updated Aug. 24 1998 派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

1010. 派遣で自由な時間働けますか?
   「自由な時間」ということの意味にもよります。
 正社員が会社組織に縛られて、会社の人事管理や時間管理に従って働くことになるのに対して、派遣は、労働者が働きたいときを選んで契約ができる、労働者のニーズに応じた雇用形態だともてはやす風潮があります。
 しかし、派遣労働者の多くは、労働時間の点では、通常の労働者と同様に、かなりの長時間労働になっています。残業を命じられることも少なくありません。むしろ、情報処理関連では、驚くほどの長時間労働が常態になっています。継続雇用であれば有利な年次有給休暇も短期の派遣を繰返す派遣労働者には不利になっていますので、長期の休暇を利用することもできません。
 たしかに、正社員が、長時間の過密労働に追われ、年次有給休暇も未消化のままであるのに対して、会社に縛られないという意味での「派遣」は、「自由である」と思えるかもしれません。派遣という雇用形態にそのような会社に縛られない面があることは否定できないところです。
 登録型労働者派遣であれば、労働者がOKしない限り、労働契約は成立しませんので、登録はしていても労働契約が存在しない期間があります。この期間は、仕事をする義務がありませんので、自由な時間と言えるかもしれません。しかし、賃金などの保障はありません。<登録型派遣労働者も労働基準法の年次有給休暇の権利を取得できますが、派遣就労している間(労働契約関係がある間)に年次有給休暇を請求しなければならない点では正社員と同様です。

 自由の反面、次のような大きな問題点があります。

 (1)会社から自由である、ということは、逆に、雇用が長期に継続して保障されないことを意味しています。派遣元・派遣先も、派遣労働者を「いつでも切り捨てることが自由な労働者」と位置づけているのが厳しい現実です。若い時代に自由にひかれて派遣を選んだが、30歳代になって、いつまで派遣で働けるのか不安になって、正社員になりたいと思う派遣労働者が少なくありません。
 (2)自由というのは組織から縛られないという意味だと考えられますが、派遣労働者は、その意味では「孤立」する傾向が強い雇用形態です。所属している派遣会社とは登録などでは関係がありますが、実際に派遣就労してしまえば、特に強い関係はなくなります。  派遣先での人間関係のなかで働くことになりますが、外部労働者として派遣先従業員集団に溶け込むには、相手の理解も必要となり、実際にはなかなか難しいのが現実です。
 これまでの相談例でも、ある派遣労働者が、数年も働いて年次有給休暇の権利も13日になっているのに、派遣元も派遣先も派遣先の従業員の誰一人、そのことを教えてくれませんでした。そのために、1日も年次有給休暇を行使することなしに元の派遣会社を退職し、別の派遣会社に派遣されることになって初めて年次有給休暇の権利は、派遣会社が変わると消えてしまうことを知ったという方がありました。
 労働者個人が孤立していては、長く継続して自由に働くことは容易ではありません。地域の労働組合などに加入するなど、信頼できる労働者の連帯組織を見つけて、労働者同士が助け合って本当の意味で自由を享受できる労働条件・労働環境を作り上げていくことが必要だと思います。

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