updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3328. 労災保険の給付を受けるには、どのような手続をとればよいのでしょうか?
   派遣労働者も、労災保険の給付(業務災害・通勤災害)を受けることができるという点で、一般の労働者と違いはありません。
 労働基準法第75条以下は、業務上の傷病について、使用者が補償の責任を負担することを義務づけています。さらに、使用者は労災保険に加入することを強制されています。一人でも労働者を使用する事業主は、政府(労働省)が管理する労災保険の適用事業として労災保険料を納付することが義務づけられています。
 派遣労働者の場合には、派遣元(派遣会社)が、この補償責任を負う使用者ということになります。派遣元は、労災保険に加入して、労災保険の保険料を納付しなければなりません。もし、労災保険に加入していなかったときであっても、労働者は、労災保険の給付を受けることができます(使用者は、未納の保険料を追徴されます)。
 労災保険では、業務上の傷病に対して療養補償給付(治療費のほぼ全額)、休業補償給付、障害補償給付など補償給付が定められていますし、通勤途上の災害についても同様な給付を受けることができます。
 給付を受けるについては、基本的に、派遣元(派遣会社)ではなく、その住所地を管轄する労働基準監督署が担当します。派遣元は使用者として、一定の手続きに関係しますが、あくまでも、労働者が、労働基準監督署長を相手に、療養補償給付や休業補償給付を請求するという手続きが中心になってきます。
 注意する必要があるのは、療養の補償給付については、労働基準監督署の手続書類には「事業主の証明を受けること」とされていますが、この事業主の証明というのは、災害発生の原因や状況等の事実に相違がない旨の証明であって、業務上か否かの証明ではありません。業務上かどうかは、あくまでも労働基準監督署長が判断します。
 しかし、派遣労働という点からいくつかの問題があります。まず、災害補償や労災保険は、派遣元事業主の責任とされていますので、「事業主の証明」は、派遣元事業主の証明ということになります。実際には、派遣先での就労中の災害が多いと思われますので、派遣先事業主から事情を聞いて派遣先が証明するという複雑なことになり、労働者にとっては不利になる可能性が生じます。
 また、業務上の傷病について、災害(事故)の場合には、業務上ということが、客観的にかなりはっきりしますが、業務上の疾病(しっぺい)で、しかも、慢性的蓄積的な症状の場合(けいわん、腰痛、振動病など)には、症状が業務上のものであることの証明が難しい場合が考えられます。一般の労働者では、同じ会社に長く働いて、担当の作業などを確認することが簡単です。しかし、派遣労働者の場合には、派遣先があちこちに変わりますし、派遣元が変わる場合も少なくありません。蓄積的な疲労による症状の場合には、その症状が一定の業務(作業)の繰返しによることの証明が難しくなる訳です。
 他にも同じような症状になっている同僚が出ているときには、業務上と判断することができますが、派遣労働者の場合には派遣先で孤立して業務を担当していることも少なくありません。派遣労働者については、業務上の認定基準を緩和して、できるだけ認定範囲を広げる必要があります。実際には、業務上の疾病については医師の証明が重要ですので、信頼できる医師を見つけてその診断を受けたり、これまでの就労の経歴をできるだけ詳しく整理して、労働基準監督署に給付の申請をして下さい。
 さらに、労災に遭ったときには、事情によっては派遣先や派遣元に対して損害賠償を請求することが可能です。
 派遣先事業主は、労働安全衛生法上の使用者責任を負い、派遣労働者にたいして民事上の安全保護義務を負います。派遣先の設備、機械などの欠陥や労働安全衛生法の基準に反した労働環境のために被害にあったときだけでなく、派遣先従業員の過失(不注意)で負傷した場合には、派遣先に対して損害賠償を請求することができます。
 また、派遣元事業主には、派遣労働者との労働契約上の安全保護義務がありますので、派遣労働者が派遣先で安全かつ健康に就労できるようにしなければなりません。派遣先との労働者派遣契約で派遣労働者が安全に働けるように十分な措置を定めなければなりませんし、その履行を派遣先に求める義務があります。もし、派遣先での安全が十分でないときには、労働者の派遣を中止することも必要です。こうした安全保護義務に反して労働者を労働災害にあわせた場合には、派遣元にも損害賠償の責任が生じます。
 給付を受けるについては、基本的に、派遣元(派遣会社)ではなく、その住所地を管轄する労働基準監督署が担当します。派遣元は使用者として、一定の手続きに関係しますが、あくまでも、労働者が、労働基準監督署長を相手に、療養補償給付や休業補償給付を請求するという手続きが中心になってきます。
 手続きについては、「労務安全情報センター」のHPに、労働省労働保険徴収課編「労働保険の手引(平成8年度版)」をベースにした説明がありますので、これを参照して下さい。

 派遣労働者の場合の問題点

 派遣労働者も、労災保険の給付を受けることができるという点で、一般の労働者との違いはありません。

 問題は、業務上の認定のときに、証明が難しくなるということです。
 一般の労働者では、同じ会社に長く働いて、担当の作業などを確認することが簡単です。しかし、派遣労働者の場合には、派遣先があちこちに変わりますし、派遣元が変わる場合も少なくありません。ご相談のように、蓄積的な疲労による症状の場合には、その症状が一定の業務(作業)の繰返しによることの証明が難しくなる訳です。
 他にも同じような症状になっている同僚が出ているときには、業務上と判断することができますが、派遣労働者の場合には派遣先で孤立して業務を担当していることも少なくありません。
 派遣労働者の場合には、労働基準法や労働安全衛生法の使用者の責任が派遣先と派遣元に区別されており、健康診断は派遣元の責任ですが、他の安全衛生の義務は派遣先になっています。「けいわん」にかかるような作業が多い職場では、一般の健康診断とは区別されて、けいわんを早期に発見するために特殊健康診断が行われることも少なくありません。
 しかし、派遣労働者の場合には、派遣元が零細であったり、実質的な使用者としての責任をとれない存在であることが多いので、こうした労働者のための健康診断をする例がほとんどありません。

 以上のように派遣労働者も理論的には、労災保険の補償給付を受けることができるのですが、実際には一般の労働者以上に困難が多いのも現実です。
 私は、こうした派遣労働者については、業務上の認定基準を緩和して、できるだけ認定範囲を広げるように主張しています。できるだけの助力をしますので、信頼できる医師を見つけるなどの十分な準備をして、労働基準監督署に給付の申請をして下さい。
 労働災害・職業病の専門家や医師集団・病院についても、必要であれば、ご紹介ができます。ぜひ、相談していただければいいと思います。

【関連ページ・リンク先】
 次のページも参考になりますので見て下さい。
 上肢作業に基づく疾病の認定基準の改正(97年)
 3320.労災保険は適用されますか
 3321.通勤災害は適用されますか?
 3322.腱鞘炎で労災保険を受けられますか?
 3328.労災保険給付を受ける手続は?
 3330.通勤の途中、交通事故にあってしまったのですが?
 3340.派遣先での仕事中に事故。損害賠償は可能ですか?
 なお、労災保険の受給手続きについては、
 神奈川労働局のページ
が参考になります。
 「労務安全情報センター」
のHPに、労働省労働保険徴収課編「労働保険の手引(平成8年度版)」をベースにした説明がありますので、これを参照して下さい。


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