updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3003. 派遣労働者と派遣先従業員の待遇の違いは?  ある会社の営業部署に派遣社員として就業しています。営業ということで出張が結構あるのですが、出張手当が一切ありません。派遣先会社の社員の方は2000円の出張手当と宿泊費が10000円ということなのですが、私の場合は宿泊費も実費払いですし、出張手当なるものはないのです。
 ちょっと聞いたところによると、派遣であろうが社員と同じ待遇である事が普通だというのですが 本当でしょうか?

 まず、営業部署とありますが、派遣対象業務でしょうか?
 ご相談の主旨とは違いますが、営業業務は、一部の例外を除いて、派遣対象業務となっておりません。
 派遣就業にあたって、出張手当についての確認はなかったのでしょうか?
 就業条件明示書のなかでは、この出張手当の支給についてどのように記載されていたか、一つの確認すべき点です。

 労働者派遣法では、派遣労働者の賃金・手当関係は、派遣元が使用者としての責任を負います。社員(派遣先社員)の使用者は派遣先ですので、両者の使用者が違うことから、賃金に差別があっても労働者派遣法違反ではないというのが、労働省の行政解釈だと考えられます。〔行政の考え方であって、司法=裁判所の考え方ではありません。裁判で争えば、差別が認められる可能性も考えられます。〕

 私たちは、派遣先社員と派遣労働者の仕事が同一のときには、同一労働同一賃金の原則に基づいて、同等の待遇が必要であると主張してきました。

 しかし、労働省をはじめ、派遣先と派遣労働者の間の同一労働同一賃金の原則を認めていません。フランスをはじめ、EU諸国の労働者派遣法には、こうした原則が認められているのと比べて、日本の労働者派遣法の大きな欠陥です。

 同一労働同一賃金の原則からは、同じ仕事で待遇が違っているのは許されないことですが、日本の労働者派遣法はこの原則を明文では認めていないのです。

 使用者が違えば、待遇が違うことを容認する解釈が広がってしまっているのです。
 大企業であれば、良い賃金、零細企業であれば、低い賃金というのが日本では常識のようになってしまっています。

 労働省寄りの研究者が書いた派遣労働の書物にも、次のような派遣労働者と派遣先従業員の待遇の格差が、公然と(何の問題点の指摘もなしに)掲載されています。




 さらに、派遣料金と派遣労働者の賃金は、かならずしも対応しているとは言えません。
 労働者にとっては、とても見えにくくされています。

 法的には、派遣会社の就業規則や賃金規定に、どのように規定されているか、派遣会社を使用者として、判断しますので、こうした賃金関連の規定を確認し、労働者の格付けや賃金の決定がどのようになっているかに基づいて問題にすることになります。

 以上、派遣労働者の賃金をめぐっては、労働者派遣法には手がかりはほとんどありません。規制がほとんど存在しないなかで、派遣業者は莫大な利益をあげているのだと思います。

 個別に法律に頼って闘うには、手がかりになる有力な「武器」がほとんど存在しない、という派遣労働者をめぐる厳しい現実を是非ともご理解下さい。

 これをはねかえすには、
 (1)労働者自身が、雇用形態にとらわれずに、同じ仕事をしているときには、同じ待遇が当然である、という意識をしっかりと持つことが必要です。同じ仕事をしているのに、なぜ正社員だったら賃金が高いのでしょうか? 国際的には、こんな差別は認められません。日本だけの特殊な差別です。パートタイマーと正社員との賃金差別については、丸子警報器事件で、8割を下回る格差は違法であるとの判決がありました。同様に、派遣労働者についても、同様な差別の問題について問題を提起することが必要だと考えています。
 (2)労働者が連帯して、労働組合を通じて集団的な力で対抗することしかないと思います。

 派遣労働者と派遣先従業員の待遇格差については、一般的には以上のような問題点があります。しかし、ご相談の問題については、具体的には、派遣元に問題を指摘し、派遣元から必要な経費を支出するように強く求めて下さい。労働に基づく「実費」までを労働者に負担させるのは、あまりにも酷いことになります。しっかりと主張することが必要です。
 派遣元がしぶるようでしたら、派遣先との労働者派遣契約=就業条件明示書に基づく労働内容とは違うことを指摘して下さい。

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