updated Oct. 2 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3020. 派遣会社を選ぶときに注意することは?
 派遣110番の相談を受けていますと、トラブルを通じて色々な派遣会社の問題が伝わってきますので、派遣会社を選ぶのはなかなか難しいと言うしかありません。
 いわゆる「派遣会社」といっても、労働者派遣法に従った適法な労働者派遣事業だけでなく、法律の手続を踏まないで営業している違法な派遣会社もあり得ます。また、派遣ではなく「請負」を偽装して、違法派遣を行う会社もあります。

 (1)労働者派遣法に適合した労働者派遣事業者かの確認

 少なくとも、派遣元(派遣会社)が労働者派遣法に基づく労働者派遣事業として労働大臣の許可や労働大臣への届出に基づく合法的な事業であるか確認して下さい。
 労働大臣の許可や届出なしの労働者派遣事業は違法です。
 公共職業安定所が許可や届出を受ける官庁ですので、派遣会社がある地域を管轄する公共職業安定所に、その派遣会社が許可や届出をしているか、派遣会社としての登録番号をもっているか、また、扱っている対象業務などを確認して下さい。

 例:スタッフ派遣梅田

 人材派遣 般  27−02−1001
     一般   県  所管職安
     特定  番号    番号

 とくに、最近、アウトソーシング、業務請負といった名目で、派遣ではなく、人材供給を請負や委託の形式で行う業者が増えています。請負の場合には、それなりの事業としての独立性が必要です。しかし、請負とは名前だけで、労働者が派遣先(受入れ先)の組織や作業過程に組み込まれて働く混在労働の場合には、派遣労働と考えられます。この場合には、「偽装請負」の違法派遣となる場合が少なくなく、トラブルがあったとき労働者が犠牲にされる危険性が大きくなります。

 違法な労働者派遣での不利益は、すべて派遣労働者にしわ寄せされると考えて間違いがありません。違法を承知で派遣を行う会社が、労働基準法などの労働者を保護する法律を守らない可能性はきわめて大きいとしかいいようがありません。
 ただし、許可や届出があっても、労働基準法、社会保険法などを守らない派遣会社がたくさんあることは上で指摘した通りです。

 (2)派遣会社の情報公開や第三者による公正な評価システムは存在しない

 派遣会社は、自らに都合の悪い情報を決して公開しません。
 また、残念ながら労働者派遣法は、派遣会社に情報公開を義務づけていません。労働者派遣法に基づく「許可」や「届出」もきわめて緩やか過ぎる要件です。許可や届出を受けた業者であるといっても間違いがある訳ではありません。むしろ、派遣業者からの強い要望の結果、これらの要件や手続は厳しくなるどころか、どんどん緩やかになっています。いい加減な業者が、派遣業に参入する道はますます大きくなっています。
 本来、公共職業安定所が、違法な派遣業者を厳しく取締り、派遣労働者の相談窓口になるべきだと考えますが、労働行政の規制緩和政策のもとで、十分な監督体制はとられていません〔私たち派遣110番としては、公共職業安定所の体制を強め、取締り専門の担当者を増やして、公共職業安定所を通じての派遣労働者保護が必要だと考えています〕。
 派遣会社について、客観的第三者として評価をする機関や団体はまだありませんし、業界としての自主規制や自浄作用も強くありません。派遣業界としての労働者への苦情相談窓口があるようですが、しっかりとした回答や改善の体制になっていないという声がこの派遣110番にも寄せられています。

 (3)大手だからといって安心できない

 大手だからといって安心できる訳ではありません。大手の派遣会社のいくつかが採用しているドライな労務管理のために、不満をつのらせている労働者の方からの相談が案外に多いのが現実です。
 とくに、最大手の派遣会社の一つであるテンプ・スタッフのように派遣労働者の個人情報を杜撰な管理で盗まれ(1998年1月発覚)、登録労働者に大きな迷惑をかけることになって、損害賠償の裁判を提起されている会社もあります。また、最大手のパソナは、会社として、労働者派遣法の規制を緩和していこうとする志向が強く、色々と先走った試みを進んで行っています。しかし、労働省から、労働者派遣法の趣旨に反する試みだと「行き過ぎ」について何度か注意を受けています(例:1994年の「人材交流システム機構」等)。
 本来であれば派遣業界をリードするべき、こうした最大手の派遣会社には、派遣業界への信頼感を高めるための役割も期待されているのですが・・・。
 昨年以降、派遣会社の多くが派遣労働者の社会保険加入の手続をとっていないことが大きな社会問題になりました。大手を含めて派遣会社の相当多数が法律を守っていないことが明らかになったのです。
 他にも、ある派遣会社では、対象業務外の「ヘルプデスク業務」で労働者を派遣し、法違反の摘発を逃れるために、労働者を「独立事業者」扱いにしていました。そのため、労働基準法などが適用されないので、労働者は、税金、年次有給休暇や社会保険などで大きな不利益を受けることになっているという相談がありました。これも大手の派遣会社の事例です。老舗の派遣会社が、労働者派遣法の趣旨に反する派遣先での「直接面接」をしている、という相談もあります。大手や古い歴史をもつ派遣会社だから安心できるという訳では決してないのです。

 (4)系列・子会社の派遣会社には要注意

 大企業の系列会社や子会社としての派遣会社は、経営者が、親会社からの出向者であるために、派遣先の親会社に対して強い立場に立てず、労働者を守ってくれなかったり、訓練や研修にもほとんど熱意がない、といった苦情も少なくありません。
 派遣先も、派遣会社を軽視していますので、派遣労働者を直接面接したり、人事評価をしたり、解雇したりするなど、実際には「正社員の感覚で」、しかし、「身分や待遇は、アルバイトやパートタイマー以下の感覚で」派遣労働者に接する事例が多いようです。こうした特定の派遣先だけを相手とする派遣会社は、その親会社の「第2人事部」として以前から弊害が指摘されてきました。
 こうした系列・子会社の派遣会社についての苦情は少なくありません。
 なお、99年の労働者派遣法改定で、特定の派遣先(親会社など)へ専ら派遣する会社は、一般労働者派遣事業としての許可を受けられないことになっています。

 (5)独立型派遣会社には要注意

 大企業などの系列ではない、派遣を専門として生まれた派遣会社は大丈夫でしょうか?(4)の場合には系列の親会社の労務管理にならった労務管理が派遣労働者にも適用され、比較的に余裕がある労務管理が見られるのに対して、独立型の派遣会社の多くは、登録労働者の数は多くても、零細企業的な色彩が強く、経営者の個性に左右される労務管理が多いと言えます。労働基準法違反の信じられない労働時間管理や労働者に支払う金銭を何とか少なくしようと年次有給休暇の権利があることを教えなかったり、取りにくくしたりといった例もあります。「何かあれば、労働者を犠牲にして、もうけばかりを考えている」という派遣会社の体質も目立っています。法違反スレスレの使用者としての信義誠実さがない「個性的な労務管理」が目立つ派遣会社も少なくありません。

 制度的な改善が望まれますが、今のところは、(1)から(5)について、しっかりと自分でチェックすること、派遣会社の言い分を鵜呑みにしないで公共職業安定所、労働基準監督署、労政事務所、社会保険事務所など関係機関に疑問がある度に問い合わせをすること、また、派遣労働者として一般の労働者以上に、労働法の知識を身につけ不利益を受けることがないようにすることが望まれます。
 できれば、信頼できる労働組合に加入して、連帯できる仲間をつくること、少なくとも、いざというときに相談できる労働組合を地域に見つけておくことが必要だと思います。


 【とくに事前に確認しておくべきこと】
 最近、相談事例が多いことから、派遣で就労する前に確認しておくべきだと思うことがあります。以下の点については、事前に必ず確認して、できれば文書での交付を求めて下さい。
 (1)社会保険と雇用保険の加入の確認
 労働者派遣法改定で社会保険、雇用保険の加入が義務づけられています。
 しかし、2ヶ月以降でないと加入しなかったり(社会保険)、「1年以上の雇用の見込みがない」ことを理由に雇用保険加入をしない派遣会社があります。
 改定労働者派遣法では、就労する前に、派遣会社で加入することが原則になっています。就労してから争うこともできますが、登録段階や就労段階で必ず文書で約束させて下さい。
 (2)労働者派遣契約中途解約の措置の確認
 派遣先の都合を含めて、期間途中の労働者派遣契約の解約があっても、労働者は、それだけでは雇用を失いません。残り期間いっぱいの派遣元の雇用責任を追及できます。もし、従来の条件以上の仕事を保障できないときには、派遣会社は残り期間いっぱいの賃金全額相当を損害賠償する義務があります。最低でも休業手当(平均賃金の60%以上)の支払義務があります。事前に確認して下さい。労働省のモデル就業条件明示書にもこの点の記載が義務づけられています。
 (3)有給休暇取得方法の確認
 派遣労働者にも6ヶ月勤務で10日以上の有給休暇付与が義務づけられています。しかし、月単位の日数制限やかなり前の届出手続きを設けて取得しにくくしたり、退職間際の未消化休暇一括取得という当然の権利を認めないトラブルがあります。この点も事前に確認し、労働基準法を守る会社かどうか判定して下さい。
 (4)雇用保険の離職手続きの確認
 長期に派遣されていて、派遣先の都合で契約更新がなくなったとき、当然に「解雇」や「会社都合の退職」が離職理由だと労働者が思っても、派遣元が雇用保険の離職票に「自己都合退職」と記載する例があります。派遣会社の担当者が、離職理由の記載をテコに、雇用保険の支給制限(最長3ヶ月)があると「脅かし」、次の派遣先を悪い条件で受けさせようとするという苦情・相談が目立っています。長く派遣会社に貢献してきた労働者への冷たい仕打ちだと思います。この点も、登録段階や派遣就労の段階に事前に文書で確認し、派遣会社を選ぶ手掛かりにして下さい。
 (5)労働条件の文書での確認
 相談で多いのは、労働基準法などで労働条件が決まると誤解している人が少なくないことです。法律では、多くの場合を想定して細かく決めることはできません。まず、当事者の契約、就業規則、就業条件明示書が優先します。こうした文書が第一の手掛かりです。事後に争うのは大変です。就労する前にしっかりと自分の労働条件を文書で確認して下さい。文書での確認を嫌がる派遣会社や口先だけで文書を渡さない担当者には用心してください。

 納得できないことがあれば、小さなことでも声をあげましょう

 もし、登録段階や就労前に約束したことを守らない派遣会社があれば、地域労働組合に相談し団体交渉を申し入れるなど、一人ではなかなか約束を守らない場合には、憲法で保障された労働組合の団体交渉権を活用することができます。離職理由を「自己都合退職」とされた方が、地域労働組合に相談して交渉を申し入れたら、派遣元が本来の「会社都合退職」に書きかえたという例も少なくありません。
 また、労働者の権利を無視されたときには、公共職業安定所や労働基準監督署に申告して救済を求めることもできますし、地域労働組合やマスコミなどに問題を訴えることも有力です。派遣労働者が働きやすい環境を作るためには、労働者の弱みにつけこむ、悪質業者を野放しにすることは望ましくありません。納得できないことがあれば、小さなことでも声をあげることが大切です。

 その他、関連するページがたくさんありますので、合わせて読んで下さい。
 1005.派遣社員の職場はどのようなものですか?
 1010.派遣で自由に働けますか
 1020.派遣は一生の職業にできますか?
 2005.派遣労働ってどういうものですか?
 2122.違法派遣というのは、どういうものですか?
 3002.派遣労働者の労働条件は何によって決まるのですか?
 8010.派遣会社が悪いと一面的に強調しすぎでは?


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