論議に基づく説得力のある保育行政を

 長岡京市では、保育料が九年連続して引上げられ、議会での審議に基づく条例改正の手続もなく、保護者への説明会も開催されていません。その結果、以前は同じ水準にあった隣りの向日市と比較しても、月二万円(年間二〇万円以上)もの保育料の格差さえ生じています。

 一方では、右のような保育内容・保育体制、保育所での子ども・保護者・保母職員の人権侵害も指摘されているなかでの、一方的な保育料引き上げは異常と考えます。

 このような長岡京市の保育行政は、まず、法に基づいたまともな姿に戻ることが必要です。少なくとも、児童対策審議会では、このような事実をふまえて、市民や保護者の意見も反映する形での論議が求められています。

 右のような考えから、私たちは、審議を公開する方向で改善をいただきますようにお願いいたします。つきましては、左記の五項目について要望し、憲法上の権利に基づいて請願いたします。なお、公開できないときは、その理由をできるだけ詳しくご回答いただきますようにお願いいたします。

 なお、左の請願項目は、厚生省中央児童福祉審議会の「中央児童福祉審議会の公開について」(平成八年一月三一日 同審議会総会了承)にほぼ沿った内容であることと、この請願書を広く公開する予定であることを申し添えます。

 請願項目 長岡京市児童対策審議会の公開について

 一 長岡京市児童対策審議会の委員の氏名、職業について、公表して下さい。

 二 長岡京市児童対策審議会の開催日時、場所を公表して下さい。

 三 長岡京市児童対策審議会について、会議の公開又は議事録の公開を行って下さい。

  1. 議事録の公開を行う場合は、事務局で速やかに作成し、委員に諮った後、できる

  だけ速やかに(少なくとも一か月以内に)公開して下さい。

 五 諮問・答申・意見及び提出資料について、公開して下さい。

一九九六年五月三〇日

                   長岡京市(略)

                          脇田 滋

                          脇田 暢子

 長岡京市長 今井民雄 殿

 長岡京市児童対策審議会会長 (御氏名不祥) 殿


関連リンク先
長岡京市の保育を考えるホームページ(目次)
長岡京市児童対策審議会公開についての請願書
長岡京市長あて人権侵害改善要望書全文
長岡京市保育料訴訟の主な争点
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